「帰ってきたヒトラー 上・下」ティムール・ヴェルメシュ(2012) 訳:森内薫2014河出書房新社
まあ、面白いことは面白い。現代社会をヒトラーの目から批判してもらうのがね。
そしてあとがきにあるように、言葉の認識のすれ違いも面白い。
上P110あたりの「責任を取ることのできる指導者が必要」ってのはどこの国のどこの時代にも言えるだろうね。今の日本に一番望まれるものだわ。無責任な嘘つき総理やネコババ都知事なんて、全然責任を取る気ないし。上P124<運んでいるのは荷物ではなく責任>
上P170
首相の座を射とめるのは、腐った政治家の中でも一番腐ったやつばかりというありさまだ。
この精神的微生物の群れから、
よりによっていちばん不格好でいちばんおぞましい存在が首相の座についたのは、
まさに運命のいたずらというべきだろう。
下P32
政治家と呼ばれる人間のあまりに多くが、
ほんの15分かそこら店の売り場を視察しただけで、
あるいは大工場のドアの向こうを通りがかりにちらりと見ただけで、
庶民の生活の実態を理解したつもりになっている
でも、ヒトラーを化け物ではなく人間として書いた?そんなことないだろ。こんな考え方で固まったキャラクターは化け物だろ、人間らしくないわ。ちっとも反省とかしてないじゃん。一番ステレオタイプなヒトラーのキャラクターだろ。
自国が前向きに評価されるには、勝者にならなければならない。ってのは、まさに安倍右翼的な発想だ。ヒトラーのキャラクターが私の頭の中で「鷹の爪団」団長に安倍総理が混じり始める。
そう、きちんと人間的にしてしまったら、ヒトラーを認めることのできないドイツで出版ができるはずなどなかった。絶対にこのヒトラーは人間らしくなどない。あくまで現代批判をするピエロだ。
しかし、この作品の怖さは、現在のドイツ人たちが果たしてこの後ヒトラーをお笑い芸人で終わらせることができかどうかにある。頭でっかちの方操りやすい。第三次世界大戦が起こるとは思わないが、化け物であるヒトラーに勝てるとは思えないのだ。
〈勝利!万歳〉
そして違う「人間」としてのヒトラーが現れた時の本当のストーリーを頭に描いて涙した。ドイツでは書けないどうしようもなく普通のストーリーを。
カラパイアヒットラー写真