旅芸い者放浪記

前沢政次 ブログ

アメリカ流「癒しの関係」

2013-05-22 07:06:25 | 医療制度
「癒しの関係」という言葉に惹かれましたが、米国で考えられるこの関係は内容がやや違いました。

診察室での直接のふれあいを強調していません。診察室ではほとんどふれあいの時間がない。そのため「切れ目のないアクセス」をITを使って実現しようとしているのです。

そしてセルフケア(自己治療)できることこそが医療そのものだとも訴えます。この部分は「患者参加型医療」をぼくも唱えているので共感できます。


継続的な「癒しの関係」(healing relationship)

2013-05-20 22:54:29 | 医療制度
旅芸い者の不勉強も困ったものです。

米国医療の質委員会は二つのレポートを2000年、2001年に出版したのでした。ひとつめは
『To Err Is Human(邦訳:人は誰でも間違える)』患者の安全について取り上げ有名です。ぼくもそれなりに内容を理解しているつもりでした。ミスを犯した個人の責任を責めるのではなく、システムに欠陥があるのではないかとその責任を探しだし、システムの改善の重要性を訴えたものです。

ふたつめは『 Crossing The Quality Chasm(医療の質)』です。共に邦訳は医学ジャーナリスト協会です。出版されて10年以上も過ぎてようやく最近買い求めました。

米国医療は本に書かれていることと実際現場はかなり溝があると思わされることも少なくありませんが、まあ読み進めてみましょう。

「提言4:官民の医療サービス購入者、医療機関、臨床医、患者は、以下の原則に合致する医療提供プロセスの再設計に共同して取り組むべきである。
 1.継続的な「癒しの関係」を基本とする医療ケア
 2.患者のニーズと価値観に応じた個別性のある医療ケア
 3.患者がコントロールの主体となる医療ケア
 4.知識の共有と自由な情報の交流
 5.エビデンスにもとづく意思決定
 6.システムの財産としての安全性
 7.必要とされる透明性
 8.患者ニーズの余地
 9.常に無駄を削減するシステム
 10.臨床スタッフ間の協力」

「癒しの関係」とはいったい何なのでしょう?


厚生行政の実態を知る本

2013-05-17 23:42:49 | 医療制度
その他、多くの薬害、日本医師会との対立のかたち、水野肇先生の『誰も書かなかった厚生省』はいろいろなことを教えてくれます。あえて厚労省でなく厚生省としたのは理由があるようです。

「専門性の高い政策プランナーをキャリアとして採用すべき」という提案はその通りだと思います。

官僚も玉石混交なのですねえ。製薬産業と厚労省の結びつきは大学のそれと同様考えなければならない問題です。

医療過信の分岐点

2013-05-16 23:09:47 | 医療制度
結核による死亡率が低下したのは公衆衛生、しいては医療政策の成果だとずっと思い続けていました。

なぜわが国ではプライマリ‐ケア重視の医療政策が展開されてこなかったのか。いろいろ調べ、ようやく最近になってそのからくりが見えてきました。

中川米造先生が『サービスとしての医療―医療のパラダイム転換―』(農山漁村1987年)で述べています。

「多くの先進国では、(乳児死亡率、結核死亡率などの)健康指標の改善は近代医療の導入以前から始まっており、それほど直接的(に近代医療が健康指標の改善に役立った)とは考えられていない。日本の場合、生活環境条件の改善と医療の普及、そして健康指標の向上がほぼ同時に起こったために、医療の役割が(大きかったと)とくに強く印象づけられている。」

さらに医事評論家の水野肇先生は興味あるエピソードを書いてくださっています『誰も書かなかった厚生省』(2005年)。

ロックフェラー研究所のルネ・デュボス博士に「「日本の結核患者が激減し、死亡率も急激に下がったが、あなたたちはその原因をなんだと思うか」と尋ねられました。新聞記者団で彼を訪ねたときです。

記者の誰も正解を答えられなかった。栄養の改善こそ最大の理由とデュボス博士は考えていたのです。食生活の変化が主たる要因だった。医療の役割は小さなものです。

医療側は自信過剰になってはならず、患者さん側も医療を過信してはならないということでしょう。






日本医師会代議員会のニュース

2013-04-30 23:42:41 | 医療制度
日医ニュース(No.1239)や日本医事新報(No,4641)で第128回日本医師会定例代議員会の様子を知ることができました。

代表質問には「総合診療医の制度化はフリーアクセス制限につながる懸念があるのではないか」「家庭医と同じで必ず厚労省に利用されるのでは」がありました。

総合医・家庭医→フリーアクセスの制限→医療費抑制という論理ですね。アクセスの質改善と医療費抑制は別次元の問題と思うのですが、どうもそう考えない医師が多いのが日本の現状です。

このままでは高齢者に対する全人的ケア、生活習慣病の予防的ケアは実現されにくいのでしょうね。

日本の医療はいつ変わるのでしょぷね。

フリーアクセスについては社会保障制度改革国民会議でも議論が出ているようです。

アクセス問題だけでなく、高齢者に対する医療道案内役をきちんとしないと安心の医療は実現しないでしょうね。