新型コロナウイルスが世界中を騒がしており、ウイルスを目に見えない人類の敵と称する政治家もいるほどの嫌われ者だ。しかし、ある種のウイルスは人類の存続に重要な役割を果たしており、人間にとって無くてはならない正義の味方のようである。このことが解明されたのが2000年だそうだからつい最近のことだ。
さて、赤ちゃんが誕生する際、受精から胎盤形成の過程において、母親の免疫系にとっては父親の遺伝形質は異質な存在であり、普通であれば免疫反応によって拒絶され赤ちゃんが出来る筈がない。しかし、ある種のウイルスが子宮の胎盤形成を助け、このウイルスのお蔭で赤ちゃん誕生となることが解明されたのだそうだ。
動的平衡で有名な福岡伸一博士も、ウイルスと人間の共存関係を語っている。ウイルスは構造の単純さゆえに、生命誕生の最初から存在したものでは無く、高等生物が進化した結果、はじめてウイルスが現れたと推測しているそうだ。高等生物の遺伝子の一部が外部に飛び出したものとして、つまりウイルスはもともと我々の一部だったと言う訳だから、進化とは摩訶不思議なものだ。
新型コロナウイルスは人間に感染し易いと言われているが、歴史を遡れば我々の体の一部であった所以かも知れない。これはウイルス表面のたんぱく質が、人間の細胞にある血圧の調整に関係する蛋白質と強力に結合し、そこに人間の細胞膜に存在する蛋白質分解酵素が働き、ウイルス内部の遺伝物質を人間の細胞内に注入するのだそうだ。それは人間側が極めて積極的にウイルスを招き入れているとさえ思える挙動をしているのだそうだ。
つまり人間の方がコロナウイルスに感染したがっていると理解され、ウイルスこそが進化を加速する役目を担っていると暗示しているのだそうだ。親から子に遺伝する情報は垂直方向にした伝わらない。ウイルスのような存在であれば情報は水平方向に、場合によっては種を超えてさえ伝達し得る。それゆえウイルスという存在が進化のプロセスで温存されていると理解できるのだそうだ。
種を超えた伝達とはよく理解できないが、今回の新型コロナウイルスも人間の進化を促すものであれば、将来が楽しみにもなる。しかし、進化とは一般的にはよりすぐれたものや複雑なものになることと理解されるが、あくまでも人間にとって有益であるとの意味であり、自然全体にとってどうかと言うと考え込んでしまう。
今や地球温暖化問題で代表されるように人類は地球環境を破壊してきた。地球全体から見て”より良きものとは”必ずしも人間に都合が良い物ではないだろう。
新型コロナウイルスはコウモリ等の野生動物が保菌していたウイルスが遺伝子の突然異変により人間にも感染するようになったと説明される。しかし、この突然異変も一度限りの現象ではなく、何度も繰り返し起こっているとの話だ。新型コロナウイルスも武漢型とかヨーロッパ型とか呼ばれ、更にはアメリカ型もあるそうで、自然も色々模索しているようにも思える。
新型コロナウイルスが進化を加速する役目を担っているとすれば、それは人類をどちらの方向に導くのであろうか。2020.05.23(犬賀 大好-602)