4月16日に発令された国の緊急事態宣言は5月いっぱいまで延期されることになった。この宣言は数々の経済活動に制限を加えるため、宣言解除の日時や解除のための条件が明らかにされることが熱望されていたが、政府からは5日の延期宣言でも示されなかった。
解除のための絶対的な条件は新規コロナウイルスが収束する見通しが示せることであろう。コロナウイルスの専門家会議は、解除の条件は感染状況等によると言っているだけで極めて定性的な説明だ。感染状況に関しては、・新規感染者数、・累計感染者数、・倍化時間、・感染経路が分からない割合、・実効再生産数、等を挙げており、一見詳細に検討しているように見える。しかし専門家が把握するこれらの数値は限定されたPCR検査結果からの統計値であり、井戸の底から天体観測をするようなものであり、将来を予想するには余りにも心許ない。
専門家会議のメンバーの中には、新規感染者数が1日100人以下となることが目安と言う専門家もいるようだが会議の統一見解にはならなかったようだ。現在全国の1日の新規感染者数が現在200~300名であり医療崩壊も目前に迫っているが、100人を下回り、2ケタになると現状の医療体制でも継続的に感染者を受け入れることが出来るようになるからだが、その主張の根拠だ。
これも一つの目安であろうが、100人以下が永遠に続く保証が無くてはならない。現在PCR検査は限られた条件の人にしか実施されず、統計上現れない隠れ感染者がその10倍は存在すると主張する人もいるが本当のところは分からない。現在県外に出ることが強く自粛要請されるが、これも東京から地方へ移動した人が感染を広げた反省からであり、この事実からも東京の隠れ保菌者が如何に多いかを暗示している。
国が明確な基準を示さない中、5日大坂の吉村知事は独自の判断基準を示した。そこでは指標として、4つの具体的な数値で表される警戒基準を設け、4つの基準すべてが原則7日間満たされれば自粛は段階的に解除し、解除後であっても基準が満たされなくなった場合には、改めて府民へ自粛などの対策を要請するという方針とした。具体的な数値を明示した判断基準を示せるのも、大阪が先見の明を発揮し幅広くPCR検査を実施して保菌者の実態を把握出来ているからであろう。
大坂の発表に慌てて、西村経済再生担当相は6日の記者会見で、緊急事態宣言解除の判断に関し、”数値基準について専門家と議論を進めている。近く示したい”と述べた。具体的には、新型コロナウイルスの新規感染者数や感染経路が不明な患者数、PCR検査の件数などが判断材料になるとの考えを示したが、大坂の後追いである。
専門家会議は現状認識として感染者数が減少していると判断しているが、なぜ判断できるのかとの質問に対し以下の答弁をしている。医師が必要と判断した場合及び濃厚接触者を中心に PCR 等検査を実施してきたため、感染者の全てが把握されているわけではないが、検査件数が徐々に増加している中で、陽性件数は全国的に減少傾向にあることなどから、新規感染者数が減少の傾向にあることは間違いないと判断されると、苦し紛れの答弁をしたのだ。
専門家会議は安倍首相からも判断基準を示すように要請されているが、先述のように隠れ保菌者の実態を把握しておらず、この状態で判断基準を出すことが可能であろうか。2020.05.09(犬賀 大好-598)