今年9月10日夜、安倍首相はロシアのウラジオストクでプーチン大統領と会談した。そこでの成果の一つとして、・海産物の増養殖、・温室野菜栽培、・ツアー開発、・風力発電の開発、・ゴミ減容対策の5分野を対象に、北方領土での共同経済活動の行程表で合意を掲げた。
昨年もウラジオストクで9月7日に安倍首相とプーチン大統領との会談が行われている。この会談で、上記5分野で取り組む方向で既に合意した筈であった。
1年経過し、ようやく工程表で合意出来たようだが、中身の公表は今後の協議にかかわるとして何も明らかにされていない。恐らくこれから工程表を実務者レベルで検討する程度の合意で、具体的には何も決まってはいないだろう。経済的な話でもかくのごとき遅々として進まない。領土問題など進展する筈が無い。
安倍首相とプーチン大統領との会談は第1次安倍政権時代を含めて二十数回目となり、関係は良好だと親密さをアピールしているが、領土問題に関しては双方がこれまでと同じ主張を繰り返しただけであろう。すなわち日本は北方四島の帰属を明確にした上で平和条約を結ぶに対し、ロシアは北方4島は自国領と主張し、経済協力が最優先であろう。
プーチン氏は先日9月12日の東方経済フォーラムでも習近平国家主席らの居並ぶ中で、北方領土問題を棚上げした上で、安倍首相に対し「あらゆる前提条件を抜きにして、年末までに平和条約を結べないか」と投げかけたそうだ。
この発言に対し、安倍首相は何も応答しなかったようである。突然の発言に首相は戸惑ったのであろうが、プーチン大統領との親密さがあれば、非公式には以前こんな発言もあり、予知はできたであろう。この発言に対し、安倍首相には、「年内に平和条約を結ぶことは大賛成である。だだし将来北方四島を日本に返すとの約束があればね、ついでにサハリンも含めてくれると嬉しいね!」と、笑顔で反論して欲しかった。こうすればすべて冗談で終わる。外交にはユーモアも必要だ。
領土問題は双方ともに国内問題として譲れない立場にある。ロシアはクリミア半島に例を見るように領土に関しては神経質で、一旦手に入れたものは絶対手放さない伝統だそうだ。
北方四島に対し日本は、第2次世界大戦の終戦時のどさくさに紛れて占拠されたとの認識であり、国民感情からも絶対譲れない立場だ。
また、プーチン大統領には、ロシアの極東地域に外国資本を呼び込むのに焦りがあるとの事である。背景にはこの地域に雇用が無いため若者の流出が止まらないのだそうだ。日本における地方の問題と全く同じだ。
そこで安倍首相はロシアの極東地域における共同経済活動の活発化により信頼醸成を図り、領土問題解決の糸口をつかもうとしている訳であるが、その際現地の法律をどうするか等で話はなかなか纏まらないようだ。進出する日本企業にとって、ロシア法律がそのまま適用されると明確になればそれなりの対応は出来るであろうが、そのことはロシア化そのもので、その後の領土問題交渉が困難になるとの背景があるようだ。
さらに、話が進まない要因は北方四島がオホーツク海と太平洋を結ぶ重要な軍事拠点となるからだ。ロシア軍は既に択捉島と国後島に軍事施設を建設し地対艦ミサイルを配備しているそうだ。北方四島あるいは2島が返還された場合、そこに日米安全保障条約が適用される可能性があるため、プーチン大統領は返還に断固反対しているとのことである。
米軍は当然その重要性を認識し、軍事拠点化を要求するであろう。日本の安全保障を米国に委ねる日本にとって、無碍に拒否できず米国との厳しい交渉が控えている。
他方、政府の地震調査委員会は、北海道東部沖の千島海溝沿いで、東日本大震災のようなマグニチュードM9級の超巨大地震が、いつ起きても不思議はないとの見方を示している。日本ではこの警告に対し、何らかの対策を講じているだろうが、北方四島での対策は皆無であろう。不謹慎な話であるが、経済協力の切っ掛けはこれがチャンスとなるかも知れない。
