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雨宮処凛がゆく! 第542回:なんでも電話相談会と相談会、開催!! そして相談データ分析から見えた深刻化する困窮度。の巻

2020年12月17日 | 社会・経済

マガジン9 2020年12月16日
   https://maga9.jp/201216-2/

 

コロナ禍の中、年の瀬が迫ってきた。

 困窮者支援の現場には、さらに深刻な相談が寄せられるようになっている。「この年末で勤め先が廃業・倒産する。どうすればいいか」という声もあれば、「寒くなってきたので野宿がキツい、助けてほしい」という切実な声もある。

 多くの人が家族や友人などと楽しく過ごす年末年始、たった一人で寒さと空腹に耐えながら路上で過ごすことは当人の心も身体も否応なく削る。今月に入り、早い人ではこの年末で切れるはずだった「住居確保給付金」の延長がやっと正式に発表されたが、延長期間はたった3ヶ月。困窮に直面する人々をもう少し安心させてほしいと思うのは、私だけではないはずだ。

 そんな年末を前に、5回目の大規模電話相談を開催することとなった。この連載でも何度も書いてきた「コロナ災害を乗り越える いのちとくらしを守るなんでも電話相談会」だ。「コロナを理由に雇い止めにあった」「バイトを切られ学費が払えない」「家賃が払えず、追い出されないか心配」など、住まいや生活保護、労働、借金、学費問題などに弁護士や司法書士、社会福祉士などが回答する。全国どこからでも無料。開催日時は12月19日、10時から22時まで。電話番号はフリーダイヤル:0120-157930。あなたの周りの困っている人に、ぜひ伝えてほしい。

 そうしてこの日はもうひとつ、日比谷公園で対面の「なんでも相談会」を開催する。日比谷公園の陳列場という場所で、テニスコートの隣。時間は11〜17時まで。相談だけでなく、おにぎりやお米、りんご、缶詰などの食料配布もする予定。配布は2回で1回目は11時半から13時まで。2回目は15時半から16時半まで。感染対策をとりながら開催するので、こちらも困っている人がいたら、ぜひ伝えてほしい。

 さて、そんな相談会を開催するにあたり、12月11日、厚生労働省で記者会見をしたのだが、その際、10月に開催された4回目の電話相談を、貧困問題に取り組む学者らからなる「貧困研究会」が分析した結果が発表された。

 このデータ分析の結果が発表されるのは2回目で、最初は8月に開催された電話相談の結果が10月に発表された。以前も少し紹介したが、非常に貴重な資料なのでこちらでもまた触れたい。

 まず、8月のデータ。分析対象となったのは221件。男女比はほぼ半分ずつで、年代は50代がもっとも多く26.6%、次いで40代の22.0%、60代の19.8%。一人世帯がもっとも多く、次いで夫婦世帯。借家暮らしの人が46.6%で持ち家の人は38.5%。

 相談者の職業でもっとも多かったのは無職で23.6%だが、ついで多いのは「他に分類されないサービス業」17.8%(専門サービス、洗濯・理容・浴場、旅行、娯楽業、その他生活関連サービスなど)、その次が飲食・宿泊・遊興飲食店(風俗含む)のサービス業15.3%、そのあとに建設業、製造業が続く。

 雇用形態は無職を除くとパート・アルバイトが21.6%ともっとも多く、ついで正社員14.6%、自営業主11.6%、フリーランス・個人事業主9.5%と続く。現在の預貯金額の中央値は10万円。本人を合わせた世帯全体では17万円。

 「今年の2月と比較して8月の時点でどれほどの収入減か」という質問には、自営業主が月収で平均マイナス11万4000円ともっとも減っており、ついで派遣社員のマイナス9万2000円、フリーランスのマイナス6万円が続く。

 相談時点でなんらかの借金、滞納があった割合は37.0%で、10人が住宅ローンを滞納し、8人が公的保険料を滞納、6人が家賃を滞納していた。

 相談してきた221人中、緊急小口資金の貸付や持続化給付金、住居確保給付金など支援制度を利用している人は178ケース。相当の人がすでに公的な支援を利用していることが明らかになった。

