第三回で用意した「あらすじ」で、出だしの部分を仕上げてみようと思う。
猫爺の連続小説「賢吉捕物帖」第八回 此処で会ったが百年目
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「おや? 何だろう」
小さなお社の境内に人集りが出来ている。境内に走り込む人の群れは皆血相を変えている。賢吉は、その叫び声のなかに「仇討ち」という言葉を聞いた。仇討ちなど、生れてこの方見たことがない。恐いもの見たさに、賢吉も野次馬の一人になっていた。
賢吉は、目明しの父親長次に言い付けられて、朝から叔父の家まで使いに行った帰り道である。
「賢吉、この大根を持って帰れ」
百姓の叔父が育てた立派な大根を、五つばかり束ねてを差し出した。
「重いから嫌だ」
「この罰当たりめ、重いから嫌だとは何事だ」
「だって、この後回るところがあるのに、大根背負って行けねぇや」
「どこぞのお坊ちゃんじゃあるめえし、何を軟弱(やわ)なことを言いやがる」
それでも、賢吉は無理やり持たされて、捨てることも出来ずに大根を背負ってお社のところまで帰って来たのだ。
お社の境内は、黒山の人だかりで、賢吉が潜り込もうとしても、弾き出されてしまった。
「こら、子供が見るものじゃない、けぇれ」
賢吉は未練気に人々の背中をみていたが、最初から見ていたらしく、微に入り細に入り説明をしている男が居た。賢吉が聞き耳を立てると、仇討ち側は、まだ年端もいかない少年とその姉だそうである。
彼らは、花巻藩士倉掛半平太の倅・倉掛藤太郎と姉・美代と名乗ったそうである。敵は、元花巻藩士、笹川仁左衛門 訳は分からないが、姉弟の父を殺害し、江戸へ逃れてきたらしい。
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出だしは、ちょっと読者の興味を引くように、「仇討ち」の場所から入っていった。どんな小説でも、「出だし」は大切である。プロの作家は、巧みに読者を引き入れる。
次回は、もう少し「仇討ち」の説明を入れて、この仇討ちに賢吉が違和感を覚えるところを書いていこう。
「猫爺式小説作法?」第一回
「猫爺式小説作法?」第二回
「猫爺式小説作法?」第三回
「猫爺式小説作法?」第四回
「猫爺式小説作法?」第五回
「猫爺式小説作法?」第六回
「猫爺式小説作法?」第七回
「猫爺式小説作法?」第八回
「猫爺式小説作法?」第九回
「猫爺式小説作法?」第十回(終)
猫爺の連続小説「賢吉捕物帖」第八回 此処で会ったが百年目
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「おや? 何だろう」
小さなお社の境内に人集りが出来ている。境内に走り込む人の群れは皆血相を変えている。賢吉は、その叫び声のなかに「仇討ち」という言葉を聞いた。仇討ちなど、生れてこの方見たことがない。恐いもの見たさに、賢吉も野次馬の一人になっていた。
賢吉は、目明しの父親長次に言い付けられて、朝から叔父の家まで使いに行った帰り道である。
「賢吉、この大根を持って帰れ」
百姓の叔父が育てた立派な大根を、五つばかり束ねてを差し出した。
「重いから嫌だ」
「この罰当たりめ、重いから嫌だとは何事だ」
「だって、この後回るところがあるのに、大根背負って行けねぇや」
「どこぞのお坊ちゃんじゃあるめえし、何を軟弱(やわ)なことを言いやがる」
それでも、賢吉は無理やり持たされて、捨てることも出来ずに大根を背負ってお社のところまで帰って来たのだ。
お社の境内は、黒山の人だかりで、賢吉が潜り込もうとしても、弾き出されてしまった。
「こら、子供が見るものじゃない、けぇれ」
賢吉は未練気に人々の背中をみていたが、最初から見ていたらしく、微に入り細に入り説明をしている男が居た。賢吉が聞き耳を立てると、仇討ち側は、まだ年端もいかない少年とその姉だそうである。
彼らは、花巻藩士倉掛半平太の倅・倉掛藤太郎と姉・美代と名乗ったそうである。敵は、元花巻藩士、笹川仁左衛門 訳は分からないが、姉弟の父を殺害し、江戸へ逃れてきたらしい。
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出だしは、ちょっと読者の興味を引くように、「仇討ち」の場所から入っていった。どんな小説でも、「出だし」は大切である。プロの作家は、巧みに読者を引き入れる。
次回は、もう少し「仇討ち」の説明を入れて、この仇討ちに賢吉が違和感を覚えるところを書いていこう。
「猫爺式小説作法?」第一回
「猫爺式小説作法?」第二回
「猫爺式小説作法?」第三回
「猫爺式小説作法?」第四回
「猫爺式小説作法?」第五回
「猫爺式小説作法?」第六回
「猫爺式小説作法?」第七回
「猫爺式小説作法?」第八回
「猫爺式小説作法?」第九回
「猫爺式小説作法?」第十回(終)