近年、成長・発展ばかりを評価する発想が広がっている。あらゆることに成果・進歩を求めようとする。
畳に寝転んで窓の外の雲をただ眺めること、コタツに足を突っ込んでたわいないおしゃべりをすることは、意味のない、うとまれるべきことなのか。ぶらぶらしたり、くつろいだりすることも、人間らしい生活・人生の一部なのだ。
印象深い経験に支えられて生きるということが、人にはあり得る。「ドキドキしながら、手に持った餌を馬にあげた」「修学旅行の夜、布団に入って友達とおしゃべりした」・・・・そういう経験はそれ自体で魅力的だ。
心地よい経験、魅力的な経験が散りばめられた生活を送る中で、結果的に、人はさまざまな力をつけ、人格を豊かにしていくだろう。何かを学ぶために花火をするわけではない。「あの時、あの子と、花火をした。きれいだった、楽しかった」そういう経験そのものの価値を認めたいと思う。数値化できる成果がそこになくても、それはきっと素敵なことなのだから。
丸山啓史(京都教育大学発達障害学科講師)