金属中毒

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ユリイカ housaku1031

2008-04-02 23:27:17 | 鋼の錬金術師
Housaku1031
ユリイカ

ユリイカ ラテン語で理解した、解ったという意味である。
この日の朝、ラッセルは硬い寝床の中で、この言葉を叫んだ。
(俺は正気を失くしたわけじゃない。逆だ。いままでより以上にエドワードを理解して想っていつくしんで、だからあいつの事がここまでわかるようになった。今までの異常な幻覚、あれはエドの視界だ。俺はあいつの視界を共有していたんだ。)
 それを教えてくれたのは弟の声。昨夜、また幻覚を見ていると思った。目を開いていても目の前の老女は見えない。見えるのは闇ばかりだった。以前にもこんなふうに急に見えなくなる事はあった。だが、今回は弟の声が聞こえた。はっきりと。

兄さん、ぼくの声聞こえる?ぼくたちね、誘拐されたんだ。大事にしてもらってるけど。ここがどこかわからない。でもセントラルからそんなに離れていないはずだよ。気候が変わらないし、欲しいって言い出してから1時間以内に保存の効かないお菓子がもらえるから。ほら、3週間くらい前に准将がケーキを買ってきたでしょう。あの店の極薄クレープを欲しがってみたんだよ。味がまったく落ちてないから作ってから1時間とたっていないよ。
 あの時、兄さんずいぶん怒ったよね。『カロリーの高いお菓子を食べさせるなって。カロリー計算が狂うし、消化器系にも負担がかかるから、絶対禁止です』。こんなことで准将に怒鳴りつけるなんて、兄さんだけだろうねぇ。でもそんな事言っておきながら次の日には兄さんがマカロンをお土産にしたよね。マカロンのカロリーはケーキより高いのに。
 エドワードさん、とってもかわいいね。あんなかわいい顔で喜ばれたらつい甘いものも買ってきたくなるよね。
かわいくて、大事で、エドワードさんが、いちばん・・・。
守るから、僕がかならず守るから。だからにいさん・・・

だからにいさん、その続きの言葉は聞き取れなかった。焦点の合っていない目をしたラッセルを心配した老女が早く休むように声をかけたからだ。だから、ラッセルは知らない。弟が言いたかった事を。弟は「自分達は大丈夫だから、兄さんは心配しないで。一人で助けに来るなんて、あの時みたいに無理はしないで」。そう言いたかったのだ。だが、ラッセルは弟が助けを呼んでいると思ってしまった。

そして翌朝、いままで自分自身の正気をうたがっていて、その不安から不安定になっていたラッセルは、一晩で真実を悟り自信と強気を取り戻した。その姿は、月の光の下でだけ開く花のようだったと晩年に白水は書き残している。









注がれた毒

マスタングは鋼の錬金術師が死んだら、若返りの術を使う錬金術師を送ると約束した。その代償はマスタングが大総統になるための戦いへのシン軍の介入。


裏切り者!


その叫びはラッセルののどからは出なかった。極端に興奮すると人は叫ぶよりも声を失うものだ。このときの彼もそうだった。