地球上には実に様々な生き物が生息している。その生息数の割合はほぼ一定と思われるが、時には突然変化する。
国際連合食糧農業機関(FAO)の統計によると、乾燥地帯に生息するサバクトビバッタが、アフリカ大陸北東部のソマリア付近で大量発生し、一日に100〜200kmも移動しながら、農作物を食い尽くし、更に海を越えて中近東のサウジアラビア、イラン等を経由し、更にパキスタン、インドなどへ飛来し、中国西部に迫っているとのことだ。
野生動物が突然大発生するのは食べ物が充分にあり、天敵の居ないことが条件だそうだ。バッタの大発生は日本では無縁と思われるが、ねずみの大発生は身近である。
2018年10月にオープンした東京・豊洲市場にわずか半年後建物内でのネズミの大発生が話題となった。この件に限らず都内の飲食店街にネズミが多いことは予てより有名である。今回のコロナウイルス騒動でも自主規制により閑散とした飲食店街をネズミが我が物顔に走り回っているとの報道もあった。
ネズミの天敵は人間であり駆除剤であろう。しかし東京では、スーパーラットと呼ばれる、駆除剤が効かないネズミが増えているという。ネズミの繁殖力は凄まじいため、そんなスーパーラットが雲霞のごとく増殖していることは想像に難くない。中には猫の大きさのネズミもいるとのことだ。
折りしもパリの水道公社の研究チームが下水処理場の水からコロナウイルスを検出したとの新聞記事が4月末あった。また、仏パリ市当局は同時期、市内の道路清掃などに使用される雑用水道の水から新型コロナウイルスの微量な痕跡が検出されたと発表した。
昔からネズミから人へ感染する疫病は多く、中でも中世ヨーロッパで流行したペストが非常に有名だ。14世紀に起きた大流行では、当時の世界人口4億5000万人の22%にあたる1億人が死亡したと推計されている。日本では1899年から1926年までの日本の感染例は2,905名で、死亡例2,420名との記録があり、新型コロナウイルス程の流行の大きさでは無かったようだ。
しかし、ペストは人獣共通感染症だそうだ。ネズミなどげっ歯類を宿主とし、その血を吸ったノミによって拡散され、野生動物やペットからの直接感染や、人間の間での飛沫感染の場合もあるそうだ。
現在のパリ市街の下水道の完備はペストの流行の反省からだとのことであるが、パリにおける下水道や雑用水道からのコロナ菌の検出は現時点での流行の激しさを感ずる。
とは言え日本ではネズミとコロナウイルスの濃厚接触が既に始まっているかも知れない。新型コロナウイルスは元々野生動物が保菌していたウイルスが人間にも感染するように変異したとのことだが、ペスト菌同様にネズミとの相性はすこぶる良いかも知れない。ネズミにも感染し媒介するようになるとそれこそ大変な騒動になる。ネズミの天敵は人間の他に猫もいた筈だが、繁華街における猫の活躍は余り聞かない。
兎も角、繁華街のネズミは衛生上よくない。コロナ以前の問題としても一刻も早く全滅に向けた努力をすべきだが、ネズミ退治の話はほとんど聞こえてこず、相変わらずネズミ天国のようだ。大事に至る前に対策すべきだが。
2020.05.06(犬賀 大好-597)