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旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

「命の値段」はいくらなのか?(真野俊樹)

2013-09-14 23:06:05 | 読書
表記の本を読みました。角川oneテーマ21。

昨年8月に発行された力作『入門 医療政策』(中公新書)とつい比べてしまいます。こちらはかなり専門的。新作は一般の人向けなのでしょうが、なんとなく拍子抜け感が残りました。

医療の過剰消費を減らしましょう。そうでないと国民皆保険が崩壊し、命をつなぐためには、たとえば心疾患やがん治療などおおよそ400万円くらいを自己負担になりますよ、と試算しています。

スウェーデンが日本と対照的な例として書かれていますが、情報は古くないのかなと疑問です。どこをどう学び取ればよいのでしょう。

結局、自助互助で予防に努めましょう、ということで、あれ、これだけ?  得意の医療政策はどうなっていくのよ。どうしていくのよはヒントだけでしょうか?


米国で活躍する二人のイチロー

2013-09-09 23:32:20 | 読書
マリナーズからヤンキーズに移籍したイチロー・スズキは日米4000本安打を達成しました。

もう一人のイチローはイチロー・カワチはまだあまり知られていませんが、元内科医の公衆衛生学者でハーバード大学教授です。

すでに『不平等が健康を損なう』『ソーシャルキャピタルと健康』などの翻訳書が日本で出版されています。

公衆衛生学の中でも社会疫学がイチロー教授の専門です。

この8月に出版された『命の較差は止められるか』(小学館101新書)は格差が広がると絆が薄れて不健康となることなどたくさんの健康と不健康の原因が書かれています。

幼少期に鍛えられた我慢強さが、成長してから誘惑に負けずに自己コントロールする能力に関連するというのもうなずけます。

医療の力も患者さんとのつながりの強さに貢献することだとつくづく考えさせられます。


リーダーシップ論

2013-08-18 22:49:07 | 読書
変革の時代にはリーダーの質が問われます。

昨秋に出版された本ですが、半藤一利『日本型リーダーはなぜ失敗するか』は現在考え直すべき課題を教えてくれます。

まず日本の陸軍・海軍の人事管理が米国と比べてきわめて劣悪であったこと。何と「威厳と人徳」が重視された。

参謀が重要な役割を果たすのですが、日本では自分勝手な参謀がほとんどであったこと。

よき参謀は①指揮官の頭脳を補うことができること
     ②部隊の末端まで方針を徹底させること
     ③将来の推移を察知する能力を有すること
これだけでもかなりの力を要します。さらに

リーダーの条件は①最大の仕事は決断
        ②明確な目標を示す
        ③焦点に位置する
        ④情報を確実にとらえる
        ⑤規格化された理論にすがらない
        ⑥部下には任務を最大限に遂行させる

人間には「損失」「不確実」「危険」を避けようとする心理が働く。起きてしまった危機、失敗を徹底的に検証して、知恵をふりしぼって、次なる危機に備え、起きた場合にはそれを乗り切るだけの研究と才覚と覚悟をきちんと身に着けておくこと。

根拠のない自己過信、無知蒙昧、逃避癖、底知れぬ無責任など私たち日本人の愚劣さ、見たくない本質を正しく見つめ直すことが大切だ・・・・・・



やー学ぶことがいっぱい詰まった敗戦論でありました。       


石原結實『医療が日本を殺す』

2013-08-16 22:46:52 | 読書
医療の行き過ぎに警鐘を鳴らす本が増えています。

石原結實(いしはらゆうみ)医師は食を重視。生姜紅茶や人参リンゴジュースが食事代わりに勧められています。普通の食事は1日1食。また身体をあたためることで病気を克服する例がたくさん述べられています。

健診が病気を見つけてくすりづけにしていくこと、これを続ければ医療費が膨大になっていく国を滅ぼしかねないというのです。

内海聡『医学不要論』も医療の無駄を徹底的に書いています。感情論で読み進むには抵抗がありますが、日本の医療を見直すきっかけづくりになればと期待もします。


「風に立つライオン」の生きざま

2013-08-12 00:02:17 | 読書
小説『風に立つライオン』を読み進めました。

これは「群れから離れたライオン」という意味だそうです。孤独なライオンとも言えるでしょうか。

さだまさしの力作。400字づめ原稿用紙592枚。俳優大沢たかおに勧められて書き始めたという。近い将来さだまさしは直木賞を取るかもしれないな。

歌「風に立つライオン」のモデルとなった柴田紘一郎医師の生き方を、周囲の人たちの証言という形で小説にした。

父親の凄味。シュバイツアーの影響、恋人の思い。恋人への思い。

離島医療、日本の医療のゆがみ。証言としていろいろ語られる。

柴田医師は周囲の人に多大な影響を及ぼした。どこまでが事実で、どこからがフィクションなのか分からないのでフクションという形を取ったのでしょうか?

物語は東日本大震災とも重なっていく。

この小説の主人公が医学部進学をめざすプロセスは旅芸い者とも重なった部分が多く、興味深いです。