雑文の旅

猫爺の長編小説、短編小説、掌編小説、随筆、日記の投稿用ブログ

猫爺のミリ・フィクション「金の斧」

2015-03-31 | ミリ・フィクション
 (その一)汚い小僧

 ある男が息子をおんぶして、川に架かる丸木橋に差し掛かった。背中の子供が恐がって暴れたために子供を川の中に落としてしまった。男は為(な)す術もなく、ただ嘆き悲しんでいると、川の水面に龍神様が現れて男に尋ねた。

   「何を悲しんでおる、どうしたのか話してみよ」
 男は子供を川に落としたことを話した。
   「しばらく待っておれ」 
 言い残すと、龍神様は川の中へ潜っていった。
   「川に落ちた子供は、この金の子供か?」
   「いえいえ、そうではありません」
 再び龍神は川の中へ。
   「川に落ちたそなたの子供は、この銀の子供か?」
   「いえいえ、めっそうも御座いません、私の子供は、ただの汚い小僧でございます」 
   「そうか、もう一度探してくる、待っておれ」
 ブクブクブクと川の中へ。 
   「では、この汚い小僧か?」
 龍神の手には男の息子が抱かれていた。
   「あ、はい、その子でございます」
 泣きじゃくる息子を受け取り、男は涙を流してお礼を言った。
   「そうか、お前は正直者であるな、褒美に、この川落ちた総ての者をお前にやろう、ただし、既に幽霊になっておるがのう」

 龍神様は、男の背中にEXILE の Choo Choo TRAINが踊れるくらいの背後霊を背負わせてくれた。 


 (その二)黄金の玉

 社内ゴルフ大会で、最終コースまでトップできた男が、グリーンの手前で池ポチャをやらかしてしまった。池の端で、ガックリ肩を落としていると、池の水面にスックと女神様がお立ちになられた。

   「どうしたのじゃ、何を嘆いておる」
 韓流時代ドラマの和訳セリフのように女神様が仰せられた。
   「はい、ゴルフボールを池に落としてしまいました」
   「なんじゃ、そんなことか、待っておれ」
 女神は池の中に沈んでいかれた、暫くして再び水面にお立ちになると、
   「そなたの落としたボールとは、この金の玉か、それとも、こちらの銀の玉か?」
   「はい、はい、その金の玉でございます」
   「そうか、すぐに返してやりたいが、疑うようだが、他にも落とし主が現れるやも知れぬ」
 女神は、明日まで待って他に落とし主が現れなかったら、そなたの部屋へ届けようと言った。
   「それまで、待てるか?」
   「はい、お待ちいたします」

 翌朝、男は目を覚ますとすぐに枕元を探したが何も無い。落とし主が現れたかな? それとも嘘がばれたかなと、不安になった。とにかく、もう一度池の傍に行ってみよう。何か分かるかも知れないと思った。起きて洗面所に向かったそのとき、股間に違和感を覚えて立ち止まり、手を遣って驚いた。袋の中身が、なんと3個になっていたのだ。 

  (イソップ童話のパロディ) (原稿用紙4枚)


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