2007年6月公開の映画。原作は吉田秋生さんの同名のコミック。
2006年5月頃、長いオフの間勝地くんの新作情報がぱったり途絶えてしまったあとに初めて発表になったお仕事がこれでした。
最初は何の作品か明かされないまま、事務所の公式メッセージにロケ地や共演者の名前がポツポツ出てくるのを楽しみにどんな作品なのか想像をめぐらせていたものです。
(この頃かなり明るい茶髪にしてたのでてっきりこの映画のためかと思ったんですが、作中では黒髪でした。普段仕事してるとなかなか自由に髪をいじれないからオフの間にやってみたってことですかね)
やがて撮影に関係した方?のブログから作品が『吉祥天女』で主演が鈴木杏ちゃんだと知りました。
だいぶ昔に原作を読んでいたので、勝地くんの役名は書いてなかったものの、年齢的ポジション的に遠野涼しかありえないなーと俄然期待が膨らみました。
一見チャラチャラした女たらしの不良を演じつつ、実は人一倍感受性が鋭く妹思いで家庭の軋轢に苦しんでいて・・・という涼は高校生ながら多分にセクシーな魅力を持ち合わせた男であり、それを勝地くんが演じると思うとワクワクしました。
当時の吉田さんの描くヒーローは切れ長の吊り目に不敵な笑顔といったキャラクターが多く、遠野涼もまさにそのタイプ。勝地くんも切れ長の吊り目なのでビジュアルイメージもぴったりだし。
原作通りならベッドシーンぽいものもあるのでちょっと覚悟のいる部分もありますが(笑)、そういう役ってこれまでになかっただけに楽しみな気持ちの方がずっと強かったです。
・・・なのですが、ベッドシーンどころか女たらし設定自体存在してなかったですね(苦笑)。
過去のスキャンダルについても雪政が台詞で(冤罪だったこともあわせて)さっと説明しただけで終わってしまうので涼の精神的な傷があまり見えてこない。
飄々としたコミカルさとシリアスな悲劇のヒーロー性を兼ね備えているのが原作の涼の魅力だったと思うのですが、コミカルな要素は全部(涼がらみの描写だけでなく映画全編にわたって)カットされているのでその魅力が半減してしまっている。
そもそも小夜子と由似子の女の友情をより前面に出したためか、ほとんど活躍していないような。
こう書くと不満しかないみたいですが、涼のヒーロー性が大幅に剥ぎ取られているのは映画なりの必然性あってのことと思うので(具体的には(3)で)、それはそれで納得できる。
そして家庭に不幸を抱えた悪ぶってても繊細な少年という、勝地くんの得意とする役どころだけに、ピンポイントの表情・演技にはしばしば見惚れてしまいました。
原作に比べ大幅に活躍場面を狭められていても、その中で可能なかぎりの魅力を彼は見せてくれたように思います(贔屓目?)。
(つづく)