レーダーから、機影を示す輝点が消えた。
『目標消失。低空を飛行しているため捕捉できないものと思われます』
「やつめ、こちらに気がついたぞ」
ペッピーが言う。
「グレートフォックスで近づいても、逃げられるだけだ。アーウィンで3方向から接近し、仕留める」
フォックス・マクラウド。数ヶ月前はコーネリア軍の士官候補生であったが、いまは新生スターフォックスのリーダーである。
「アーウィンの状態はどうだ、スリッピー?」
声をかけた先には、メカニック担当のスリッピー・トードが、落ち着かない様子で立っている。
「アーウィンは、だいじょうぶ万全だよ。でっ、でも、オイラも出るの~?」
「なんだ、不安なのか? おまえもコーネリアのパイロット候補生じゃないか」
「うん、まあね……」
ポケットにレンチをつっこみ、もぞもぞと帽子をかぶり直す。
「スリッピー、安心せい。奴の機体には武器は搭載されておらん。恐れるべきはスピードだけだ」
なだめるようにペッピーが言う。
「ぐずぐずしてはおれんぞ、出るなら今だ。不安があるなら留守番だぞ」
「待ってよ、出る! オイラも出るさ、もちろん!」
スリッピーが慌てた声を出した。
「よし、出撃だ。ナウス、グレートフォックスを頼む」
『お任せください』
「フォックス、スリッピー。初仕事だからといって力まなくてもよいぞ。3人でかかれば、必ず奴を追い詰められる。自分を信じるんだ」
スペースダイナミクス社の特別製、G-ディフューザー搭載全領域戦闘機。
「アーウィン」と呼ばれる3機の機体が、ハンガーで静かなうなりを上げている。
プラズマエンジンが駆動をはじめ、機体後方の噴射口が青く発光しだした。
「システム、全て良好」
『ロックボルト、解除します』
機体の固定が解除され、その底面がわずかに格納庫の床より浮かび上がった。
「全機発進!」
フォックスの声とともに、3機のアーウィンはカタパルトより順々に射出され、抜けるような青空と白い雲、そしてあおく広がる洋上にその姿を浮かべた。