こと秘めて ちひさき貝の 琴を弾き 明日を歌ひて 澄み果つる月
*よい歌ですね。素直なところがかのじょに作風が似ている。だが幾分男性的です。そういう人が詠んだのです。
何も言わずに、小さな貝の琴を弾いて、人間の未来を導く明日の歌を歌い、清らかに澄み果ててしまったのだ。あの人は。
あの人は、痛いことはほとんど何も言いませんでしたね。人間が嫌なことをしているのは知っていたが、できるだけ見ないようにして、いいところを見ようとしていた。そしてそこを何とか伸ばしてやろうとしていた。
できるのです。わたしたちはすばらしいのです。
あの清らかな言葉は、そういうあの人でなければ歌えない言葉です。まっすぐに、人間の真実を信じている。
その信念を曇らせるような事実はたくさんあったが、あの人はそれには半分目をつぶっていた。今は迷いの闇の中にいる魂にも、その中には鋼のような真実があることを信じていた。その真実がいつか芽を出すときが来るまで、わたしは人間を信じ続けねばならない。あの人はそう言う人だったのです。
疲れ果てて倒れるまでそれをやり続けた。まっすぐな人だからできることです。
あなたがたはよく、こういう単純な人を馬鹿にして、もっと難しいことができる人をもてはやしますが、本当は、こういう人がいるからこそ、あなたがたは生きていけるのですよ。馬鹿になってもなっても、自分を信じてくれる。いやなことをされてもされても、人間を信じてくれる。人間はそんな天使を、馬鹿だと思って馬鹿にし続ける。何にもわかってないと思い込んで、嫌なことをし続ける。
あの人も、迷うときがないことはなかった。だが、自分が信じてやらねば、あなたがたがどんなにつらいだろうと思うと、それをやめることができなかった。馬鹿だと言われるなら、馬鹿になればいい。愛というのは、そういうことができるというものなのだ。
高等な技術が使える人も尊いですが、このように愚直な自分をまっすぐに守っていく、やさしい人も尊いのです。こういう人が、明らかによいことをまじめにやってくれるからこそ、すべてが生きてくる。こんな人が、すべてはよきことだと信じて、まじめにやってくれるからこそ、あらゆる人が生きてくる。
あの人は曲がらなかった。最後まで人間を信じた。それを捨てるくらいなら、消えるほうがいいと言って消えて行った。そして、その心は、永遠に消えないまま、あなたがたの中に残るのです。
小さな二枚貝のような一台のパソコンに、清らかな言葉を打ち続けていた。それだけで、すべての人間を救うことができる光を作った。人間が、本当の自分を生きられるようになる、明るい未来を、あくまでも信じ続けて、すべてをつらぬいた。
いつまでもその心に目を背けていては、もう人間でいられなくなりますよ。