リッスン・トゥ・ハー

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朝ドラてっぱん、うちのお好み、食べていき

2010-01-12 | リッスン・トゥ・ハー
時々作るお好み焼きが思いのほか好評で、私は図に乗っている。ぐいぐいと乗って、異国の地に到達しそうだ。食べる人食べる人みな口を揃えて言う、店出せるで、と。そんなつもりないから、私はそんな野心など全く持たずに、ただ自分が納得のできるお好み焼きを食べたいがために焼くわけで、それが結果的に喜ばれるのだからとても気持ちがよい。何も突っ張っているわけではないから、ほめられるのはとても嬉しい。一口食べて、ほくほくと噛んでいる。焼きたてだからそうやすやすと噛むことはできない。ほくほく、なんとか噛んで、じわりと味わうおたふくソースのこく。爆発的に広がる香ばしい匂い。肉汁の溶け出す生地を2、3回噛めばもうのどの方へのみこんで間違いなし。とろけてしまうから心配なし。私はどや、という顔で食べる人の顔をじっと見ているのが好きだ。そうしていると、なにか言わなければならないと感じたその人は、急いで飲み込んでその味の感想を考える。美味しさなんてそうやすやすと表現できないから、言葉に詰まりながら、ほめてくれる。私はまだじっと見つめている。その場を私が司っているような気がして楽しい。必死になるその人を私はほんの少しいじめたい気持ちになっている。もっとほめてもっとほめて、くすぐったいけれどできるだけいろんな言葉であなたの言葉で、わたしのことをほめてほしいんだ。そういう風に私のことを図に乗らしてくれる人がでてきたら、私はすべてを捧げるのだろう。それぐらいの覚悟を持って私はお好み焼きを今日も焼くのだ。

ぬいぐるみは虚空を見つめ

2010-01-12 | リッスン・トゥ・ハー
市役所のロビーに変な奴がいる。主成分が綿であるから、それほど深い思考力を持っていないと思うが、だらしなくパイプ椅子に座っている。ここに訪れる人を歓迎するでもなく、ただやる気なさそうに座り、どこかを見つめている。隣に、ある町の紹介写真が展示してある。考えるに、奴はその町のマスコットキャラクターなのだろう。それで展示の横に陣取って、見張っているのだろう。自分ではうごけないものだから、だんだんと崩れてくる。だらしない人みたいに、斜め上を見つめている。何を思うのかい、と私は問いかける。応えてくれない奴は。誰もその格好を直そうとしない。担当が誰か、明確でないから。だいたい市長のツルの一声で面倒くさいあれこれが一気に肩にのしかかり、職員は振り回されてひーひー。はっきりと自分の担当ではないとうごかない。なんと、お役所仕事。奴は半ばあきらめの境地で虚空睨んで。