リッスン・トゥ・ハー

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真っ赤なリンゴ、食うか食われるか瀬戸際で鳴く

2010-01-17 | リッスン・トゥ・ハー
齧る、しかし皮と同じほどの赤みが実にもついている。それは不思議な感覚であった。外側と内側の境界線と言うべき変化がない、それはいつまでたっても外側にかじりついているということであり、それはつまりいつまでたってもなくならないということであった。なにせ、どれだけかじりつこうが、あくまでも外側であり、赤く、燃えるように赤く、しだいに旅人は混乱する。
そしてその無限地獄にはまってしまった旅人を食うのがりんごのやり方であった。たいへん巧妙であった。

トノサマバッタ

2010-01-17 | 若者的詩作
トノサマバッタである
俺はトノサマバッタである
トノサマでありバッタでもある
家来はアメンボである
アメンボはお腰につけたきびだんごを頻繁にほしがる
俺の食料は底をつきアメンボによる下克上があり
俺はアメンボの家来になったが
俺はトノサマバッタである

幻のヒーロー奇跡の復活

2010-01-17 | リッスン・トゥ・ハー
「とう!」

「なんかきた!」

「ようこそ!わたしはヒーローだよ」

「向こうから来たのにようこそいうた!」

「困ってるようだね」

「そうでもないです」

「いや、その顔、いわされてる、困っているのだろう?」

「本当にそうでもないです」

「遠慮なんかいらない、さあ、上着を取りなさい」

「いや、本当に困ってませんし、上着は取りません」

「遠慮は子どもの仕事じゃないぞ、上着を取りなさい」

「今年の6月で45歳を数えますが、上着は取りません」

「とにかく上着を取りなさい」

「なんでですか?」

「わたしは上着のない君が好きなのだよ」

「じゃあますます取りません」

「まあいい、さあ、思う存分困っていることを言いなさい、わたしがかいけつしてあげよう」

「ええと、じゃあ、仕事がありません」

「ほら、あるじゃないか、そんなことを隠して。よかろう、では仕事を見つけてあげよう」

「本当ですか、それはなんというラッキーパンチ」

「ではちょっと時間をくれ、探してくるから、とう!」

「ああ、ヒーローがほんの少しジャンプして、普通に走って行く!と思ったら引き返してくる!」

「見つけたよ」

「もうですか、すごいですねえ」

「何個か見つけてきたから選びなさい」

「選べるなんてヒデツグ夢みたいです」

「まずはこれだ、ヒーローに困っている人がいると知らせてくれる仕事」

「なんか面白そうですが、ぼくにもできますかね?」

「なあに、誰でもできる仕事さ、主に電話で話すだけだ」

「漠然としてるけど簡単そうだ」

「さあ、これに決めるかい?」

「お願いします」

「ではまず100万円、この口座に振り込んでくれたまえ」

「どういうことですか?」

「ヒーロー側加入手数料として」

「手数料がいるのですか?」

「慈善事業やないねんにいちゃん、つべこべ言わんと振り込まんかい!ほんで上着取らんかい」

「イヤですよ、仕事ないのに、上着も取りません」

「払わないなら敵側と見なす」

「見なされるとどうなるのですか?」

「うまい棒明太子味の値段が3割増」

「それだけですか?」

「うまい棒コーンポタージュ味の値段が3割増」

「それだけですか?」

「うまい棒」

「いや、いいです、うまい棒が3割増なのはもうわかりました、それだけですか?」

「それだけです」

「じゃあ、払いませんよ、うまい棒ぼく食べませんから」

「本当にいいのかい?」

「近づかないでください、死臭がします、いいです」

「じゃあこれを食べて見なさい」

「なんですか」

「うまい棒たこ焼き味」

「食べるんですかこれを?」

「いいから」

「わかりましたよ、ぱくぱくぱく、うまーーーい!!」

「五反田の事務所で待ってるよヒデツグ君、上着を取っておいで」