先日、トラックで配送途中のことだ。
名古屋の大型スーパーの搬入口からハンドルを切って出ようと走り出した瞬間、ハンドルに妙な違和感を感じて急に重くなった。
搬入口の前の道は2車線でいつもならすんなり出れるのに、そのときは2回も切り返してなんとか出た。
深夜で車の通りはあまり多くないが、待ってくれている車は「こいつ何やってんだ?ヘタクソ~。」ってきっと思っただろう。
とにかくハンドルが固まったように重く、深く切れないのだ。
これじゃあ高速どころか、ちょっと先の交差点すら曲がれない。
なんとか路肩に寄せてハザードを出した。
あわてて会社に連絡して、修理の手配をしてもらった。
後から来たうちの会社のパン配送運転手に重ステになって故障した件を伝えると、「オイル漏れすごいですよ」と教えてくれた。
暗くて気付かなかったが、確認すると店の搬入口の前から道路に至ってかなりのオイルが漏れて、雨上がりの濡れた路面がきらきら光ってツルツル滑る。
しかし、日ごろ車のメンテナンスについてこれだけああだこうだと言っているが、ことトラックの構造についてはとんと疎い。
どこにパワステフルードのタンクがあるのかもわからず・・・。
のち、ISUZU(トラックのメーカー)から連絡が入り、状況と故障個所の確認をされる。
前輪の一軸と二軸の間にパワステユニットがあり、そのどのあたりがオイルで汚れているか教えてほしいとのこと。
確かに言われたとおりの箇所がオイルまみれでひどい状態だ。
パワステ配管の途中に2本のホースがあるが、どちらかからオイルが漏れた形跡はないですかと聞かれる。
確かに2本のホースのうち、短いほうのホースの一部がささくれていて、そこがパンクして漏れた感じだ。
短いほうのホースから漏れているようだと伝えると、ちょうど短い方のホースは手持ちがあり修理できそうとのこと。
もし漏れが長い方のホースだったら部品がないのでレッカー移動と言われ、不幸中の幸い・・・胸を撫で下ろした。
一時間ほど待つとメーカーの修理担当が到着し早速修理を開始、やはり見立てどおりで修理ができた。
ホースの取り付け部分はかなりのトルクで締め付けられ、尚且つ固着があるようで、バーナーであぶって緩められたようだ。
一時間もかからず修理は完了した。
その間、もう一人の助手の方は搬入口と道路のオイル処理だ。
特殊なオガ粉のようなものを撒いてオイルを吸わせそれを回収していた。
修理完了したパワステは、さっきの重ステがうそのように軽々とがまわる。
日ごろ当たり前に思っているが、いかに人は機械の力に助けられているか実感した。
助けられているというか、普通車ならともかくトラックではパワステの力なしでは到底運転はできないと思った。
カーブや交差点をハンドルを切らずには曲がることはできないのだから。
そもそも車を動かしている動力にしたって、ガソリンなどの動力源なしではなしえない。
人がいくら頑張ったところで車は動いてくれないのだ。
人の無力さを実感した出来事だった。