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慢性腰痛

2019年06月26日 | 健康・病気

「慢性腰痛の名医」がMRIを撮らないで治療する理由

  DAIAMONDonline 2019.6.26

    木原洋美:医療ジャーナリスト

  「先進国中、最も遅れている」とされる日本の慢性痛医療の世界で、1980年代から痛みの知識や理論の探求に励み、90年代、ほぼ独学で「トリガーポイントブロック」療法を完成させ「慢性腰痛治療の名医」といわれる加茂整形外科医院・加茂院長の治療法の特徴を紹介する。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

 

問診に時間をとる

MRIには頼らない

◎加茂院長の治療 5つのルール

1.問診重視、レントゲン、MRIには頼らない

2.ケガの治療より痛みの治療が先(全身麻酔の手術でも局所麻酔を)

3.トリガーポイントブロック注射(神経ブロック注射とは違う)

4.基本は「認知行動療法」=心配しないでよく動かすようにすること

5.いつも心に「ドクターズルール10」

「私は、慢性腰痛で受診された患者さんのMRIは撮りません。筋肉のこわばり、疼痛、トリガーポイントは、画像診断装置では写せないからです」

 全国から「何をやっても治らない腰痛患者」が殺到している、石川県小松市にある加茂整形外科医院の加茂淳院長はきっぱりと語る。高度で専門的な腰痛治療をウリにする施設の多くが「MRI・CT・レントゲンの画像検査」に重きを置いているのとは真逆の印象だ。

「MRIなどの画像診断や血液検査は、患者さんの痛みが、悪性腫瘍、感染症、骨折などの明らかな外傷、リウマチとその周辺の炎症性疾患が原因なのか否かを見分けるために行うものです。当院を受診される患者さんの場合、検査も治療もやり尽くした方ばかりですので、まず必要ありません。第一、画像では痛みのことは何もわかりませんから。ムダな検査で、患者さんに負担をかけたくないというのもあります。

 代わりに、たっぷり時間をかけて行うのは問診です。

 その痛みやしびれが、どのような状況で強くなったり弱くなったりするのかを、じっくりと伺います。これを『積極的診断』といいます」

積極的診断によって腰痛の正体に見当がついた後は「治療的診断」。どのような治療に対して改善が見られたか、あるいは見られなかったかを通して、診断を絞り込む。

 ケガの治療より

痛みの治療が先

 治療において加茂院長は、「一刻も早く、痛みを取り除くこと」を優先している。

「痛みは火災と似ています。初期消火(急性痛)なら、バケツ1杯の水で消せますが、火の手が大きくなると、簡単には消せなくなる(慢性化)。急性痛と慢性痛症とでは痛みのメカニズムが違うので、治療者はそれを見極め、それぞれに合った治療法を用いるべきです。

 急性痛のときには当然、まず痛みを消してしまうことが重要です。そうしないと、いろいろな不都合が生じます」

 『不都合』には次の3つがあるという。

  (1)ワインドアップ現象――持続的に痛みの刺激が脊髄に入ると、次第に脊髄の興奮性が増強される。

 (2)中枢性感作――痛みがつづくと、脊髄における知覚処理に変化が起こり、もとからある炎症、あるいは組織障害部位の範囲を超えて痛覚過敏の部位が広がる。

 (3)痛みの可塑性(かそせい)―ー痛みがつづくと、痛みの神経回路に歪みが生じ、もとの正常な状態に戻らなくなる。

 これらの不都合が重なることで急性痛は慢性痛症に変化し、患者は、急性痛の原因となった外傷などが治った後も、消えない痛みに苦しめられることになる。消火開始の遅れによって、燃え広がった火が、延々とくすぶり続けてしまうのだ。

