日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

就活ルールの廃止提案に対し大学が反発するとは

2018年09月22日 10時49分55秒 | 日々雑感
 経団連の中西宏明会長が2021年春以降入社の学生から就職・採用活動ルールを廃止する意向を示した。現在日本の新卒就活市場には、3月1日以降説明会開始、6月1日以降選考活動開始、いう経団連が定め、企業に遵守を要請しているルールがある。

 しかし、このルールは実際にはほぼ守られていないのが現状である。2,000人を超える2018年度卒の内定企業実績を調査したところ、6割以上が6月の就活解禁前に内定を得ていたとのことである。また日本経済新聞によると、経団連の加盟企業の31.4%が6月前に選考活動を行っていたとのことである。就職前に企業で実習するインターン制度をもう一つの選考制度だと考えると、この比率はもっと跳ね上がるとの話だ。

 このように多くの企業や学生が守らないルールは無くともよいと考えるのが普通だ。また、これまでのように一定の時期を定めて一括して採用するという方式は、時代遅れともなっているのだ。

 すなわちIT業界のように非常に変革の速い業界もあり、必要な時に必要な人を採用する傾向が強まっているのだ。また留学する学生が増えたことも背景にある。外国には9月を卒業とする学校も多く、4月卒業の日本と就活時期がマッチしない事情もある。

 東京商工会議所の三村明夫会頭は、経団連の中西宏明会長が就職・採用活動のルールの廃止を訴えていることに対し、ルールがないと、学生の就職活動を始める時期が際限なく早まる、と懸念を示した。

 大学1年生から就職活動が始まることになるだろうと考える理由の一つは、大学1年生から内定を出す企業は既に存在しているということだ。例えば、ユニクロや外資メーカーのネスレは大学1年生から選考を受けることが可能となっているそうだ。

 もしこのようなことが企業全般に広がったなら大学受験の終了後に就職活動が始まることになりそうだが、この指摘は的外れなような気がする。

 これらの企業は、大学の教育に全く期待していないのだ。人を単に労働力としてしか考えていないのだ。学生は早めに安心を得たいのであろうが、安心を得た後、学業に専念すればまだしも、遊びやバイトに専念するのが大多数ではなかろうか。

 学生を単なる労働力としてしか見ない企業は人気が下がるであろうし、大学を遊びの場と考える学生も企業は敬遠するだろう。

 就職活動が早まるもう一つの理由は、優秀な人材確保のため企業が自社のインターン制度を拡充し、インターン受け入れを事実上の採用活動とすると考えるからだそうだ。本来のインターン制度は、就職活動とは別に企業の内実を知ってもらうことであるが、採用活動と区別することは難しい。

 新卒で入社後3年以内の離職率が3割にもなるとの話であるが、入社前の理想と入社後の現実にギャップを感じて離職するのが大きな理由であろうが、インターン制度は現実を知る一助になっている。

 既に現在でも中小企業やベンチャー企業ではインターンシップの受け入れという形で大学3年以前から学生とコンタクトはとっており、ルール変更があろうとなかろうと今後盛んになるだろう。

 また、就活ルールを廃止して自由競争させると学生が勉強する時間が無くなるという声もあるが、まったく的外れだ。そもそも大学での勉強は自主的にやるもので、授業に出ようと出まいと、卒業試験で評価すればよいのだ。

 就職活動を規制している現状でも日本の大学生は、特に文系の学生はほとんど勉強しておらず、いくらでも時間的余裕がある筈だ。本来学生は自主的に自由に時間を使うべきであり、就活ルールの撤廃は歓迎すべき話の筈だ。しかし、この自由さをどう使ってよいか分からず、何かしらの規制を欲するのだ。

 大学にとって学生は金蔓であり、お客様であり、お客様は神様なのだ。学生の嫌いな卒業試験でもしようものなら、学生が逃げ出し、厳しくできないのだ。大学は学生の言うことを聞かなくてはならない。

 ところで、経団連会長の中止宣言に対し、学生や大学側に不安が広がったため、政府が調整に乗り出したそうで、元の木阿弥になりそうで、情けない。2018.09.22(犬賀 大好-479)