ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

鉄の闇

2017-03-24 04:25:13 | 短歌






あどるふの 鉄の闇をも 照らさむと 鵺のひそみに 珠を秘す月






*今日も短歌です。中国の教養ばかりでは何ですから、西洋に飛びましょう。あどるふはもちろん、アドルフ・ヒトラーのことです。

「鵺(ぬえ)」というのは、トラツグミの異称でもあるそうですが、ここでは得体のしれない妖怪変化のようなものを意味します。手元の辞書に由れば、頭は猿、体は狸、尾は蛇、足は虎のようになっている、想像上の動物だそうです。とても気味の悪い声で鳴き、その声をきくことは不吉であるそうです。

アドルフのような独裁者には、鵺のようなものでさえしかめっ面をするものだ。だがその、鉄のような絶望の暗闇をも照らそうと、鵺のしかめっ面の中に、珠のような愛を、月は秘めておくのだ。

実に優しい愛ですね。かのじょの詩に、「アドルフのために」というものがありましたが、覚えておられる人もいるでしょうか。あれを書いた時、かのじょはまだ30代でした。若すぎるとも言えないが、まだ人生の暗闇をそれほど知ってはいなかった。明るく、あっけらかんと、神に願ったのです。虐殺と独裁を行った究極の馬鹿でさえ、救ってくださいと。

純真という心は、時にあまりにも痛い。

リンクをつけますから、読み直してみてください。かわいらしすぎるでしょう。あの人はこういう人なのだ。馬鹿にはまぶしすぎるほど、きれいなのですよ。

だがあの人も、ヒトラーについては歌えたが、スターリンについては何も言えませんでした。スターリンのことは知っていましたがね、彼については詩の言葉が何も浮かんでこなかったのです。どんな愛にも、限界はあるのですよ。

スターリンについては、彼、試練の天使の作があります。つぶやき用に作ったものだが、発表する機会を失って死蔵していたものです。ここでやってみましょう。





露ほども なきと思ふな 国の罪 鉄の男を 戒めとせよ





露はもちろん、ロシア(露西亜)の意味も含んでいます。ロシアよ、国の罪が全然ないなどと思うな。スターリンのことを思い出せ。

スターリンとは、ロシア語で「鋼鉄の男」という意味です。英語のスティールと語源は同じです。鉄と鋼は微妙に違いますが、ここでは同じものとして使いました。

鉄は「くろがね」。金や青銅などと違って加工がしやすく、石器などよりはずっと丈夫で優れた武器を作ることができる。鉄器の発明によって、人間はたくさんの武器を製造し、激しい戦争をやるようになった。恐ろしく武器を進化させた。究極の殺戮さえ行った。

黒い金属というものは、闇に響く。その奥に、これを使って何をしてもいいのだぞという、魔の声を聞くことがある。

そのような鉄が支配している心の闇に住んでいるものでさえ、月はかすかにでも照らそうとしているが。

鋼鉄そのものであるというスターリンの闇には、誰がいくだろうか。







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