リッスン・トゥ・ハー

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インコが語る、むかし昔あるところに梅

2010-01-22 | リッスン・トゥ・ハー
「むかし、むかーしのことじゃった」

「子どものいないおじいさんとおばあさんが或る村に住んでいていた」

「おじいさんは山にしばかりに、おばあさんは川に洗濯に」

「おばあさんが洗濯をしていると川上から大きな桃がどんぶらこどんぶらこっこ」

「おばあさん家に持ち帰った」

「おじいさんは包丁で桃を切ると」

「中から珠のような子が」

「おじいさんは驚いて、こいつぁ、桃から生まれたから桃太郎じゃわい」

「おばあさんも驚いて、それがいいそれがいい」

「桃太郎はすくすく育ち、鬼退治に行く」

「旅の途中で猿雉犬が仲間になって」

「鬼が島にたどり着く」

「鬼がうようよいるその島で、桃太郎や動物達は暴れ回る」

「鬼も降参して、宝物を桃太郎は奪う」

「今日から俺が鬼だ」

「そして桃太郎は鬼の親分らしき奴に、いいか今日からオマエが桃太郎だ」

「桃太郎は帰宅した、途中で腹が減ったので猿雉犬を食った」

「おじいさんとおばあさんの家に着く」

「おやおやどうしたんだい桃太郎、なんだかやけに皮膚が赤いねえ」

「気のせいですよおばあさん」

「それにずいぶん牙が長いよ」

「はじめからそうでしたよおじいさん」

「そして桃太郎は、おじいさんおばあさんが油断した隙に心臓をひとつき」

「悲鳴を上げる間もなくふたりは絶命」

「桃太郎は家にあった食料を奪って逃走」

「その悲劇の場所に生えてきた梅」

「毎年こぼれんばかりの実を実らせる」

ハム食べたい/ワルツを踊れ

2010-01-21 | 若者的図鑑
かなりたまってますねえ~、もともと本ブログはくるり一曲ごとレビューブログだったんですよね。嘘ですよね。

だんだんと書くことがなくなってきたもので、嘘ですよね。

まとめてレビューかいときますよ、嘘ですよね。

さて、ハム食べたい。こちらは太ももフェチの男の妄想日記=岸田氏の性癖の具体化。
へなちょこの男子よ、細々と歌う感じで好感度。なんというかこのへそにくる。へそにずずんとつっこまれている、何か。
痛いはずだけれど、鈍い痛みで、あんまり感じないんだ。それっていいことなの?うーんわからあない。蛍光灯のまめ球だけじゃ泣いてるのかもわからない。目を閉じて、思い切りシャウトしながら、歌う情景が浮かんできます。
ねっとりとした質感のギターリフ、まとわりついてくるベースドラム、止まってしまえ時間。止まれば俺の天下じゃ、やりたい放題や、ふへへ、と妄想抱く男子、その気持ちをくるりがストレートに歌ったらこうなります。イエス。

ももいろのおおお、はむう、たべたああい!

種は宇宙を旅して

2010-01-21 | リッスン・トゥ・ハー
スペースシャトルに乗せられていた、無重力を体験し、養分を与えられ、何よりもその小さな窓辺から美しく青い星を眺めていた種は宇宙から無事帰還し、地上で発芽した。
もう、注目もされなかった。
地元新聞が一社だけ取材に来た。それほどのニュースの価値もないと判断されたのだ。

種は通常の種と何ら変わることなく発芽した。面白みなど何一つなかった。
やってきた新聞記者も物足りなそうな顔で写真を撮り、2、3質問をし、帰って行った。

ある研究所だった。
ただ宇宙から帰ってきた種を、土に植えて、水をやった。
すくすく育った。
育つにつれ、なんとなく様子がおかしいことに研究所のものは気づいた。
芽はしだいに巨大化し、色もやや青みがかった黒い、暗黒のような不吉さを感じさせた。
報告しようにもどこに報告していいものやら、研究所のものは戸惑った。
所長はいったん保留する、と言ったきり、誰に相談するでもなく、ただ観察を続けさせた。
研究所内が浮つきはじめた。この植物をいったいどうするか、報告すべきか、抜き取って何もなかったこととするか。
所長はまだ保留する、と言ったきり、部屋から出てこなくなった。
何日も何日も、部屋から出てこないので心配した職員がドアを破壊し、中に入ると所長は眠っていた。
が、職員はその額に、ツノらしきものを確認できた。
研究所内が混乱する。

「まさかとは思いますが、あれは宇宙人の・・・」報告する際職員はそうつぶやいて、駆け出した。
部屋から飛び出して奇声を発し、そのままどこかへ消えて行った。
代わりのものが所長の部屋に入る。ツノを確認する。今度は報告した。
確認するために重役は所長の部屋に入る。ツノを確認する。
誰もが得体の知れぬ恐怖を感じた。植物はさらに成長する。
いまやもう研究所と並ぶ大きさとなった。
日立がCM撮影にやってきた。

