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俳優・勝地涼くんのこと。

『水平線の光の中、また逢えたら』

2008-05-31 02:07:44 | 亡国のイージス
正確なタイトルは『水平線の光の中、また逢えたら another『亡国のイージス』 ジョンヒ ~静かなる姫~』。
『亡国のイージス』映画化記念のスピンオフ作品の一つ。『イージス』メインキャラクターの紅一点、崔静姫(チェ・ジョンヒ)を主人公に、彼女が「いそかぜ」事件以前に「島田唯」の偽名で東京に潜伏していた時期を描く。

映画の公開年(2005年)3月に橋口いくよさんによる小説版が刊行、7月11日から14日までTOKYO-FMでラジオドラマとして放送されました(こちら参照)。勝地くんはジョンヒの正体を知らぬまま想いを寄せる大学生・古屋研太役で出演。
ほかジョンヒ役に浅野真澄さん(ジョンヒは口がきけない設定なのでモノローグのみ)、ナレーションに映画では風間役の谷原章介さん。

その後18日から8月7日までネットでの無料放送も行われ、私は映画公開後にこの無料放送で聴いたのですが、第一回を聴いただけでしばらく放っているうちに放送期間が終わってしまい、後から悔しい思いをしたものです。
この度これまた「さる方」のご好意によって全編通して聞くことが叶いました。(これからしばらく「ご好意」シリーズ続きます)

上でリンクしたページに行とジョンヒが至近距離で見つめ合っているポスターが出ていますが、このポスターや二人の水中キスシーンを(映画全体から見ればとくに重要なシーンではないのに)入れたCMは「若い女性層にアピールするために恋愛映画と誤解させるような演出をしているのか?」とあまり評判が良くなかったようです。
このラジオドラマも「ジョンヒと物語の鍵を握る、勝地涼演じる如月行との関係が分かる内容」とアオりつつ、実際には行は最初と最後にちょっと出るだけで台詞もないという・・・。
(「勝地涼演じる如月行」と書きながら、ラジオドラマで勝地くんが演じるのが別の役だとは橋口さんの原作を読んでない人はまず思うまい。谷原さんについても風間役と書いてるので、「なぜここで風間が?」と混乱を呼んだのでは)

そもそも『水平線~』の小説のあらすじを知った時点で、「あのジョンヒと一般学生の恋愛ものとは何事!?」と思ったわけですが、「異色」でなく「異形の」ラブストーリーという説明文にたがわず、ジョンヒが男にうつつを抜かす姿などは一切なく、かえって寄せられた好意に対してああした反応しかできないジョンヒの歪な精神構造と孤独感を際立たせていて、原作のイメージを裏切らない出来になっていました。 

小説版ではジョンヒと研太両方の視点を交互に出してますが、尺の短いドラマ版ではジョンヒの視点に一本化。この作品の見所はジョンヒの「歪み」にあると思うので、彼女の視点を優先にしたのは適切だったと思います。
小説の文章を上手く生かしながらドラマ独自の情景描写なども美しかった。夕暮れの赤と青のせめぎ合いを「勝つ当てのない戦い」に例えてみせるとか。

さて研太役の勝地くん。原作ファンの中には映画本編より先にラジオドラマで、如月行でなく古屋研太として初めて勝地くんの声や演技に接した人も多かったんじゃないかと思います。
ソフトな響きの声は、予備知識がなければ行と同一人物とは気づかないのでは?おっとりと人の好い、その無防備さが一種の大物感をジョンヒに感じさせた研太のキャラによく似合っていました。
一方で行の声(このドラマでは出てきませんが)にはもっと凛とした、何かに急きたてられてるような緊迫感があって、これまた行のキャラクターにはぴったり。声の出し方だけでキャラクターの性格を自然と表現していたのはさすがです。
大げさな感情表現はなく全体に淡々としたトーンなのに、告白の場面などごくシンプルな台詞から切々たる想いが伝わってきました。
行と研太という、小説版でも対極と評された二人の若者をともに勝地くんが演じてることで、ジョンヒが行との戦いの中で研太を思い出す流れがよりスムーズになっていたように思います。

研太はごく平凡な市井の一青年にすぎないのですが、そんな彼があのジョンヒにとって「特別な存在」になりえたのは、まさにその平凡さにあったのだと思います。ジョンヒの激動の人生に平凡という概念は存在しないようなものだったはずだから。
つまりは研太以外の男でもジョンヒの「特別」になる可能性はあったのでしょうが、彼女に一目惚れして初対面から一方的に追いかけてきた――あくまで任務としてそこにいる、人間関係をやりすごすための表面しか存在しない「島田唯」の内に入り込もうとしたのが、たまたま研太だった。
彼の一連の行動は多分にストーカーじみていてある意味「平凡」ではないのですが、恋する者にありがちな、平凡な人間の一時の異常行動の範疇にとどまっている。
彼の平凡さと異常さの両方がからみあって、一大学生である研太とジョンヒの軌跡を一瞬近づけたのだと思います。
・・・考えてみると、これって勝地くん念願のストーカー役ですかね(笑)。

 

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