リッスン・トゥ・ハー

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ポーキー・ホーキー Pokey hokey(妖精辞典)

2010-01-14 | 若者的字引
『おどし妖精。怪しげな、うさん臭いことがあると「なんだかホーキー・ポーキー臭いぞ」と俗に言う。この表現が転じて妖精の名になった、と考えることもできる。』(抜粋)

なんだかホーキーポーキー臭いぞ、とその匂いの方を見ると、ポーキー・ホーキーが母によりガスバーナーで炙られている。「もうすぐ夕ご飯できるからねえ、待っててねえ」

犬種の特徴をDNA解析

2010-01-14 | リッスン・トゥ・ハー
「どんよりとした空気の中、博士は雄叫びを上げた。その雄叫びは、天を貫き、大地を割り、永遠に響き続けた。」

解析完了時の様は助手はそう語った。

「俺はもうあの場所に行きたくねえ、とにかく俺を安全なところに連れて行ってくれ。博士は乗っ取られたんだ、いいか、いいか、あれはもう人間でなく。」

「人間でなく?」

「犬」

「犬?」

「博士はついに突き止めた。犬種のDNAを解析した。とたんに、雄叫びを上げたおれた。俺は博士に駆け寄り、そして見たんだ。」

「何を?あなたはいったい何を見たんです?」

「倒れた博士、その顔」

「どうなっていたんです?」

「博士の口がのびてきて」

「犬のように?」

「ああ、犬のようにのびて、牙はするどくなり」

「犬のように?」

「ああ、犬のようにするどくなり、毛がぐんぐんのびてきて」

「犬のように?」

「ああ、こんな風に・・・」

「うわあ、助手の口がのびてきて、牙がするどくなって、毛がのびてきて」

「犬のよう?ねえあたし犬のよう?」

「犬のようです!犬のようです!」

「わおーーーーん!」

「吠えた!」

遠くで「わおーーーん!」

「博士が呼んでいる」

「ちょっと待ってください、どこに行くんですか?」

「博士の待つ場所」

「それは?」

「琵琶湖わんわんランド」

トランシーバーを取り出し「アジトがわかった!琵琶湖わんわんランドだ!急げ!」

「!?」

「助手の身柄確保!」

「だましたな!」

「許せ助手よ、これも人類のため」

「がるるるるるる、この怒りを力に変えて!」

「うわあ、助手が巨大化していく!」

「俺の力を見よ!」

「だめだ!手に負えない!この化け物め!」

「タケシ!」

「かあちゃん!」

「タケシ、巨大かなんてやめなさい、あんたは母ちゃんの子でしょ!」

「・・・」

「化け物がひるんでる!チャンスだ!そーれ」

竹槍で突かれて「うわわわわ」倒れる

「タケシー!!」

「やったぞ!化け物を倒したぞ!」

母に抱きかかえられる助手「かあちゃん、ごめん、俺、母ちゃんの子でシアワセダッタヨ・・・」

「タケシー!!よくも、あたしの可愛いタケシを、ちょっと頭が悪いだけのタケシをよくも」

「おかあさん仕方なかったんです、落ち着いてください」

「よくもよくもよくも・・・・うおおおおおお!」

「おかあさんが巨大化してる!?」

「よくもよくもよくも!!」

「落ち着いてください、このままだとアナタまで悪になってしまう」

「あたしは何人もとめられんのじゃい!い、いけません逃げて逃げて地球防衛軍の皆さんはあはあはあはあ苦しいいいい」

「おかあさんの中の正義と悪が戦っている!が、頑張れ正義!負けるな正義!」

「うおおおおお!!」

「落ち着きなさいつる子!」

「あ、あなた!」

「いいか、思い出せ、幼い頃、犬と遊ぶタケシ」

「たけちゃん、あたしのたけちゃん」

「ああ、おかあさんの巨大化がちょっと戻った!」

「そうだ、その調子だ、犬と遊んで、犬に噛まれたタケシ」

「噛まれた?あたしの可愛いタケシが噛まれた!うおおおお!」

「逆効果!」

「噛まれた?俺の可愛いタケシが噛まれた!うおおおお!」

「お父さんまで!」

「あなた落ち着いて」

「オマエこそ」

「頑張れ理性!」

人類の破滅の瀬戸際、博士はわんわん王国でただ尾を振る。

金魚の初市

2010-01-14 | リッスン・トゥ・ハー
睨んでいるのは黒いの。じっと静かにしかし決してそらすことなく睨んでいる黒。赤いのは泳ぎ回って泳ぎ回って楽しそう。はしゃぎまわるお笑いタレントのように見える。黒に茶々いれて、うっとうしがられながらもとても楽しそう。じっと睨む黒の人生よりも数倍楽しそう。店主が声をかけてくる。いいのに目つけたね、おねえさん、そいつはまあ大きくなるよ。大きくなったら、家事育児介護なんでもござれだ。金魚が家事育児介護なんてするのだろうか、私は真に受ける。店主はふふふとかすかに笑って、あっちをむいた、私が買うとは思ってないのだろう。買うつもりもないけれど、黒は私を睨んだまま微動だにせず水中にいる。目をそらしたらこちらの負けみたいになるから、私はじっと見下ろす。金魚無勢がなんぼのもんじゃい、頑として譲らぬ強いこころを私は持っているのだ。店主は、ちょっと俺飯いってくるからねえちゃん見ててくれるか、と私の返事を待たずに歩いて行った。私は一刻も早くこの場を離れて、りんご飴でもべろべろ舐めたい気分だったけれど、移動することすなわち黒に負けるということ、それだけは人間として譲れなかった。だからこの喧噪の中、私は浴衣の帯びを握りしめ、瞬きすらもったいないという風に黒を睨み返すと、飛び上がる赤が私の眼の前でくるり、半回転して何かささやいたのが聞こえた。気を取られた私は思わず目をそらし、ため息が漏れる。再び見下ろすと黒はすでに泳ぎはじめていて、その泳ぐ軌跡を追うと阿呆になる。