リッスン・トゥ・ハー

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誰だって覚えていない記憶があるのだ!

2007-11-04 | リッスン・トゥ・ハー
 おしゃべりが好きなおばさんで、私は彼女をほんの少し苦手としていて、いや、とてもいい人なのだけれど、いい人すぎて、おせっかいで、私を見ると色々世話を焼いてくれるもので、余計な、とはあえて言わないけれど。
 寝てたら、外が賑やかになって、聞き覚えのある俊の割に甲高い声がガラス戸を簡単に跳び越えてくるので、眠れなくなって、どうせ中に入ってくるに違いないと、それならいっそこちらから出て行ったほうが潔いと思い健康サンダル履いて、どうもーこんちわー、と外へ出た。手を叩いてベテラン漫才師なみのノリで。おばさんは、孫娘を連れてきていて、孫娘はてくてくとおぼつかない足取りで狭いわが庭を歩いていた。犬がつながれている小屋に近づいて手を出す。犬が吠える。噛まれるからあや!とおばさんは叫ぶ。孫娘あやはその声を無視して手を出し続ける。犬は吠えるのをやめた。あやがうふふと笑う。犬もうふふと笑った。ふたりは長年連れ添った夫婦のようであった。おばさんはそれを見てほんの少し嫉妬していた。かわいい孫娘を略奪されたような気になったのかもしれない。将来、大いにもめそうだと私はほくそ笑んだそっと。