2018.09.19(犬賀 大好-478)
昨年もウラジオストクで9月7日に安倍首相とプーチン大統領との会談が行われている。この会談で、上記5分野で取り組む方向で既に合意した筈であった。
1年経過し、ようやく工程表で合意出来たようだが、中身の公表は今後の協議にかかわるとして何も明らかにされていない。恐らくこれから工程表を実務者レベルで検討する程度の合意で、具体的には何も決まってはいないだろう。経済的な話でもかくのごとき遅々として進まない。領土問題など進展する筈が無い。
安倍首相とプーチン大統領との会談は第1次安倍政権時代を含めて二十数回目となり、関係は良好だと親密さをアピールしているが、領土問題に関しては双方がこれまでと同じ主張を繰り返しただけであろう。すなわち日本は北方四島の帰属を明確にした上で平和条約を結ぶに対し、ロシアは北方4島は自国領と主張し、経済協力が最優先であろう。
プーチン氏は先日9月12日の東方経済フォーラムでも習近平国家主席らの居並ぶ中で、北方領土問題を棚上げした上で、安倍首相に対し「あらゆる前提条件を抜きにして、年末までに平和条約を結べないか」と投げかけたそうだ。
この発言に対し、安倍首相は何も応答しなかったようである。突然の発言に首相は戸惑ったのであろうが、プーチン大統領との親密さがあれば、非公式には以前こんな発言もあり、予知はできたであろう。この発言に対し、安倍首相には、「年内に平和条約を結ぶことは大賛成である。だだし将来北方四島を日本に返すとの約束があればね、ついでにサハリンも含めてくれると嬉しいね!」と、笑顔で反論して欲しかった。こうすればすべて冗談で終わる。外交にはユーモアも必要だ。
領土問題は双方ともに国内問題として譲れない立場にある。ロシアはクリミア半島に例を見るように領土に関しては神経質で、一旦手に入れたものは絶対手放さない伝統だそうだ。
北方四島に対し日本は、第2次世界大戦の終戦時のどさくさに紛れて占拠されたとの認識であり、国民感情からも絶対譲れない立場だ。
また、プーチン大統領には、ロシアの極東地域に外国資本を呼び込むのに焦りがあるとの事である。背景にはこの地域に雇用が無いため若者の流出が止まらないのだそうだ。日本における地方の問題と全く同じだ。
そこで安倍首相はロシアの極東地域における共同経済活動の活発化により信頼醸成を図り、領土問題解決の糸口をつかもうとしている訳であるが、その際現地の法律をどうするか等で話はなかなか纏まらないようだ。進出する日本企業にとって、ロシア法律がそのまま適用されると明確になればそれなりの対応は出来るであろうが、そのことはロシア化そのもので、その後の領土問題交渉が困難になるとの背景があるようだ。
さらに、話が進まない要因は北方四島がオホーツク海と太平洋を結ぶ重要な軍事拠点となるからだ。ロシア軍は既に択捉島と国後島に軍事施設を建設し地対艦ミサイルを配備しているそうだ。北方四島あるいは2島が返還された場合、そこに日米安全保障条約が適用される可能性があるため、プーチン大統領は返還に断固反対しているとのことである。
米軍は当然その重要性を認識し、軍事拠点化を要求するであろう。日本の安全保障を米国に委ねる日本にとって、無碍に拒否できず米国との厳しい交渉が控えている。
他方、政府の地震調査委員会は、北海道東部沖の千島海溝沿いで、東日本大震災のようなマグニチュードM9級の超巨大地震が、いつ起きても不思議はないとの見方を示している。日本ではこの警告に対し、何らかの対策を講じているだろうが、北方四島での対策は皆無であろう。不謹慎な話であるが、経済協力の切っ掛けはこれがチャンスとなるかも知れない。
2018.09.19(犬賀 大好-478)