「だからこそ、治療にあたる医師は、痛みを長引かせないよう、できるだけ早く局所麻酔なり消炎鎮痛剤なりを用いて、痛みの消火活動にあたるべきです。ところが、多くの医師は、痛みの原因を探ることにばかり熱心で、痛みを止めることにはあまり関心がありません。患者さん自身も、痛みを止めることは真の治療とは思っていないふしがあります。しかしそれは、大きな誤解です。特に慢性痛の治療では、痛みをとることこそが、治療そのものなのです」

 さらに意外なことに、ケガや疾病に対する切開手術でも、「体」が痛みを感じないよう、局所麻酔をしたほうがいいらしい。

「全身麻酔で頭は眠っていても、知覚神経に備わった痛みセンサーは作動し、痛み信号を発信していることが分かっています。記憶にないだけなのです。術後の慢性痛を予防するために、切開時にもちゃんと、局所麻酔を行うべきです」

 これは初耳。慢性痛には、いまだ解き明かされていない謎が多そうだ。

痛みの“現場”に局所麻酔

トリガーポイントブロック注射

 火災同様、初期消火を重視するのも、加茂院長流。

 痛みの“発生現場”に、直接、局所麻酔注射をし、「一刻も早く、痛みを取り除く」のが「トリガーポイントブロック注射」だ。痛みの発生現場には、第一現場(損傷を受けた部位とトリガーポイント)と第二現場(痛みを感知する脳と脊髄)があるのだが、加茂院長は第一現場(数ヵ所から十数ヵ所!)に局所麻酔を注射する。

「ここは圧痛点か、トリガーポイント(参照記事:「手術をしても改善しない腰痛患者があふれている理由」)かを探りながら注射します。反応はすぐに出ますので、効果を確かめながら注射することができます。非常に細い針を使うので、注射の痛みを訴える患者さんはほとんどいませんし、局所麻酔剤は安全性の高い薬剤なので、妊婦でも高齢者でも安心して使うことができます。

押すと強い痛みを感じるしこり

 注射の深さは、触診しながら、痛みを感じている筋肉の位置を想定して行います。熟練を要するとすれば、このあたりでしょう」

 トリガーポイントブロック注射の目的は次の通り。

  ・発痛物質の洗い流し(注射液のシャワーで洗い落とす)

 ・交感神経をブロックして、末梢の細い動脈を拡張させることによる血行改善

 ・筋緊張の改善(コリコリに固まった筋硬結をゆるめる)

 ・痛覚伝達のブロック(痛みの電気信号が知覚神経を通らないよう遮断する)

「要するに、痛みを一時的に抑えるのではなく、痛みの悪循環を阻止して、自然治癒の働くきっかけを作っているのです。痛みは、急性痛のうちにやっつけてしまうのが一番。慢性痛に移行したものに対しては、トリガーポイントブロック注射に加え、薬物療法や心理療法、運動療法などの方法を駆使して対処しています」

 ちなみに『慢性疼痛治療ガイドライン2018』(厚生労働省)には、「トリガーポイント注射の有効性を結論づけるにはエビデンスが不足しているが、短期的には有効性を示すエビデンスがある。熟練した専門医が行えば比較的安全で容易に施行できる手技であるため、痛み治療の一助として用いてもよい。その際には使用薬物や施行頻度の考慮が必要である」と書いてある。

また「局所麻酔薬の使用は、刺針部痛の緩和を期待できる。ステロイド剤やボツリヌス毒素の使用を推奨する強いエビデンスはない」とある。

 加茂院長が行っているトリガーポイントブロック注射とトリガーポイント注射はイコールではないが、安全な治療と安定した効果を得るには、熟練した医師を選び、注射する薬剤についてもしっかりと確認する必要がある。

 ウェブを検索していると、さまざまなタイプのトリガーポイントブロック注射、あるいはトリガーポイント注射が見つかるので、注意してほしい。

 さらに、全国の整形外科やペインクリニックで行われている「神経ブロック注射」とも「トリガーポイントブロック注射」は違う、ということも覚えておきたい。神経ブロック注射は「痛むのは神経であって筋肉ではない」という考えに基づく治療法。「トリガーポイント」という概念は存在しない、似て非なるものだ。

