リッスン・トゥ・ハー

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デビューどすえ 京都発アイドル

2010-01-16 | リッスン・トゥ・ハー
着物を着ているので基本動きづらい。しかしはつらつにダンスしなければならない。なぜならアイドルという名目、はつらつにダンスすることがアイデンティティだから。そして、ダンスしながら高音で歌い上げる。彼女らはしかも着物を着ている。着物を着てはつらつにダンスする、うごきにくいことこの上ない、ダンスはとても激しい動きだから、汗をかく。大量に汗をかく、着物はべたべたである。彼女らはそのべたべたになりながらもダンスをやめない。当然とても好感度が上がる。べたべたになりながら、ダンスをやめないのだから。と、見ていたらすぐに正座で座る。なんという動と静。あっけにとられていると、彼女らはお茶を立て始める。着物であることのメリットを最大限に生かす。それを見てまたファンはふわっと心躍る。素晴らしいシステムだった。彼女らが立てたお茶は非常に不味かったわけだが、ファンにお茶の味がわかるわけはない。うまいうまいと言って飲む。おかわり、おかわり、とせがむ。彼女らは作る。作る。作るが足りない。全然足りない。どんどん需要は増える。もうダンスをしている暇などない。歌を歌い上げる暇もない。汗ばむこともない。空調機の効いた室内で、かさかさかさかさ、とお茶を立てるのみである。毎日毎日、あたしら鉄板の上で焼かれて嫌になっちゃうよ気分。

妖精の借用 Fairy borrowing(妖精辞典)

2010-01-16 | 若者的字引
『妖精たちが近くに住む人間からしきりに物を借りようとするのは、妖精の人間依存を示すひとつの証拠である。スコットランドではこうしたことが特に頻繁に起こる。』(抜粋)

妖精は人間の歯に詰まった食べくずを食べて人間の歯を掃除してくれる。だから本来、妖精との関係がよいものであれば人間は歯を磨かなくても言い訳なんだ、と7歳のタカシは歯を磨く気配なし。

風景画を落とす、崩れ落ちるテレビ塔、俺とおかんと時々犬

2010-01-16 | リッスン・トゥ・ハー
露天商のにいちゃんから、どうせ売れ残りだしやすくしとくよ、と言われて25万円で買ったその風景画は、何の変哲もない、どこにでもありそうな風景が描かれていて、これを描いた画家が誰だか知らないが、とにかく今後伸びてくるという気合いみたいなものは何も感じなかった。つまり退屈な、ごく平凡な風景画で、どうして私がその絵を、約2ヶ月分のバイト代ほどの価格で購入したかと言うと、それは運命みたいなもので、それを買わなければ今後、いつかふとしたときに後悔の念に教われるかもしれないという想いからだ。時々私はそういう、トモダチの茂雄に言わせれば「阿呆丸出しの不器用さ」で途方もないことをしてしまう傾向にある。風景画の右上に、テレビ塔があり、そのテレビ塔の上の方から視線を感じる。いや、気のせいだと言うことは分かっている。しかしわたしはそのテレビ塔の上の方、見下ろしている誰かが私の知っている誰かであるように感じる。振り返ると、わたしの町にもテレビ塔があって、テレビ塔?そう昔からあった、ずっとそこにあったテレビ塔、そこからわたしを見下ろしている誰か、視線が突き刺さって、鋭い、強すぎてわたしは風景画を離してしまう、はらはらと少しゆれて地面に、アスファルトにおちる風景画。とともに崩れ落ちるわたしの町のテレビ塔が音も立てずに。犬が。