リッスン・トゥ・ハー

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しんしん

2007-11-29 | リッスン・トゥ・ハー
お風呂に入ると私はまず身体を洗ってね、石鹸あわ立てて、タオルとか使わずに、泡を身体に塗りたくって、汚れを落とす。つるつるする。ごしごしとやらないほうが肌にはいいんだと、前に付き合ってた人が教えてくれて、それ以来ずっと私はそうやって身体を洗っている。一通り洗い終えたら、湯に身体をつけて、ああん、と唸り、持ち込んだ歯ブラシで歯を磨きながら、同じく持ち込んだ本を読むことにしている。一番落ち着く場所で、ホラーなんか良く読んでいた気がする。湯の温度が熱いと、すぐにのぼせてきて、あがりたいけれど、ホラーのでるぞでるぞ、というそわそわするような場面で、もう、やめられなくなって、頭が真っ白になって、倒れそうになったこともある。そういうときは、どうか、助けに来てください。悲しすぎて泣くんじゃなく、もう、消えたから泣くんだ。意味は同じだけど。ちょっと違う。

昭和53年/上半期/直木賞

2007-11-29 | 二行目選考委員会
(津本陽作/深重の海/一行目は)

―孫才次は二番鶏が鳴いたあと母のぶんに揺りおこされ、灯芯のゆらめく明かりのなかで朝食のうけじゃと、前日の夕食の残りものであるうでた克鯨の腸を手早く喉へ流しこんだ。―


すぐに吐き出してまた咀嚼し流し込んで吐き出して咀嚼し、長持ちさせた。貧乏だった。