旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

医療過信の分岐点

2013-05-16 23:09:47 | 医療制度
結核による死亡率が低下したのは公衆衛生、しいては医療政策の成果だとずっと思い続けていました。

なぜわが国ではプライマリ‐ケア重視の医療政策が展開されてこなかったのか。いろいろ調べ、ようやく最近になってそのからくりが見えてきました。

中川米造先生が『サービスとしての医療―医療のパラダイム転換―』(農山漁村1987年)で述べています。

「多くの先進国では、(乳児死亡率、結核死亡率などの)健康指標の改善は近代医療の導入以前から始まっており、それほど直接的(に近代医療が健康指標の改善に役立った)とは考えられていない。日本の場合、生活環境条件の改善と医療の普及、そして健康指標の向上がほぼ同時に起こったために、医療の役割が(大きかったと)とくに強く印象づけられている。」

さらに医事評論家の水野肇先生は興味あるエピソードを書いてくださっています『誰も書かなかった厚生省』(2005年)。

ロックフェラー研究所のルネ・デュボス博士に「「日本の結核患者が激減し、死亡率も急激に下がったが、あなたたちはその原因をなんだと思うか」と尋ねられました。新聞記者団で彼を訪ねたときです。

記者の誰も正解を答えられなかった。栄養の改善こそ最大の理由とデュボス博士は考えていたのです。食生活の変化が主たる要因だった。医療の役割は小さなものです。

医療側は自信過剰になってはならず、患者さん側も医療を過信してはならないということでしょう。






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3 コメント

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Unknown (王サツ)
2013-06-06 19:29:27
大学時代は数学に興味があり、数学こそ世界を支配するだと浮いていたところ、教授からMorris KlineのMathematics:The Loss of Certainty を読むように、特に12章の最後の部分、と勧められたことがあります。地域医療をテーマとする会合に参加すると、ごくごくまれではありますが、時々「スパイダーマン」を思い出させる方に出会ったりします。
「ライン湖畔に美しい城が何世紀も昔からありました。その城の地下室に住みついていた勤勉な蜘蛛の造った精巧な巣がありました。ある日のこと、強い風が吹き、その蜘蛛の巣を吹き壊してしまいました。蜘蛛は半狂乱になって破れを繕おうとしました。その城を支えているのは自分の巣だと蜘蛛は思っていたのでした。」〔日本語訳〕モリス・クライン『不確実性の数学』(紀伊国屋書店、1984年)428頁(12章の最後)。
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Unknown (ばんぶう)
2013-06-07 16:05:07
長嶋さんは、こうやって、こう打って、こう流せば飛ぶんですね・・・みたいな人でした。王さんは、畳がすり切れるほど真剣で荒川コーチの指導のもと努力された人でした。
ともに物理学には何の造詣もありません。
しばらくまえノーベル賞級の物理学者が小生のようなガンで亡くなりました。
小生も見事な医者の不養生、お経だけの仏法僧です。
人間というのは、そういう動物なんでしょうね。
わんこ見てて、進化を考えたり、物理学を考えたり、スピリチュアルについて考えたり・・・。
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ニュートンも錬金術師だった (ばんぶう)
2013-06-07 16:05:55
長嶋さんは、こうやって、こう打って、こう流せば飛ぶんですね・・・みたいな人でした。王さんは、畳がすり切れるほど真剣で荒川コーチの指導のもと努力された人でした。
ともに物理学には何の造詣もありません。
しばらくまえノーベル賞級の物理学者が小生のようなガンで亡くなりました。
小生も見事な医者の不養生、お経だけの仏法僧です。
人間というのは、そういう動物なんでしょうね。
わんこ見てて、進化を考えたり、物理学を考えたり、スピリチュアルについて考えたり・・・。
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