夏木広介の日本語ワールド

駄目な日本語を斬る。いい加減な発言も斬る。文化、科学、芸能、政治、暮しと、目にした物は何でも。文句は過激なくらいがいい。

金正日の手下に成り下がった報道機関

2009年09月03日 | 言葉
 不正入国の罪で労働教化十二年の刑に服させられていたアメリカの二人の女性記者が解放された。新聞は「北朝鮮が恩赦で二人を釈放した」と書いていた。
 私はこの「恩赦」と「釈放」に大きな違和感があった。インターネットで二人の記者の事を調べたが、どれも国境侵犯で、と明記していた。それじゃあ、犯罪とされても仕方が無いか、と不承不承納得した。
 そうしたら今日9月3日、2記者の話が新聞に載った。
 
 必死で草むらや地面にしがみつき、中国側にとどまろうとしたが、北朝鮮兵士に力ずくで引きずられた。

 二人はこのように証言している。更に次のように述べている。

 当初、中国側を離れるつもりはなかったが、海外ジャーナリストとの取材経験が豊富で全幅の信頼を置いていたガイドに促され、川を渡った。その直後に不安を感じて1分も経たない内に引き返す事を決断。急いで戻る途中、既に中国側に間違いなく戻っていたのに、ライフル銃を持った北朝鮮兵士二人に強引に北朝鮮側に引きずり戻された。

 これはまさに不法逮捕である。記者はガイドが出発地点を土壇場で変更するなど、不自然な行動を取っていたとの証言もし、拘束が仕組まれていた可能性を示唆した。
 私は最初から北朝鮮のやり方にでっちあげの臭いを感じていた。だから「恩赦」「釈放」は絶対に間違いだと思っていた。「恩赦」とは「国家的慶事・祭事の際、政府が大赦・特赦および刑の執行の免除や減刑・復権を行う」であり、もっと易しく言えば、「国家が犯罪者の刑の全部または一部を許す。普通、国家の大きな祝い事の時に行う」である。
 北朝鮮にそれほどの国家的祝い事があったかどうかは知らない。知りたくもない。だが、犯罪でもないのに「恩赦」ではないし、「釈放」でもない。
 「釈放」を国語辞典はみな「捕らえていた者を許して自由にする」とひどく簡単に説明しているが、これは悪い説明だ。じゃあ、なにかい? テロ集団に捕らえられていた人が自由になる事も「釈放」と言うのかい。
 とんでもない。それは「解放」である。新聞は確か、「釈放」と「解放」をきちんと正確に書き分けていたはずだ。
 日本はこの米人記者の事件に関して、きちんと正確な事実を把握していたのか。「恩赦」「釈放」と言うからには、明らかに二人の記者は国境侵犯をしていたのだ、との確証を持っているはずである。本当にそうなのか。それは一体誰がどのように証明しているのか。

 北朝鮮が自分達が正義だとして、「恩赦」「釈放」と言うのは勝手である。大体が、すべてが自分勝手な国家なのだから、今更それを批判しても始まらない。
 だが、日本の報道機関は違うだろう。北朝鮮がいまだに日本人拉致を認めていない事をしっかりと知っているのだから、当然に疑ってしかるべきである。そうであるからには、正しく「不法に拘束されていた二人の記者を解放した」と言うべきである。報道機関はいつから金正日の手下に成り下がったのか。
 そうではない、と言うのなら、この事件に関して、北朝鮮側の発言だけではなく、公平な立場の人間の証言を明らかにすべきである。一体、どこの誰がそのような事が出来るのだろうか。