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古賀茂明「総裁選から菅忖度が始まっている」

2020年09月23日 | 社会・経済

連載「政官財の罪と罰」

古賀茂明2020.9.22 07:00週刊朝日

 先々週の本コラムでも取り上げたが、今週も菅義偉総理のマスコミ支配に関する話をしよう。

 9月7日、自民党の総裁選挙管理委員会の野田毅委員長は、「新聞・通信」各社に自民党の総裁選に関する報道について、「公平・公正な報道」を要請する文書を送付した。この文書では、「各社の取材等は規制しません」としつつも、「インタビュー、取材記事、写真の掲載に当たっては、内容や掲載面積で平等、公平な扱いをお願いする」など極めて細かい報道の仕方に関する要請が書いてあった。

「掲載面積」という言葉まで出ていたのには驚いたが、総裁選で自民党がマスコミに「圧力文書」を送るのはこれが最初ではない。前回の総裁選(2018年)でも圧力文書が送付されている。

 自民党のマスコミに対する圧力として有名なのは、14年の衆議院議員選挙のときに、NHKと民放キー局に送られた文書だ。「報道の自由」に関わる大問題だったにもかかわらず、当のテレビ局自身は、この事実を報道せず、中には、この文書を局内に周知させ、政府与党の意向に反する報道がされないように厳格に管理したところまであった。政府与党の圧力に屈したのだ。その結果、衆議院選挙の報道は従来に比べて激減。政策論などは影を潜め、つまらない選挙区ごとのゴシップ的報道に終始することになってしまった。

 報道では、今回の文書の宛先は新聞・通信社となっていてテレビ局は入っていない。テレビ局は完全に支配されているので、文書が出ていても、菅氏の機嫌を損ねることを心配してみんなで口を閉ざしているのかもしれない。前回総裁選のときもテレビ局への圧力文書についてはほとんど報じられなかったが、各候補の映像が流れる時間を秒単位で計測した局もあったそうだ。

 ちなみに、菅氏圧勝は文書発出時点で事実上決まっていた。菅氏側としては、もう報道なんかしてくれなくて良いというのが本音だっただろう。政策論では他の2候補に比べて菅氏の能力の低さは明白だ。そこで、要請文書で、報道各社をけん制した。それで怖気づいた一部の新聞社は、「公正な報道」を心掛けるというより、菅氏に不利な報道は厳に慎むということになったようだ。この文書のことを報じた大手新聞と通信社は私が気づいた限り東京新聞と共同通信だけ。騒ぎ立てると菅氏に怒られると考えて報道をやめたのだろう。

 本件は、菅氏と自民党のマスコミ支配が新政権誕生前から既に始まっていたことを示している。

 こうしたことが反復継続されると何が起きるか。

 自民党総裁選や国政選挙では、問題点を明らかにする報道はしてはいけないという「特殊」な規範をマスコミ各社が自ら作り、それが徐々に「常識」に転化する。そうなると、今回のような文書が報道の自由を侵害する行為だと気づくことさえできなくなる。「前回もそうだったから」ということで、済んでしまう。

 そこで、最後にガンジーの言葉を紹介したい。

 ──あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである。

 心ある記者の皆さんには、この言葉を胸に、頑張っていただきたい。

※週刊朝日  2020年10月2日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など。


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