詩と写真 *ミオ*

歩きながらちょっとした考えごとをするのが好きです。
日々に空いたポケットのような。そんな記録。

水が流れる

2015年07月25日 | 
電気も消さずうつ伏せになって
枕を抱えるようにして耳を押し付けていると
階下の家で水を流す音が聞こえる
音は深いところで踊るこびと
くっついたり離れたりを繰り返す
滑稽な遊び
まぶたは幸福にあわさる

すくってみたり
揺れる模様
なめらかな反射
仲間から離れ
いまはひとり
温かくくるまれ
静かに内側から弾けている

湯をかきまぜながら
肩はひんやりした空気になでられて
山あいを流れる霧のような不安
うちとけながら保たれている
自分への違和が張っている膜
仲間へのわずかな隔て
アンバランスを胸に抱えて裸になると
また一枚、山々が神秘の衣をまとう

霧が晴れれば小さな花
宙を歩いて行けそうな
遥かな景色があらわれるように
肌と水の揺らぎを混同するほど
おののきも風景を美しくするばかり
耳に楽しんでいた泡たちの軽い響き

ふいに入り込む
絶え間なく堆積していく過去の間
そのとき感じていたあいまいな何かの
すべての層を開き
地下の実験室で
何本もの試験管に入れて
よく調べてみよう
そう思って安心し
電気を消して眠った
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