生命保険申し込み時には委任状にサインをさせられる。
これは保険会社が本人に代わり診断に関わるあらいる情報を病院から入手するためのものである。
私が横浜労災病院に腎臓がん摘出手術後に診断書の発行依頼をして保険金請求書と一緒に提出したことは先にも書いた通りである。その内容は私は見ていなかった。ところが、そこに”原発性胆汁性肝硬変”が既往症として書かれていたことが後でわかった。
私はその診断書のことで、病院事務局に電話をした。私の知らない”原発性胆汁性肝硬変”がどうして診断書の既往症欄に書かれていたのかを確認するためである。当然、保険金請求でチューリッヒ保険会社と交渉をしていることを説明した。私が問い合わせたのは事務局の原田係長(仮称)で親切に私の話を聞いてくれた。原田係長から、一度来院してもう一度詳しく説明してくれというので数日後病院を訪れて状況説明をした。
説明の内容を簡単に書いてみよう。
以前は日本生命、第一生命や朝日生命など日本の生命保険会社は、生命保険契約前には指定の病院に行って診断書をとってくることが条件だった。しかも、保険の申し込みはそれぞれの保険会社の”保険のおばちゃん”を通して行なっていた。そのため、診断書の記載をチェックされ保険契約ができないこともあった。しかし、現在は外資系のアフラック生命、メットライフ生命やアクサ生命などが日本に入ってきて状況が一変してきた。しかも、”保険のおばちゃん”はいなくなり、代わりに”ほけんの窓口”などが保険契約の仲介を始めた。これら外資系の生命保険会社は高齢者をターゲットにして生命保険の加入をテレビでガンガン始めたのだ。契約時には診断書の必要もなく、”ほけんの窓口”がチャッチャと事務的に契約手続きをするだけである。そして、入院や通院をして保険給付金の請求をすると契約時の告知義務違反で給付金は払えないというのだ。契約時に患者の診断情報の発行の委任状に印を押しているので、色々な情報を病院から入手しているので、簡単に告知義務違反と主張できるのだ。これは保険会社による保険金詐欺なのである。病院は保険会社から診断に関わる情報請求をされれば全て出さなければならない。患者自身、そんな情報が出されていることも知らない間に。多分、この種の保険金詐欺の被害を受けている人は決して少なくはいないだろう。まして、高齢者となれば、その保険会社と闘うエネルギーも意欲も残っていない。保険会社にとってはやりたい放題である。なけなしのお金を毎月払込み、結果として給付金を受け取ることができないことは高齢者にとっては大変辛い話である。せめて、病院は保険会社から情報請求された時は本人に確認するなどして、提出情報を制限すべきだと提案した。病院は患者の体を守るだけではなく、患者の情報も守るべきだとも付け加えた。
この話を聞いて原田係長は全く考えても見なかったことだと言っていた。
原田係長から、2週間後に私に電話があり、私の消化器担当医の野田医師(仮称)に会ってくれと言ってきた。