サイエンス好きな男の日記

気が向いたときに、個人的なメモの感覚で書いているブログです。

物件売却時の仕訳

2020-12-14 17:44:25 | 不動産賃貸業

今年は久しぶりに築古物件を売却しました。

そのため、帳簿に仕訳を記載していたのですが、結構ややこしかったので自分のメモとして残しておきます。個人事業主が物件売却時の時に仕訳をどのようにするか、わかりやすいサイトがなさそうだったので、参考になれば幸いです。

 

個人事業主の場合、その固定資産が事業用資産であったとしても、譲渡所得として処理しなくてはいけません。

したがって、仕訳(特に経費に関する仕訳)を考える場合、その所得区分として不動産所得となるのか譲渡所得となるのかに注意が必要です。

譲渡所得の経費として処理するものは、土地や建物を売るために直接かかった費用です。具体的には仲介手数料、司法書士報酬、印紙税、立退料、土地売却のための古家解体費、違約金、名義書き換え料、売却のための広告費用、等です。

期中の減価償却費はどちらでもよいそうです。以下に説明する物件売却時の具体的な仕訳では、不動産所得の経費とする場合を説明します。

不動産所得の経費となるのは、抵当権抹消登記(売らなくてもいつかは抹消するでしょ)、登記簿の所有者住所変更費用(売らなくてもちゃんと住所変更してよ)、修繕費やハウスクリーニング(賃貸に出すときだってやるでしょ)です。その他、不動産売却に直接関係ない経費も、不動産所得の経費として処理することになります。

唯一、収入に関する仕訳で注意したいのは、未経過分固定資産税清算金です。これは、譲渡所得の収入として計上します。
(参考:未経過固定資産税等に相当する額の支払を受けた場合:https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/joto/03/10.htm

 

以下では具体的に説明したいと思います。

まず、土地と建物の簿価を確認します。

土地は、減価償却しませんので、土地の取得価額がそのまま簿価となります。一方、建物は減価償却していきますので、資産管理台帳などで確認します。

 

次に、土地と建物の売却額を売買契約書にて確認します。

もし、売買契約書に、土地・建物それぞれの金額が書かれていない場合には、何らかの理由を付けて、その割合を決めざるを得ません。

以下を例に仕訳を考えます。

・簿価(土地)300万円、簿価(建物)20万円、期中の減価償却費30万円
・不動産所得に関する諸経費10万円
・売却額450万円(土地250万円+建物200万円)
・譲渡所得に関する諸経費20万円
・未経過分固定資産税清算金 1万円

 

まず、不動産所得を考えます。

(振替伝票)

借方                                                    貸方

諸経費                10万円                     預金               10万円      (不動産所得に関する諸経費)
減価償却費         30万円                     建物               30万円      (期中の減価償却費)
預金                 250万円                     土地             300万円      (土地の簿価)
事業主貸            50万円                               (簿価と売却額との差)
預金                  200万円                     建物               20万円      (建物の簿価) 
                 事業主借        180万円      (簿価と売却額との差)

土地の場合、簿価 > 売却額なので、貸方の土地の簿価(300万円)が借方の土地売却額(250万円)よりも多くなります。そのため、その差額を事業主貸とします。(帳簿の主体は商店であり、商店(※)から事業主へ貸した、ということです。)

一方、建物の場合、簿価 < 売却額なので、貸方の建物の簿価(20万円)が借方の建物売却額(200万円)よりも少なくなります。そのため、その差額を事業主借とします。(帳簿の主体は商店であり、商店が事業主から借りた、ということです。)

つまり、利益が出たときには事業主借、損失が出たときには事業主貸として仕訳をすることになります。

(※)本来であれば法人といいたいところですが、個人事業主の場合ですので、一般的ではないのですが事業所得や不動産所得の課税対象を商店と呼び、所得税や住民税の課税対象である事業主と区別しています。

 

おそらく、この説明ではすっきりしないと思うので、少し補足します。

不動産の売買では、その損益は譲渡所得で処理しますので、不動産所得の観点で見ると損益は発生しません。つまり、事業主は損得が発生しますが、商店からすれば簿価通りの売買として処理します。

先ほどの例で説明すると、土地の簿価が300万円なのに商店は250万円で売却しました。買主は250万円を商店に支払いましたが、商店は損失を発生させられません。そのため、不足分50万円は商店から事業主へ貸したことにし、帳尻をあわせたということです。つまり、事業主からすると勝手に借りてもいないのに借りたことにされたので50万円の損失です。

同様に、建物の売却では、建物の簿価が20万円なのに200万円で売却しました。買主は200万円を商店へ支払ったのですが、本来であれば簿価と同じ20万円だけでよかったのです。そのため、商店はもらいすぎたその差額180万円は事業主から借りた、ということにしたのです。事業主の視点では、貸していないにもかかわらず貸したことになっているので、その180万円が利益になります。

差し引き、事業主は130万円の儲けとなり、そこから譲渡費用を引いた額に対して税金がかかることになります。

不動産取引の損得を事業主が肩代わりするからこのような複雑な仕訳になってしまいます。これで少しはすっきりしたでしょうか。

 

次に譲渡所得を考えます。

収入金額 = 売却額(450万円)+ 未経過分固定資産税清算金(1万円) =  451万円
取得費 = 簿価(土地)(300万円)+ 簿価(建物)(20万円) = 320万円
譲渡費用 = 譲渡所得に関する諸経費(20万円) = 20万円

よって、譲渡所得 = 収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) = 111万円 を申告します。

 

不動産の売却は、個人事業主が不動産事業を行う上で最も厄介な仕訳の1つではないでしょうか。

 

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