卒業式のシーズンだ
仕事帰りの電車には
卒業証書の入った筒を持った若者達が目立つ
先程までのテンションで新たに乗り込んでくるグループは
真新しいスーツがまだ馴染んでいない
学園生活の集大成の様に
この日ばかりは時間が過ぎて行くのを惜しみながら
友との別れに寂しさを感じながら
そして新しい世界への期待と不安を入り混じらせながら
夜を明かした事だろう
それぞれの目的地を目指してこの電車に乗っている
駅に着いてドアが開いたら其処からはもう独りだ
楽しく過ごした友は別々な場所で生きて行く
そして自分もまた次のフィールドへ向かって歩いて行く
酒の勢いで彼らは笑顔だが
きっとその裏にはセンチメンタルな気分が隠されている
それをまるで自分の事の様に感じながら
私は電車に揺られている
昨夜遊びに来た彼も
この春、新しい旅立ちをする一人だ
当店には常連のMさんと何度か遊びに来ていたが
いつも大人しい印象だった
イケメンで女性からはさぞかしモテるだろう
Mさんは職場の後輩を何人も連れて来るので
控えめな彼には特に印象に残るエピソードはない
ある時、彼がふらっと1人で現れた
いつもと違ってやけに明るい表情だ
何かから開放された様な清清しい笑顔
そして声のトーンがこれまでとまるで違う
「実は会社辞めたのよ~」
オバちゃんが親しい人を叩く様な仕草まで…
私は戸惑った
「あら言ってなかったっけ
アタシ、ゲイなのよ」
ええ~っ勿体無い、こんなイケメンなのに…
そこからはカマびすしいオネエトーク炸裂で
大いに盛り上がったのだった
きっとそれまで抑圧していたモノを一気に吐き出したのだろう
あれから数ヶ月
「今度、動物関係の学校に行くのよ~」
どうやらこの春入学のようだ
「アッシ、犬が好きでさ~
YouTubeで言葉を話すハスキー犬に
もうメロメロよ~」
スマホにブックマークされたその画像を見せてくれた
この夜はハッテン場情報と
数々の男遍歴の話に花が咲いたが
「シンデレラは日付が変わる前に帰らなくちゃ」とばかりに
ドアの向こうに消えて行った
旅立ちの季節にしてはまだまだ肌寒い
アタシの旅立ちは?
まずは布団から…
仕事帰りの電車には
卒業証書の入った筒を持った若者達が目立つ
先程までのテンションで新たに乗り込んでくるグループは
真新しいスーツがまだ馴染んでいない
学園生活の集大成の様に
この日ばかりは時間が過ぎて行くのを惜しみながら
友との別れに寂しさを感じながら
そして新しい世界への期待と不安を入り混じらせながら
夜を明かした事だろう
それぞれの目的地を目指してこの電車に乗っている
駅に着いてドアが開いたら其処からはもう独りだ
楽しく過ごした友は別々な場所で生きて行く
そして自分もまた次のフィールドへ向かって歩いて行く
酒の勢いで彼らは笑顔だが
きっとその裏にはセンチメンタルな気分が隠されている
それをまるで自分の事の様に感じながら
私は電車に揺られている
昨夜遊びに来た彼も
この春、新しい旅立ちをする一人だ
当店には常連のMさんと何度か遊びに来ていたが
いつも大人しい印象だった
イケメンで女性からはさぞかしモテるだろう
Mさんは職場の後輩を何人も連れて来るので
控えめな彼には特に印象に残るエピソードはない
ある時、彼がふらっと1人で現れた
いつもと違ってやけに明るい表情だ
何かから開放された様な清清しい笑顔
そして声のトーンがこれまでとまるで違う
「実は会社辞めたのよ~」
オバちゃんが親しい人を叩く様な仕草まで…
私は戸惑った
「あら言ってなかったっけ
アタシ、ゲイなのよ」
ええ~っ勿体無い、こんなイケメンなのに…
そこからはカマびすしいオネエトーク炸裂で
大いに盛り上がったのだった
きっとそれまで抑圧していたモノを一気に吐き出したのだろう
あれから数ヶ月
「今度、動物関係の学校に行くのよ~」
どうやらこの春入学のようだ
「アッシ、犬が好きでさ~
YouTubeで言葉を話すハスキー犬に
もうメロメロよ~」
スマホにブックマークされたその画像を見せてくれた
この夜はハッテン場情報と
数々の男遍歴の話に花が咲いたが
「シンデレラは日付が変わる前に帰らなくちゃ」とばかりに
ドアの向こうに消えて行った
旅立ちの季節にしてはまだまだ肌寒い
アタシの旅立ちは?
まずは布団から…