 さて、ここからは12月11日の記者会見で発表された10月の電話相談の分析だ。分析対象となったのは779件。8月と同じ人が相談しているわけではない。

 男女比はやはり半数ずつで、平均年齢は55.2歳。一人世帯が約半数。借家暮らしの人が52.9%で持ち家の人は38.8%。

 相談者の41.3%が無職(コロナ禍で職を失ったのかもともと無職だったのかは不明)で、パート・アルバイト(18.5%)、自営業主(11.2%)、正社員(11.0%)と続く。

 本人の預貯金額+手持ち金が確認できたのは233人で、その中央値は2万円。本人を合わせた世帯全体で3万円となっており、8月と比較して随分落ち込んでいるのがわかる。また、すでに「0円」という人も94人。10万円未満は142人。

 「今年の2月と比較して現時点でどれほどの収入減か」という質問には、自営業主が平均マイナス104万円(売り上げで回答している可能性あり)。ついで契約社員の12万1000円、フリーランスの9万7500円が続く。

 一方、「収入なし」と答える人も増加しており、123人が収入ゼロ。2月と比較して月収が10万円以上減少した人も60人いた。

 相談時点でなんらかの借金、滞納があった割合は38%。うち住宅ローンが24人、家賃の滞納が20人。相談内容としては、8月の時と比較して生活保護の相談が増えている。

 10月の相談概要を見ると、「手元に5円玉ふたつしかない」「20万円あった月収が3、4万円に減少」「お金がない時は水を飲んで空腹を満たしている」など切実な声が目立つ。

 このような分析データを見るたびに、思う。

 政府はこの国に住む人々の困窮の実態を、一体どこまで把握しているのだろう、と。「コロナ解雇7万人」と言われるが、10月の労働力調査によると、前年同月と比較して非正規で働く人は85万人減少。休業者は170万人。そのうちどれほどの人が寮やシェアハウスも含めた住まいを失い、どの程度減収しているのかなど、細やかな調査はされているのだろうか。実態調査がなされなければ貧困対策のしようがない。まずは「実態を知ろう」という姿勢を示してほしい。今はそれさえ見えないのだ。

 さて、先日17日、東京都の小池百合子都知事は年末年始に向けてある発表をした。それは住まいのない人のためにホテルを1000室用意する、生活費の貸付も予定しているという内容。ホテルの提供は12月21日から約1ヶ月続くらしい。

 それを聞いて、4月の緊急事態宣言の頃を思い出した。ネットカフェも休業要請の対象になったことを受け、小池都知事はネットカフェ生活者などにホテルを提供するとブチ上げたが、その実態はあまりにもわかりづらいものだった。まず広報がほとんどなく、当事者がどこに行けばいいのかわからない。入り口がいろいろあり、入り方によって対応が違う、等々。

 それでも4〜8月の間に約1000人がホテルを利用した。が、ホテル提供が終わった後の行き先を見ると、約6割が一時住宅に移動(4ヶ月しかいられない)、1割強が安定した住居を得て、1割強が再びネットカフェなど不安定な場所に戻っている。本来であれば、全員が安定した住居に移るような支援がなされるべきだったと思う。年末年始対策ではホテルを提供するだけでなく、今後の住まいについての相談体制も作り、できるだけ多くの人を安定住居に繋げるような仕組みにしてほしい。また、東京都都だけでなく、各都道府県にもホテル提供とその後の支援を求めたい。

 もうひとつ必要なのは、厚労省が各自治体に協力依頼している年末年始の臨時開庁だ。年末に住まいを失ったり所持金が尽きたりした場合、役所が閉まっていれば一週間近く公的な支援につながることができず、その間に餓死、凍死してしまう可能性もある。そのため、年末年始も臨時で窓口を開けるよう協力依頼をしているのだが、江戸川区では12月29日から1月3日まで電話や窓口で区職員が対応することとなった。ぜひ、全国各地でこのような動きが続いてほしい。そのことで、確実に救える命がある。

