詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

ニジロスオ

2016年10月08日 | 
金曜日のレストラン
声が
四方八方から飛び出す
皿やフォークを蹴散らして
テーブルの上で交錯し
ぶつかり破顔
氾濫のアルコール
意味なんかに溺れない
みんなで波乗り

楽しかった
というときは
ひとりひとりの顔が見える
もしくはひとりのひとの
肉色に輝く新しい断面
ピアス

十年の付き合いでかわっていく
それぞれの生活
十年の付き合いでわかっていく
それぞれのこと
天使が通るというときがあるように
ドラゴンが通るときもある
会話の長いうねりの拍子で
ひとりのひとの
これまで見えなかった
向こうの美しい鱗が見えてくる
瞬間にひとへの窓が大きく下へ
押し下げられて(上下開閉式)
ひとりひとりがよく見えてくる
そんな幻想わたしを酔わす

名残りの喧騒がBGM
ぐらんぐらんする人の影をくぐりぬけて
脚がじんじんして
空振りのあくびを何発も星に喰らわせて
ようやく家にたどり着いた
シャワーを浴びて
Où habitez vous?
しばし起きていて
J'habite à Tokyo.

コップに水を注ぎ
どっこいしょっと椅子に座れば
急に辞書なんかひき始める
錆びつくよりもずっとまえに
意図ほころびている外国語
思い出したようにアルファベットが色気づく
たとえばこんな夜
別れてきたばかりの顔たちが地図のように
街のネオンに混じり
ピカピカ光っている

話すこと
話す以上のこと
胸に迫ってきて
まだまだなにかと交信していたい
日本人しかいなかったのに
本棚の隅の外国語さえ
カタコトと

デジタルのグラスが傾いて
2:00という概念を
文字盤にこぼしている
ひとびとが眠ったあとの
いまはすっかりしずかな夜更けに
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