夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

日本語の分からない人間が裁判官になっている

2008年07月17日 | Weblog
 大型車のタイヤが外れて歩行者を直撃し、死亡させた事故があった。製造会社である三菱自動車の元役員が虚偽報告罪に問われたが、横浜簡易裁判所で無罪になった。2、3年前の事である。虚偽報告とは報告を改竄した事である。
 事故の原因となったハブの破損がリコールに該当するのでは、と国土交通省が同社に報告を要求した。それに対して同社はデータを改竄した報告書を提出した。破損の原因は整備上の問題だと見せ掛けたのである。
 だから同省はリコールには該当しないと判断した。
 その虚偽報告が道路運送車両法違反だと検察は主張し有罪を求めた。様々な証拠から報告書のデータの改竄の実態は明らかになっている。
 同省は虚偽報告とは当然に知らないから、その報告書を信じてリコールは必要無いと判断した。
 さて、この虚偽報告が罪になるかどうかである。誰だって、罪になると思う。道路運送車両法違反である。

 ところが、驚いた事には、裁判官は虚偽報告はあったと認めながら、それは罪にはならないと判断し、同社を無罪としたのである。
 何でこんな判決になったか。それが、日本語を知らない人間が裁判官になっている、との話になる。
 判決の主旨は、報告を命じたのが国土交通大臣ではないから、であった。道路運送車両法には、「報告要求は国土交通大臣がするものとする」とあるが、実際に要求をしたのは同省の役人であって、大臣の要求ではなかった、だから虚偽報告罪にはならない、と言うのが判決の理由である。

 では、その条文を見てみよう。
1 (リコールに該当するかの)報告要求は国交相がする。
2 (リコールに該当するかの)質問検査は職員にさせる。

 証拠上、当時の国交相が同社に対し、報告要求を行うことを自ら意思決定し、それを表示した事実は認められない、と判決は言うのである。確かに「報告要求は国交相がする」と書かれている。そして大臣が直接同社に報告要求をしたのではない。では、2の「質問検査は職員にさせる」の意味はどうなるのか。つまり、誰が質問検査をさせるのか、である。
 ここには大臣以上の権限者は居ない。そして「報告要求は国交相がする」との文言に続いて「質問検査は職員にさせる」とあるからには、「させる」の主語は「国交相」になるに決まっている。そうした事が分からなければ、こうした文章は読めない。
 更には「報告要求」とは何を指すのか。何の報告なのか。質問検査の答の報告に決まっている。質問検査をしてその答を要求しないなど、あるはずがない。それでは質問検査する意味が無い。
 つまり、質問検査を職員にさせたのは、報告を要求しているからである。大臣がいちいち些末な事をする必要は無い。職員が質問検査をした事で、大臣が報告要求をした事実は明らかなのである。
 その事は報告要求をされた三菱側も十分に承知している。だから同社は報告をしたのである。当然に道路運送車両法は熟知しているはずである。

 そんな自明の理がこの裁判官には分からなかった。はっきりと、馬鹿、と言うしか無い。刑事法の専門家も行政法の専門家も、官庁の役人達も裁判官の解釈は成り立たないと言っている。
 そしてその正しい解釈がやっと東京高裁によって実現したのである。
 考え方のおかしな裁判官はいっぱい居る。考え方は人それぞれ違うから、常識だけが通用するのでもないだろう。しかし日本語の理解がおかしければ、根本的な事が狂ってしまう。そもそもは日本語が分からない裁判官が存在する事が大きな問題なのである。