日々雑感

最近よく寝るが、寝ると言っても熟睡しているわけではない。最近の趣味はその間頭に浮かぶことを文章にまとめることである。

大学受験において差別を味わった女性のやるせなさ

2018年09月08日 09時06分21秒 | 日々雑感
 東京医科大医学部の不正入学問題は、女子受験者の一律減点問題へと意外な方向に展開した。大学への入学試験において、一次試験の点数に対し人為的な操作が行われていたことが明らかになったのだ。女子学生の減点のほか、一部の男子受験生に加点することもあったという。

 そもそもの切っ掛けは、私大支援事業を巡る受託収賄罪であったが、そこで起訴された前文科省局長佐野太被告の息子も、一次試験で同様の操作で加点され、不正に合格したとみられている。

 入試での一律減点操作は女性の入学人数を3割程度に抑えるためで、2010年前後に始まっていたとされ、結構な歴史がある。

 同大によると、今年度、医学部に受験したのは男子1596人、女子1018人で、ほぼ3:2の割合で男性が多いが、女性の入学希望者が意外に多く、意欲ある女子の多さに感心する。しかし、結果的に入学者120人のうち、女性は23人であり、8:2 の割合で女性が少なくなっていた。

 しかし、これは女性の学力が劣っていたのではなく、人為的な操作の結果だとすると、受験し落第した女性は、何ともやりきれない思いであろう。

 文科省は先日、医学部医学科がある全国81大学の入学者選抜を調べた結果を明らかにした。そこで過去6年間の平均で男子受験生の合格率が女子の約1.2倍だったことを発表した。最高は順天堂大学の1.67倍であり、中には弘前大の0.75倍と女性の方が多い大学もあったとのことで、点数操作が全大学で行なわれていなかったことにホッとする。

 文科省は、男女の合格率の違いの理由について大学側に説明を求めていくとしているが、東京医科大を除く大学からは、これまで不当な差をつけたことは無かったとの回答を得ているようである。

 しかし、点数操作は、昔から、私立ばかりでなく国公立大においても、男子有利の大学、浪人生や再受験生に対し不利な大学の存在は、予備校の先生など薄々分かっていた人がいたようだ。

 また、テレビでお馴染みの西川史子医師は、「東京医大に限らないです。全部の医大がそうです。だって、点数の上から採っていったら、女性ばっかりになっちゃうんですよ」と入試の点数だけで見ると上位の大半を女性が占めると指摘した。なるほどと先の弘前大が典型例と納得できる。

 医学部が女性を避ける理由は、医者の置かれた労働環境が大いに影響しているようである。すなわち医者は患者次第で動かねばならず、日直もこなせねばならず重労働である。また、出産等で長期に休暇に入ると男性医師にしわ寄せが来るなど運営面で支障を来たす。

 特に手術等で体力を要する外科医には女性のなり手が少ない。男性ができることと女性ができることは違うから、入学時に男女比を考慮しないと、世の中が眼科医と皮膚科医だらけになってしまうとの医療現場を知る医者からのコメントもある。

 入試での一律減点操作はパンドラの箱を開けてしまった感で、長年の問題が一気に噴出し、切っ掛けとなった受託収賄罪はかすんでしまった。

 多くの大学が不当な差をつけたことは無いとの主張は、将来を考えての男女の差であると正当化するのであろう。本来は医療現場における労働環境の改善を検討すべきであるが、一朝一夕には進まない。そうであるならば、始めから、合格者の割合を男性何割、女性何割と明示すべきである。

 東京女子医科大学は女性に限るとの条件があるのであるから、男性限定の大学があっても問題が無いだろう。

 問題はこれまで問題を放置してきた後始末である。これまで行なわれてきた点数操作に関し、有志の弁護士で作る「医学部入試における女性差別対策弁護団」が、大学側に成績開示や慰謝料を請求する方針のようであり、中には長年の夢を断たれた女性の恨み辛みもあるので、問題の解決は難しい。2018.09.08(犬賀 大好-475)