CMを見たものはツノが生えてきて、もうそこいらじゅうツノだらけ。

副社長・犬

2010-01-21 | リッスン・トゥ・ハー
アグレッシブに吠える。がんがんに耳をつんざきながら犬は副社長として君臨する。この会社はショベルカーでビルを破壊していく会社。もちろんダイナマイトなんかもお手の物。一歩間違えば危険な仕事。自信とプライドを持って仕事に取り組んでいます。と犬。言ったような気がする。聞こえたような気になる。犬、もう飽きて向こう見てる。社長の話の途中に、蝶々を追いかけて行く。しかしあくまでも副社長。お飾りじゃないのよ実権を握っている。社長のワンマンなのではなく、実力でここまで勝ち上がってきたという自負がある。だから何の遠慮もなく、業務中にミルクをぺろぺろ。してても誰もとがめられない。副社長だから。社長は忙しくて滅多にかまってくれないからもう、やりたい放題。犬、噛み付く、いらいらしているんだということを表現。言葉はしゃべれないから行動で気づけお前達。犬がるるるる、と唸る。社員は副社長をもてあそぶ。どうかかわっていけばいいのかわからないし、下手に関わって行けば厄介なことになる。だから遠ざかる。だんだんと社員は減る。減って減ってなおも減って、そろそろ人手不足。あきらかに人手が足りない。だから、普段は現場に出ない副社長、張り切ってる。お天道様の下に出れそうだから張り切ってる。やってきました。ビルディング破壊の現場。大量のダイナマイトが使用される。スイッチ押すのは責任者。その現場で一番偉い人、必然的に副社長。犬、肉球をスイッチに乗せる。いいですか副社長、私がいいと言ったら押してください、と念を押される。副社長もう飽きた。まだダイナマイト設置してないけど、副社長もう疲れてきた。ミルクが飲みたい。だから犬、押しまーす!

日本人看護師に思い寄せた、日露戦争のロシア人捕虜の恋記す

2010-01-20 | リッスン・トゥ・ハー
「ワタシはなにものぞみません、ワタシはなにもかもすてるかくごがあります、だからアナタもワタシを愛してください。」

「申し訳ありませんが、貴方を受け入れることはできません、貴方は敵国の人、いくら愛していようと」

「かならずそのカベを乗りこえます、ワタシはアナタに出会うためにつかまったのだとさえおもいます」

「私を困らせないで。どうすることもできないんだから、私だって。」

「今日はとてもシアワセです、アナタの気持ちがわかったから、ワタシはマンゾクです」

「時代が違えば、お互いもう少し遅く生まれていたら、あるいは一緒になれたかもしれませんね」

「きっとライセでワタシたちは出会い、コイにおちるはず」

「さよなら」「サヨナラ」

ほぼ同時に発する、その10年後に生えてきた2対のつくしは、寄り添うように伸びていく。

テ・キ・サ・ス

2010-01-19 | リッスン・トゥ・ハー
テキサスが三角座りでちょんといる。部屋のまんなか、豆電球の下、カーテンがかかった窓、本棚に本はまばら。テキサスは腹を空かせている。ぐるぐると鳴る。まだ何も食っていねえ。朝起きてからではなく、3日前から、何も食べていない。3日前に食べたものと言えばハンバーガー、それにマックシェイクをぐびぐびと一気に飲んだ、ポテトをしゃむしゃむ食べた。ほんの一瞬でなくなった。それも2日ぶりの食べ物。腹の足しにもなりゃしねえ。しかし美味かった、こてこての油分が胃に染み渡っていった。また食べる機会はあるだろうか、飲み込む機会はあるのだろうか。限りなく0に近い気がする。テキサスはため息をつこうとして、もうその力もないことに気づく。息を大きく吐くこともできない自分はもう生きる価値などないのだ、とテキサスは考える。意識がふんわりとぼやけてくる。かすんで部屋の中のものがにじんでくる。瞼が下から屈強な男に引っぱられているように重たい。もうそのいろんな流れに身を任せてしまいたい。その時である。チャイムが鳴る。玄関にいく力もない。誰がこようが関係ないから、無視する。と、ドアを叩く音、激しくなって、ぶあこん、と大きな音とともになだれ込んでくる何か。群れ。足音、どだどだ、部屋中に響き渡る。テキサスはそちらに目をやる。鮮やかな赤がとても眩しい、ようこそマックへ、と声が聞こえる。何もできずに黙っていると、なにかを口にねじ込まれる。強い力の手が口を無理矢理咀嚼させ、飲み込ませる。美味かった。とても美味かったんです。私を助けてくれたハンバーガー、この度正式に作り上げました。命の肉、テキサスバーガー、新発売。

帝王は泣くよ、これがロックンロールの夜明けじゃい

2010-01-19 | リッスン・トゥ・ハー
帝王はギターをかき鳴らす。
鳴らせばダンシング、皆のものは踊り狂う。
帝王が歌い出す、シャウトする、つばを飛ばす。
皆のものは一瞬、踊りをやめてその歌に耳を澄ます、一心不乱に歌のすみからすみまでを取り込もうとする。
体にしみ込ませて、それを体の一部として昇華しようとする。
血となり肉となればしめたもの。
帝王は両手を広げる。
帝王の広い胸に飛び込めばいい。
悲しんでいるものは皆帝王に抱かれて眠ればいい。
朝になれば忘れてしまうだろう、朝になれば何かが変わるだろう。
帝王が眠る頃、世界の誰もが帝王のことを思い、帝王のために声を潜める、物音を消して、帝王が確実に眠り込めるようにしむける。
それは帝王に対する愛情であり、帝王の世界に対する愛情である。
帝王は長い冬を眠って過ごす。
冬は風が吹きすさんで粉雪を舞い上げている。
帝王は深く深く眠っている。
少々揺らそうが帝王が目覚めることはない。
春になり、帝王が目覚める頃、その目覚める瞬間に立ち会おうと世界中のものが帝王の周りに集まってくる。
春と呼ぶ。春はたいへん陽気である。
その日のぬくもりを背中に感じて帝王はついに目覚める。
歓声が上がる。
帝王はゆっくりと上体を起こし、ギターを手に取る。