リッスン・トゥ・ハー

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例えば呼吸をするように

2007-11-15 | 掌編~短編
A「大槻くん、世の中の人はすべてキリンと像に分けることが出来ると思うんですよ僕は」
B「すべては無理ですよ、南さん」
A「いやそれがね、可能なんですよ、僕はキリンでしょ、大槻くんもキリンかな」
B「いやちょっと待ってください、なにを根拠に?」
A「え、分かるでやろ、簡単なことやろ」
B「いや全く分からないんですけど」
A「長塚恭三は象、中西啓三も像、市川海老蔵も象」
B「ええと、百歩譲ってその人たちが象なら、僕がキリンである理由はますますわからなくなるのですが」
A「きききりんは、」
B「あ、もういいです分かりました」
A「象」
B「うーんやっぱり分かりません、理由教えてください」
A「いや、シンプルに、鼻が長い人は象、首が長い人はキリン、それだけ」
B「それだけですか、まったくピンときませんが、僕はキリン?」
A「いや、キリンでしょう、だって首長いよね?」
B「いたって普通だと思いますよ」
A「普通?それで?」(疑わしそうに首を見る)
B「普通でしょう、いままで首長いって言われたことないですよ」
A「えっ?でも(両手で50センチほど広げて首と見比べながら)だいたいこんだけあるよね?」
B「ありませんよ、そんなにこんなもんですよ(両手で実際ぐらいの長さを作って)」
A「ほな、ちょっとその僕と大槻くんのジェネレーションギャップを比べてみよか」
B「ジェネレーションではないですが、分かりました」
(近づくにつれてA手を縮めて、ピッタリ合う)
A「ぴったりやん!僕と大槻くんのジェネレーションギャップはない!」
B「南さん縮めましたよね?」
A「いやいや、一ミリたりとも縮めてないやん」(離す)
B「もう一回どんなぐらいの長さか教えてくれます」
A「もう一回か、まあ、これぐらいかな(実際ぐらいの長さ)」
B「軌道修正してる、ずるいですよ」
A「いや、はじめからこんなもんやったよ」
B「そんな短くないでしょう、こんなもんでしょう(50センチぐらいの長さ)」
A「大槻くん、それは見栄を張りすぎやろ」
B「見栄張るようなもんちゃいますよ、でもこんなもんですよ」
A「じゃあ、そのジェネレーションギャップを比べてみよか」
B「年一歳しか違いませんよね?まあいいですよ」
(互いに近づける、B近づくにつれて縮める)
B「ピッタリですよ!ジェネレーションなんて、キリンの壁の前ではちっぽけなものなんですね」
A「大槻くんあきらかに動かしてるよね?」
B「なに言ってるんですか、動かしてませんよ」
A「いや動いた確実に、あかんよずるしたら」
B「人のこと言えるんですか」
A「じゃあもう一回教えて首の長さ」
B「こんなもんですね(実際ぐらい)」
A「見事な軌道修正ぶりやね」
B「じゃあ南さんもう一度教えてくれますか」
A「ええと、こんなもんですかね(首周りの太さを表現して、探るように太くしていって両手いっぱいの円を作って)ここ、ここや!」
B「ベクトルを変えてきましたか、まあいいですよそんなに太くないですよ」
A「いやいや、あかんわ、まだ広がっていく!どんどん成長している!もう手では表現しきれない!大槻君!ちょっと助けて!(みるみるうちに広がっていく)」
B「大丈夫ですか、首周りはそう簡単に成長したりしませんよ南さん」
A「とりあえず大槻君の首まわりの右側担当して!頼んだ大槻君」
B「こうですか」(ふたりで大きな円を描く)
A「大槻君の首はふたりの両腕でも足りないほどの太さやね、お見事」
B「ありがとうございます(会釈する)」
A「うわ!動いた!(会釈に合わせて動く)」
B「いやどうなっとるんですかこれ?」
A「ほな、明日朝6時にサバンナに集合やから、おつかれっす」(ネクタイを緩めて乾杯するジェっシャー)
B「ええと、ちょっと待ってくださいまだ打上げ始めないで下さい。突然なんのことですか、サバンナって」
A「朝から首担当なんやから、大槻君が起きる前に集合してサバンナで待機しとかな」
B「ええと、よくわからないんですが、僕集合する時点でおきてますよね?」
A「仮にはね」
B「仮ですか」
A「仮に起きて集合するわけですよ」
B「首の右側を担当する為に?」
A「そう、そして、大槻くん起きる」
B「仮でなく?」
A「そう、仮ではなく起きる、そしてサバンナを全力で駆ける」
B「そんな習慣ありませんけど」
A「駆けて疲れたら、川で水浴びする」
B「え?キリン?」
A「キリン」
B「いやだから僕キリンちゃいますよ」
A「だって大槻君の首こんなもんやのに?」(50センチぐらいの長さ)