ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

こぐまの星

2017-03-30 04:20:31 | 短歌






夜来ると 海のひとでを そそのかし こぐまの星を かたれとぞいふ






*昨日は星について語ったので、今日の短歌も星を詠んだものを選んでみました。「こぐまの星」とは、もちろん、こぐま座にある北極星を意味します。

夜が来る。嘘が勝つ暗黒の世が来る。馬鹿は何をしてもいいのだ。だから海のひとでをそそのかし、おまえが空にのぼって、北極星になれと、誰かが言う。

痛い歌ですね。

ひとでは海星とも書きますが、それはその形が五芒星に似ているからで、とても星にはなれない。子供が学芸会で星の役をするときにかぶるお面の役くらいはできるだろうが、空の真ん中に登って、すべての人を導く尊い星になどなれるはずがない。

それなのに、それになれという。どうやってなるつもりなのか。馬鹿はもちろん考えている。ひとでに星の服を着せ、この世界に嘘をふきまくる。空に登れないひとでを星にするために、海こそ空なのだということさえ、平気で言う。そして、ひとでを星にして、本当の星をひとでにする。

何もわからない人間は、それに騙されて、大変なことになる。海が空になどなれば、世界がさかさまになりますから、何もかもがおかしくなってくる。そのことからくる苦しみを、あらゆる手立てを使って何とかせねばならない。

宮沢賢治の童話に「双子の星」というのがありますね。そこでは、空の双子の星が箒星に騙されて海に落ち、そこでひとでになると言われるのだが、そうはならずに、再び天に帰っていく。

星は騙されて海に落ちることはあるかもしれませんが、決してひとでにはなりません。明るい気持ちで愛を信じるものは、決して悪に溺れないのです。

キリスト教世界では堕天使などという考え方がありますが、天使は堕落したりしません。霊魂が悪に堕落することがあるのは、解脱をして愛に目覚める前の、人間の霊魂だけです。愛の真実について何も知らない間の、愚かさをかこっている人間だけに起こる現象なのです。目覚めてしまえば、二度と馬鹿なことなどできはしない。

永遠の真実の中に目覚めた霊魂は、自分の中にある鋼の真実が、決して曲げることはできないものだと気づくのです。そのような魂は、海の底に落とされようが、汚い泥沼に落とされようが、決して自分を汚すことはないのです。

だが、ひとでのように何も知らない小さな霊魂は、単純に、馬鹿なことをしてでも、星のように偉くなりたいと思うのだ。

ひとでに、北極星になれとささやいたものはだれでしょう。ほかでもない。そのひとで自身です。ひとでが自分で自分に言ったのです。馬鹿なことをして、偉くなってやれと。嫌なことをして、みんなを馬鹿にして、楽に、世界で一番偉くなってやれと。

そういうことを平気で考えられるのは、愛について何も知らない、若い魂だけです。








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