ステンレスが鈍く冷たい光を放つキッチンで
黄緑色のボールからすくいあげる
壁をはう蜘蛛のように指を動かし
地球のように軸を斜めに傾けて
気付けばいつも一周まわしている
洋梨はなめらかでいびつ
昨夜の夢のように
ナイフの刃をあて
うすく皮を剥いていく
体に傷をつけないよう
小さな息をすべりこませて
隣室で遠い記憶の人が
衣を脱いでいる音を
聞いているような気がする
そんな話を聞いたような気がする
シンクに衣が落ちた
月が落ちた
いま手元にある
いびつなかたちになって
レースのカーテンを幸福にした朝の光が
いまここに遅れて届き
ずしりと噛むとうれしい果実になった
左手にしっくりと
風景にかなう曲線の
芯を中心に抱く白いデッサン
いびつなかたちに沿おうとたどった影が
繊細な角度で面を接する多面体
ふたつに割るとぽろり
茶色のなみだをこぼした
黄緑色のボールからすくいあげる
壁をはう蜘蛛のように指を動かし
地球のように軸を斜めに傾けて
気付けばいつも一周まわしている
洋梨はなめらかでいびつ
昨夜の夢のように
ナイフの刃をあて
うすく皮を剥いていく
体に傷をつけないよう
小さな息をすべりこませて
隣室で遠い記憶の人が
衣を脱いでいる音を
聞いているような気がする
そんな話を聞いたような気がする
シンクに衣が落ちた
月が落ちた
いま手元にある
いびつなかたちになって
レースのカーテンを幸福にした朝の光が
いまここに遅れて届き
ずしりと噛むとうれしい果実になった
左手にしっくりと
風景にかなう曲線の
芯を中心に抱く白いデッサン
いびつなかたちに沿おうとたどった影が
繊細な角度で面を接する多面体
ふたつに割るとぽろり
茶色のなみだをこぼした