俺の翼に乗らないか?

スターフォックスの一ファンのブログ

「ファルコとの出会い」その63

2011年09月14日 17時39分28秒 | 小説『ファルコとの出会い』

「わかったぞ、オレが翼をもぎ取ったのは、てめえの機体だな」
『え? なんでわかったの?』
「てめえ以外に、誰がいるってんだ」
『ちぇ。何だよそれ』
「フッ、てめえにはあんまり、負けたって気はしないかもな」
 ザザ。雑音が入り、二人の会話にフォックスが割り込む。
『ファルコ。だがしかし、お前の機体の機動力を奪った新型弾を開発したのが、このスリッピーなんだ』
「なに」
『そうそう! ま、オイラはこの作戦の立役者、ってとこかな~っ』
『まぁた、調子に乗りおってからに……』
 ペッピーの呟きが、さらに割り込む。
 やはり自分は、この三人に負けたということか。ファルコは思った。
 もしも。もしももう少しだけ、この三人に出会うのが早かったなら。自分の運命も少しは変わっていただろうか。
 後悔に似た気持ちが浮かびかけ、慌ててそれを振り払う。前だけを見て突っ走ってきた自分が、いまさら後悔だと?
 前だけを見て、後に残された者をかえりみなかった結果がこれだというなら。なおのこと、前に進まねばならない。積もりに積もったツケを清算するために。
 たとえ行く先が監獄だとしても、地獄よりはましだろうさ。
 左右に1機ずつと、背後に1機。3機のアーウィンに囲まれて、ファルコはゆっくりと飛行を楽しんだ。この愛機ともこれでおさらばかもな、と思いながら。


 3機のアーウィンと、1機の改造移送機が捕物を繰り広げた海上から、30skmほど隔てたコーネリアの市街。
 ビルディングが林立し、空中ハイウェイのガイドビームが縦横無尽に走り、交差点は雑踏と喧騒にあふれている。
 人も物質も、情報も過密な都市のその中心部から二駅ほど離れた住宅地の、とあるアパートメントの205号室で、ひとりの主婦がソファの上で、横になるとも、座るともいえない格好のまま午睡していた。ソファの脇には電気掃除機が、コードを伸ばしたまま無造作に立て掛けられている。ソファの向かいの壁には、いまコーネリアで流行の、くるくると巻き取れるタイプのTVモニタが掛けられている。
 家事に疲れてひと休みするうちに、眠り込んでしまったというところだろうか。
 すうすう、と寝息を立てる彼女の前で、電源が入ったことを示す小さな音とともに、モニタの黒い画面がふうっと明るくなった。
 違和感を感じて、彼女は鼻先をあげた。両目にかかるほど長く伸びた白い体毛(彼女の自慢だった)を掻きあげ、寝惚けまなこをしぱしぱとまばたく。
 壁のTVがやけに明るく発光していることに気づいて、ガラステーブルの上の小さなリモコンに手を伸ばした。TVに向けて電源ボタンを押すが、発光は消えない。
 いやに、まぶしい。空いた手で光を遮りながらもう二三度、電源を切ろうとするが、発光するモニタは答えない。
 背面にある主電源を切ったほうが早い。そう思ってソファから立ち上がったとたん、TVから大音量で音楽が流れ出した。真っ白に発光するだけだったモニタが色づき始め、その奥から、茶色い体毛に覆われた、ひとりの小さな老人が姿をあらわした。
 その顔を見、彼女はすとん、とソファに腰を下ろしてしまった。
 どこかで見かけた顔だった。数年前のニュースではとくに。