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俳優・勝地涼くんのこと。

『吉祥天女』(2)-1(注・ネタバレしてます)

2008-09-30 02:23:52 | 吉祥天女
・夕焼けの空を流れ行く雲→神社の境内?→流れる雲間に浮かぶ満月→夕陽を映してきらめく、静かに波の動く海、と状景が切り替わってゆく。静謐でどこか禍々しくそして悲しさを感じさせる美しい映像は、ヒロイン小夜子を象徴するかのよう。
さらに天女の伝説がテロップで入り、BGMは能の謡?なのが純和風なエキゾチズムをこの場面に与えている。
舞台を金沢に設定し、由似子が能楽クラブに所属しているという設定で能をストーリーにからめたのも、こうしたエキゾチズムをねらったものでしょう。

・夜の神社。BGMが緊迫感をあおる。大風に揺れる提灯の光がおどろおどろしい(雷まで鳴るのはちょっと安っぽい感もあるけど)。
ここで小夜子が初登場することで、原作を知らない観客にも、彼女がただならぬ存在である(何か不吉なものを背負っている)ことを強く印象づける。

・時代設定はなぜか昭和四十五年=1970年。確かに旧家の財産をめぐってのごたごたは現代劇としては古めかしい感はあるが。
原作ははっきりいつの話と明言されていませんが連載開始は83年。遠野涼が沖田浩之さんにちょっと似てるなんて話が出てくるので話の舞台もそのあたりと見ていいでしょう。
だからか由似子の性格も原作より映画の方が古風になっています。

・由似子登場。古色蒼然たる住宅街を一人歩き、神社へ向かう階段を意味ありげに見つめる。その時一陣の突風が彼女の髪を揺らす。
由似子の生活に突風のように現れ強烈な印象を残して去ってゆく小夜子との出会いを予告するシーン。

・転入生小夜子が席に向かう途中、廊下近くの席に視線を飛ばす。その視線に気づいたかのように机につっぷしていた男子生徒が顔を上げる。
遠野涼とのファーストコンタクトは原作を少しアレンジして短くも印象的なものになっています。

・席についた小夜子の横顔が窓から差し込む陽射しの逆光に映える。こうした画面の作り方がこの映画は非常に美しい。
隣席の由似子に挨拶するときの微笑みには高校生離れした妖艶さがある。そして「よろしく」と返す由似子の目には明らかな憧れの輝きが。
初対面のさいの表情で二人のこの先の関係のあり方(由似子は小夜子に女として憧れ、小夜子は純粋で幼い由似子を何かと守ろうとする)を一発で示しているのはさすがの演技力と演出力。

・放課後、小夜子の席のまわりに集まる女生徒たち。非常な美人はかえって同性からスター扱いされたりする、その好例というべきか。
一方男子は男子で固まってて小夜子に近付かない。女子が囲んでしまってるので近付きたくても近付けないのかその存在感に圧倒されてるのか。

・涼が小夜子を遠目に見つつ教室を出てゆく。そして彼の去った後を妖しい微笑で見つめる小夜子。
二人が互いにただならぬ関心を相手に持っていること、それが一目惚れといった甘い想いではない、もっと緊迫感をはらんだものであることが二人の表情からうかがえます。

・校庭で一人先を歩く小夜子を小走りに追いかけ、両脇にまわって話しかける由似子と真理。
彼女らのはしゃいだ様子と小夜子の落ち着いた態度が対照的で、女王様とその取り巻きのように見えてしまう。小夜子は別段偉そうな態度を取っているわけではないのに。
生まれ持った貴族的気品と威厳が彼女を普通の少女たちから浮き上がらせる。ファム・ファタール小夜子の存在感がこのシーンでよくわかります。

・小夜子を乗せた車が走ってゆくのを見下ろしながら涼と暁が叶家と遠野家の縁組について語り合う。両家の関係について最初の説明がなされる場面ですが、原作以上に入り組んでいるだけになかなか飲み込みにくい。
このシーン、二人の背中ごしに町を見下ろす一風変わったアングルが用いられていて、しばらくの間は二人がどこで話をしてるのかわからず、彼らの身体が空中に浮いているかのような不安定感がある(カメラの移動につれて学校の屋上らしいとわかる)。
「このへんの土地はみんな叶家のもの」という話をしてるので、その叶家の土地を俯瞰するアングルは自然とも言えるんですが、彼らの立場の危うさ、この先起こるだろう事件への不安を観客にそれとなく植え付ける役割も果たしているように思えます。

・小夜子が親戚の家に預けられていたと聞いて、涼は少し間を置いてから「そうか」と言い、また間を置いて「長男は辛いよな暁」と話しかける。
この「そうか」というときの少し寂しげな表情と前後の間から、自分も親戚の家で育った涼が小夜子にふと共感と同情を感じたのが読み取れる。

・暁は去り際に涼の首を後ろから抱きこむようにして、「お前も遠野家の一員だってことを忘れるなよ。もちろん水絵ちゃんもな」と言ってポンポンと頭を叩く。その叩き方の力加減も腕の回し方もやや乱暴で、二人が対等の関係ではなく暁が涼を押さえこもうとしているのがうかがえる。
また「水絵ちゃん」の名前をわざわざ言い足したところから、まだ何者か不明な彼女が涼が暁の下に甘んじてる原因であろうと察せられるようにしてある。このあたりは上手いです。

・車の中で雪政が涼の家庭環境を詳しく小夜子に告げる。
映画の尺の関係があるとはいえ、ナレーション的な語りで設定がどんどん説明されるんでなかなか頭に入りにくい。水絵の名前が観客の記憶に新しいうちに彼女と涼、暁の関係を観客に伝えておこうということでしょうか。
同時に雪政が涼にこれだけ詳しい(調べた)ことで、涼を叶家がマークしている=叶家が遠野家に一種緊張感と敵意を持っていることもわかるようになっている。そのわりに暁が小夜子と同じクラスかととっさに思ったようですが(暁の方が一歳上なので留年してないかぎりクラスメートにはなりえない)。

・暁より怖いのは涼の方と言い切る小夜子。「とても敏感だし」との言葉に、気さくなお嬢さんの仮面の下に隠している本性を涼に見透かされていると小夜子が感じていたのがわかる。
その美貌のため幼少期から男たちの欲望にさらされ続けてきた小夜子にとって、レイプ犯の濡れ衣を着せられた少年の存在はどんな風に映っていたのだろう。
涼が小夜子に共感を覚えたと同様に、親戚の家で肩身狭く暮らしている、遠野家の人間に人生を翻弄されている涼の姿を自分と重ねているように思えるのですが。

(つづく)

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