 基本は「認知行動療法」

心配なく、よく動かす

 慢性腰痛等の治療における 「認知行動療法」とは、痛くて何もできないという間違った認知(思い込み)を、行動を少しずつ増やしていくことによって正していく治療法。

 加茂院長は、この認知行動療法をとても大切にしている。

 トリガーポイントブロック注射で痛みを止め、ポールウォーキング※(参照記事:『腰痛治療のための「薬と運動」が逆効果になってしまうことが多い理由』)で運動してもらい、動ける心と体を取り戻してもらうことを目指す。

 ※ノルディックスキーのように両手に専用のポールを持ち、正しい姿勢とバランスを保ちながら行うウォーキングのこと

 治療にとって心理的な要因は非常に重要なようで、加茂院長は心理学についても研究し、「心療整形外科」というブログを2003年から運営している。

 腰痛に心理的要因が深く関係していることが、世間で広く認識されるようになったのはつい最近だが、かなり前から認識し、治療に採り入れていたわけだ。

 いつも心に

「ドクターズルール10」

 最後に、加茂院長が「肝に銘じて日々の診療にあたっている」という「ドクターズルール10」の一部を、『腰痛は治る!』(加茂淳著)から抜粋して紹介する。これは、加茂院長が開業する前、石川県立中央病院の勤務医だった時代に、金沢大学整形外科の先輩で、上司の山田浩先生から指導されたものだという。

  ・臨床的証拠がないからといって、病気が存在しないという証拠にはならない。患者の訴えは正しいものである。医学的にあり得ないと考えずに、訴えに耳を傾けること。患者は全身で24時間、疾病と対決している。

・あなたが診ようが診まいが、ほとんどの外来患者の病気は治癒するものである。病人が治るのを邪魔しないのが良い医師である。

  ・痛みはいかなるときも速やかに止めること。医療では完璧よりも急を尊ぶ場合が多い。

  ・投与薬はできるだけ少数に絞ること。量が増えれば、副作用の起こる可能性は指数関数的に高くなる。老人のほとんどは服用している薬を中止すると体調がよくなる。

 読んでみると本当に、日々の診療にしっかりと反映されていることに感銘を受ける。しかも本稿で紹介した治療法はいずれも保険診療内、日本中に“高額なのに効かない治療”があふれているなかにあって比較的安価に行えるものばかりなのだ。

 さて、5月に刊行された『腰痛診療ガイドライン2019』(日本整形外科学会、日本腰痛学会監修)では、「コルセットは腰痛に効かない」ということが初めて結論づけられた。コルセットが効かないことは世界的にはだいぶ前から知られていたし、逆に「コルセットをすることで、腰痛のない人でも腰痛になる恐れがある」という研究報告さえあった。まさに「病人が治るのを邪魔」する器具が、現在に至るまで、保険点数が認められる形で使われ続けてきたことに衝撃を覚えずにはいられない。

 日本の腰痛診療は変わらなくてはいけないと思う。

 加茂院長は、「何か迷いが生じるたびに、この教えに立ち戻る」のだとか。

 

 ◎加茂 淳(かも・じゅん)

加茂整形外科医院(石川県小松市)院長。金沢大学医学部卒業。富山県立中央病院、石川県立中央病院にて整形外科医として研修。1982年小松市に加茂整形外科医院を開業、現在に至る。整形外科専門医、リウマチ専門医、心療内科登録医。これまでに治療してきた患者のカルテは7万件以上。手製のホームページに寄せられる患者からの相談に、1件1件、丁寧に回答していることでも有名。医院、ホームページ共に、慢性痛難民の駆け込み寺になっている。


プルーンがたくさん実っています。


桑の実がすごい。こんな木がまだたくさんある。
採りに来られる方には差し上げます。



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