ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

ダビデ

2017-03-26 04:20:13 | 短歌






暗夜なれば 熱き怒りの 石もちて 痛きダビデは 暁に立つ





*今日はヘブライの神話から行きましょう。これは2007年の作です。かのじょが、シリウスと出会った頃のものです。

これほどキリスト教が隆盛している世界では、聖書の教養を無視することはできません。ダビデとかスザンナとかアブラハムとかヤエルとか、新約からはユダとかピラトとか、主な名前と経歴については、調べておいた方がいいですね。

バベルの塔の神話などは仮構ですが、ダビデ王は実在しました。ユダヤ民族にとっては偉大な王でしたので、忘れることなく記録していたのです。投石器という簡単な武器で、ペリシテ人の巨人ゴリアテを倒した。人間にとっては、すごいことをしてくれた英雄です。こんなことをしてくれた男は、忘れることはできません。

後にバテシバのことなどで汚点も残しましたが、それも含めて、人間的な陰影を持つ存在として、強く人間の心に刻されている。画家もよく、岩のように大きなゴリアテの首を持ったダビデの絵を描いています。

しかしここで詠われているダビデは、史実と伝説の中のダビデではなく、ただ、ダビデのようなきつい男という意味です。誰を意味しているかはわかるでしょう。

わたしたちはよく、痛い、という言葉を使いますが、それはどういうことかというと、法則的には正しくないことだが、それをやらねば活路が開けないということがあるとき、勇を賭してそれをやる、というような類のことを言います。馬鹿なことだとわかっているが、それをやらねばみんなが困る。ならば、反動をかぶり自分が痛い思いをすることも覚悟してそれをやらねばならない。それができる男、それが痛きダビデだ。

「暗夜なれば」という字余りの語句が痛いですね。法則をはみ出す、という感じが出ている。こんな馬鹿な世の中だからこそ、熱い怒りの石を持ち、ダビデは痛いことをするために、立ち上がる。彼の目の前には、時代の夜明けが見えている。

おもしろいでしょう。

かのじょは、シリウスの存在に、夢を見ていたのです。女というものは、すばらしい男という存在に、こんな夢を見ているのですよ。

この夢を、すっかり無視してしまえば、男は廃れるなどというものでは、ありませんね。







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