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金属中毒

心体お金の健康を中心に。
あなたはあなたの専門家、私は私の専門家。

14 命の約束

2006-12-31 05:54:20 | 鋼の錬金術師
⑭ 再会 命の約束

 俺がお前を支えてやる。命のある限り自由に動けるようにしてやる。お前の名前の借り賃だよ。



リザの説明は簡潔で無駄が無い。

「大佐、ゼノタイムのラッセル・トリンガムです。彼はエドワード君の友人です」

すでに奇跡の使い手の名は二人の話題に出ていた。

「若いな」 ロイの感想も短い。

(これが大佐?若すぎだな。そういえば、エドが言っていたな。上司はいやみなへたれの女たらしだって。あいつの評価は辛口すぎだ。これでは俺のことはどう報告してるやらだ)

「始めまして、大佐、失礼准将。ラッセル・トリンガムと申します」

ロイの階級章は准将である。

「鋼の報告書で一度読ましてもらった。ゼノタイムでは軍に協力してくれたそうだな」

(あれ、にせもの騒ぎは知らないのか?この反応では)



「彼は国錬(国家錬金術師)を受験しに来ています」

ワン、ハヤテ号がほえた。

「ハヤテの友達です」

リザが笑って付け加えた。

「ほう、では腕を見ようか」

リザは一歩下がった。ロイが手袋をはめる。意識的に強力な闘気を発する。

ラッセルは動かない。緊張しているようには見えない。

「よろしいのですか。美しいご婦人の前で」

「さて、恥をかくのはどちらだろうな」

ロイはラッセルの仕掛けるのを待った。しかし、彼は動かない。

「臆したか、坊や」

「ご冗談を、ただうわさに名高い焔を先に拝見させていただきたいので」

「余裕だな、よかろう」

ロイは怪我をさせないように酸素濃度を調節した。

鮮やかなオレンジの焔がラッセルの足元を囲んだ。

「美しい物ですね。では、こちらからもご挨拶を」

驚く声はリザから上がった。

一瞬の柔らかな光に包まれて青いバラの花束が手の中に下りてくる。

計算外のリザの声にロイの気が乱された。



ぱしぃ

小さな音が聞こえたかと思うとロイの体には植物のつるが幾重にも巻きついた。さらに獲物を求め蔓は動き手袋を切り裂いた。

「お気に召しましたか?」

ラッセルはリザに微笑を向ける。

「見事だわ」

正直な感想であった。まさか利用されるとは思わなかった。

「まったくだ」

ロイの声には感嘆と自分の女に手を出されたとでもいいたげな響きがある。

ロイは無事なほうの手袋の錬成陣を利用して蔓を簡単に焼き払った。

(やれやれ、やはり本気ではないな。まぁご挨拶としてはこんなものか)



リザは花を抱えてハヤテ号を連れて帰った。すでに他の上司に仕える身では長くいるわけにはいかなかった。

「来なさい。鋼のに会わせよう」

先に立つロイの背には隙が無い。

(敵にはしたくないな)

正直な感想であった。



「エドワード、君に客人だ。ゼノタイムのラッセル・トリンガムだ」

(エド・・・?)

そこは明らかに病室とわかる部屋。消毒液や点滴やビタミン剤の、ラッセルにとってはなじみのある匂い。そして暑苦しいほどに温度を上げている。

さらに准将の声が問題だった。先ほどまでの軍人らしい低音はどこへ行ったのか。甘ささえ感じるテノールの声。

(これは、何だ)

ラッセルには理解しかねる空間がそこにあった。しかもたちの悪いことにご当人の大佐は自分がどんな空間を作ったか気づいていない。

「大佐、まだねむいんだぁ」

ベッドの中の小さなかたまりがもぞもぞ動く。

(こ、これ、エドワードの声か?)

ゼノタイムで出あった時のエドはほぼ一日中怒鳴ってばかりいた。まぁ、あの時は喧嘩ばかりしていたし、共同戦線を張ってからもゆっくり話す雰囲気ではなかった。駅に見送りに行ったときもエドと話すとつい喧嘩口調になった。思えばあのころは自分も子供だったのだ。

「だめだ。今寝すぎるとまた夜は眠れなくなる。それに君に客だ。ゼノタイムのラッセル」

「ヘッ」

エドの声のトーンが変わった。一気に目が覚めたらしい。

「ラッセルー?まじかよ」

ガバッと起き上がる。と同時に前かがみになり胃の辺りを押さえ込んだ。

「エドワード」

名を呼んだが次の言葉が出てこない。

(これは裏の患者並みに悪そうだ)



准将は、軍議があるので話は今夜にと言うと軍人らしい強い足取りで去った。出かける前にエドのほほに軽く口付ける。それからラッセルにエドを頼むと言い残した。

住み込みメイドが一度現れお部屋は2階のエドワード様の隣に用意させていただきますと告げた。

先に口を開いたのはエドだった。

「2年ぶりぐらいか、お前いやみなぐらい伸びているな。相変わらず老けてるしなぁ」

ゼノタイムのときと同じようにぽんぽん言うエドであった。しかし、ラッセルはエドの言葉には乗らなかった。

(無理がある)

さっきからずっと腹部を押さえているエドの手をそっと動かしゆっくりと触れた。明らかな腫瘍の気配。裏治療のときに何度も感じた気配である。

「胃の幽門部か、かなり痛んでいるな」

「あ、ばれたか。ちょつと、わけありでこんな状態なんだ」

「見事に中身の無い説明だな」

話しながら薬棚とおぼしきところから鎮痛剤を下ろした。

手際よく5パーセント糖液に混入する。エドの腕はすでに注射の痕だらけである。すでに細くなり始めた血管に文句を言われる前に針を刺す。

「うまいな。ロイのやつ、人の腕だと思って何回もさすんだぜ。痛いしさ」

「医者はいないようだな」

「絶対治らないと保障してくれるだけの医者に用事は無いさ」

「エドワード」

あまりにさびしい横顔を見せるエドに思わず抱き寄せる。

「あきらめるな。あきらめるのはお前のやり方じゃないだろ。俺が助けてやるよ。どんなことをしてでも。赤い石を作り出してでも」

「ラッセル、俺はあきらめているわけでもないんだ。自由時間は3ヶ月。その間に絶対にアルを元に戻してやる。赤い石を手に入れて、必ず」

「医者はどう言ったんだ。一年か?」

「お、すげー勘。正確には動けるのが3ヶ月。入院して一年だ」

エドの声に澱みは無い。

(すでにすべてを受け入れてそれでも何かをはっきり言えば、人体練成を行おうとしているのか)。

ラッセルは流しの治癒師達の情報網から裏の情報をつかんでいた。アルは空っぽの鎧と情報は伝えた。それを今、確認しようとは思わなかった。

「それなら、命のある限りお前を自由に動けるようにしてやる」

「もう、等価交換できないけどな」

「お前の名前の借り賃だ。利息付で返してやる」



⑮ 治癒師のやり方

エド、服を全部脱いでもらおうか

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うーん銀のトリンガムを先に打った後では緑陰シリーズのラッセルのほうが老けて見えるなぁ(笑)

それにしてもうちの子たちは胃病持ちが多そうだ。なにがあってもびくともしないのはリザさんとアームストロングさんぐらいではなかろうか

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