 ということで、この年末年始は支援の現場に張り付くことになりそうだ。

 Twitter(@karin_amamiya)などでも逐一炊き出しや相談会情報をアップしていくので、ぜひ、困っている方に情報が届く手助けをしてほしい。

 そしてまずは19日、困っている人はぜひ、電話相談、もしくは日比谷公園の相談会に参加してほしい。

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高級ステーキを食べる菅首相と餓死する市民 生存権保障に怠慢なままの政府でいいのか

藤田孝典 | NPO法人ほっとプラス理事 聖学院大学心理福祉学部客員准教授

YAHOOニュース(個人) 12/16(水)

高級ステーキを食べる菅首相たち

12月14日夜に菅首相らが高級ステーキ店で忘年会を実施したそうだ。

 新型コロナウイルス感染防止の呼びかけをしている最中での行動に批判が殺到している。多くの市民に忘年会や多人数での会食を控えるように勧めているため、批判も当然といえるだろう。その批判も重要であるが、私がより危惧しているのは首相を含む政府の弛緩ぶりだ。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響から、生活困窮者の相談が年末に向けて多くなっている。これから生活困窮者は増えていくことが想像できるタイミングだ。明日の生活に不安を抱える人、来年はどうなっていくのだろうと途方に暮れている人が多くなっているなかで、その対応をすべき責任者の放蕩ぶりには驚かされる。

 失業者、住居喪失者から毎日相談が寄せられている最中で、高級ステーキを食べて会食する様子が報道されることに「浮世離れ」「貴族意識」を感じざるを得ない。市民感覚が感じられない菅首相に生活困窮者対策は不可能ではないか、という不安を率直に抱いている。

大阪市で2名の餓死遺体が発見

 菅首相が高級ステーキを食べていたことが報道されているなか、大阪市では何も食べられずに餓死した市民の遺体が発見されている。

 大阪市港区築港3丁目のマンションの一室で11日、女性2人の遺体が見つかり、司法解剖したところ、2人とも餓死したとみられることが大阪府警への取材でわかった。1人は住人の職業不詳の女性(42)と判明。もう1人は同居している60代の母親とみて確認を進めている。港署によると、42歳の女性の死因は低栄養症による心機能不全。母親とみられるもう1人は飢餓による低栄養症で体重は約30キロだった。それぞれ死後数カ月とみられる。(12月15日朝日新聞)

 菅首相らが高級ステーキを食べているなか、食事も全く取れない状況で餓死する市民がいるという現実を政府関係者はどう捉えるのか。

弛緩している菅首相、政府に再確認しておいてほしいことがある。

市民の生存権保障は国の役割であるということだ

日本国憲法第25

すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

 国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

市民が生活困窮した際は、憲法や法律、法令に基づいて生活を支えることが明記されている。

生活保護法第1条 

 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

 つまり、生活に困窮する市民を適切に保護できていなかったり、ましてや餓死して発見されるなど、政府の怠慢としか言いようがない異常事態だ。

 餓死した市民が出るなどということは政府が法律を守っていない事にもなる。新型コロナ禍だから生活困窮者が増えても仕方がない、ということも許されない。国は生活困窮する市民に対応する義務があるからだ。

 真剣に仕事をしている首相が高級ステーキを食べているなら批判も抑えたいが、あまりにもお粗末な現状に呆れるしかない。

これから年末年始がやってくる。

 国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を文字通りにすることに注力してほしい。

 ぜひ菅首相には高級ステーキを食べている姿ではなく、生活困窮者支援の窓口や生活保護制度を執拗に広報するなど、懸命に仕事をしている姿を見せてほしい。

 最後に読者の皆さんも生活に困窮していたら遠慮なく、福祉課窓口に相談いただきたい。

これ以上、国が皆さんの生存権保障を軽視して怠けることがないように、権利を行使してほしい。