おかまのよろめき

現役おかまのお店日記&趣味のはなし

雨の夜

2009-11-11 16:22:28 | Weblog
昨夜は営業中に雨が降り出して

明け方にはかなり本降りになった

キャッチをヒデミさんと交代して

店内でお客さんにメールしていたら

近所の小料理屋のママがドアをノックした

「あら、誰も居ないの?」

「そうなのよ、雨も降り出したし…」

「じゃあ口開けしてあげるわ」

「ホント!うれしい!!」

このママが口開けしてくれると

かなりの確率で後にお客様が続くのだ


ママがお土産に持って来てくれたお刺身をつまみに

連日の暇を嘆きあう

そう言えば先日、ママの店の常連さんが亡くなった

近所のマンションに一人暮らしをしていた高齢のご婦人だ

彼女は3日に一本のペースでオールドパーを開けて行く

それに居合わせたお客さんにもビールを抜いたりと

かなり羽振りが良かった

しかし、その分とてもワガママで

ママも手を焼くことが多かった様だ


「ここのところSちゃん来てなかったのよ

 連絡しても出ないから

 マンションに行ってみたのよ」

ママの店とそのはす向かいの赤提灯には

連日のように飲みに来て

帰りはママか赤提灯のマスターが

マンションまで肩を貸していた

「Sちゃんの身内に連絡が取れて

 マンションに見に行って貰うように言ったんだけど

 私も心配になって駆けつけたら

 お巡りさんが居るのよ」

ママの嫌な予感が的中した


「あの日の前後だったと思うわ

 店の壁に掛けてあるカレンダーが

 手も触れないのに突然落ちたのよ

 Sちゃんがお別れに来たのかしら」

前の日に「天ぷらが食べたい」って言うから

彼女の為に用意していたのだが

店には現れなかったそうだ


「とってもキレイにお化粧してもらってたわ

 髪の毛もアップにしてもらって」

近所に住んでるからいつも着の身着のままで現れるのだが

男性客が居れば急に鏡を出して

ファンデーションを直すそうだ

納棺師によって旅立ちの化粧を施されたSさんは

大変美しく安らかな寝顔だったそうだ


数年前に他界したご主人と同じ年齢で逝ったSさん

「あんなにキレイにしてもらって

 きっとダンナさんもあの世で惚れ直すわね」

同年代の常連さんを失って

ママは寂しそうにポツリとそう呟いた


 








コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする