時事解説「ディストピア」

ロシア、イラン、中国等の海外ニュースサイトの記事を紹介します。国内政治、メディア批判の記事もあります。

『ロシアの声』あらため、『スプートニク』が開設される

2015-03-22 20:23:44 | 国際政治
ロシアの情報サイト、『ロシアの声』が『スプートニク』としてリニューアルされた。

正直、レイアウトは前のほうが良いが、今後もロシア側からの情報を発信するのだろう。

『ロシアの声』は、一言でいえば、徳間書店や講談社のようなサイトだったと思う。

オカルトや芸能を含んだトンデモ記事も多い中、参考になる記事も多くあった。
極端というか、右も左もと言おうか、いい加減な記事もあれば重要な記事もあったのである。


例えば、北朝鮮の関連記事では
「北朝鮮ではキム・ジョンウンと同じ髪型をしなければならない」という
現地で撮られた写真を見れば一発で嘘だとわかる情報を流したかと思えば、
北朝鮮の食糧事情は年々改善されていることを指摘しているものもある。


なぜこういうことが起きるかというと、このサイトは総合型のニュースサイトであり、
そのため、いい加減な情報元と信頼できる情報元の記事がごっちゃになっているからだ。


よって、他のサイトと比較しながら、あるいは情報源をチェックしながら
読むべき記事を取捨選択しなければならない。

こういう作業が必要なのは講談社や徳間書店の出版物に通じるものである。

例えば、講談社学術文庫はハーバート・ビックス『昭和天皇(上)(下)』のような
重要文献を収録しているかと思えば、トンデモ本も多くあり、読み手の選択力が試される。


徳間書店も、オカルト本がかなり多く、あからさまな右翼本も相当ある一方で、
スティグリッツやイングドールの翻訳書も出版していたりと意外と侮れない。


要するに、今の出版業界は売れるものなら何でも売ってやろうというスタンスらしく、
この出版社の本なら安心して買えるというものが珍しくなっている。


何も考えず安心して買えるのは高文研の本くらいではないだろうか?
明石書店や新日本出版社、大月書店、緑風出版も良書を多く生み出しているが、
たまに変な本を売る時もあり、100%信頼できるかと言えば少々心もとない。

岩波書店に至っては、無難ではあるが、さりとて良書を売っているかというと、
まぁ・・・普通か?と思うようになっているし、これはちょっとなーと思うものも意外とある。
個人的に評価付けするなら、高文研がAだとすれば、岩波はCだ。


徳間書店は変な本が多いのだが、たまにスマッシュ・ヒットを飛ばす。
講談社は文字通り何でもかんでもだ。以下、PHPや文春、新潮社のようなクズ会社が並んでいる。
文春も新潮社も作り話を売ることを商売としているので、さすがに合法詐欺のテクは卓越している。


出版物にせよニュースサイトにせよ、読む側の眼が試されるようになっている気がする。
とはいえ、『ロシアの声』はロシア国内のニュースは良記事を掲載しているし、
北朝鮮や中国などのアジアの記事において、たまに大当たりを出す時もある。
(その場合、きちんとした研究所の専門員が寄稿している)


また、なんでもありというのは、裏を返せば検閲が甘いということでもある。
実際、ロシア政府の見解に反する記事も多く掲載されている。
こういう自由度があることもまた、このサイトの利点であり欠点なのだろう。


過去記事は今でも読めるが、そのうち削除されるかもしれない。
早めに保存しておいたほうがよさそうだ。

長々と語ったが、日本語で読めるロシア側の情報サイトというのは多いようで少ないので、
今後も存続してほしいサイトだと思う(ロシア・トゥデイのように英語で読めるサイトはあるが)。

汚職についてその2

2015-03-22 19:07:26 | 中国(反共批判)
「習近平中国共産党中央総書記が打ち出した「4つの全面」戦略のうち、
 最も喫緊かつ最も困難なのは「全面的な厳しい党内統治」である。

 中国人民政治協商会議第12期全国委員会第3回会議に出席した
 軍事科学院元副院長の劉継賢氏は次のような考えを示している。

 全面的な厳しい党内統治を行うには、指導幹部というカギとなる少数をしっかりとつかみ、
 指導幹部に対する全面的な管理と監督を法によって厳しく強化しなければならない。 」
(http://japanese.beijingreview.com.cn/yzds/txt/2015-03/20/content_678964.htm)

欧米の左翼も含める非欧米型国家批判では、この国は私利私欲にまみれた汚職役人の巣窟なのだと
自分たちの国のことを棚に上げて意気揚々と述べる著書が多い。


実際、汚職などはどこの国にも必ずある現象なので、
その部分だけをピックアップすれば、いくらでも本は書ける。


汚職が横行していることを理由に「だからアラブは、社会主義は間違っているのだ」と述べる
意見に対しては、アメリカやイギリス、フランスの汚職を事例に「だから民主主義はおかしいのだ」
とそっくりそのまま、同じやり方で言い返せることができる。

ましてや、米英仏の侵略トリオは中東・アフリカの再植民地化に勤しんでいるのだから、
全く汚職が存在しないと仮定してもなお、その邪悪さ、害悪にはお釣りがくる。



汚職を撲滅するのには、役人を監督する機関の設立が必要だが、
仮にこういう機関を設立したり、あるいは既存の検察機関を強化したりすると、
これ幸いにと「人間の自由を奪う中国!党が国を支配する地獄の国!」とまぁ、
こんなアホみたいなフレーズを嬉しそうに述べる輩が噴出するだろう。


かつて、松平定信の寛政の改革では、田沼意次の時代に定着した汚職政治を払拭するために、
かなり厳しい規制を役人だけでなく町民にも強いた。汚職があっても、自由だった昔が
懐かしいなという句すら読まれる有様だったが、汚職の対策というのは得てして、
個人の自由を制限することで達成される。ここに着目して、相手国の攻撃をする輩が
わらわらと出てくるのではないかと思われる。

尖閣諸島の電子資料館がオープンされる

2015-03-22 00:23:57 | 中国(反共批判)
今月の初め、中国の国家海洋情報センターが運営する尖閣諸島の電子資料館がオープンされた。
(http:/www.diaoyudao.org.cn/jp)


尖閣諸島に関しては、中国側が相当数の資料をそろえていることは知っていたが、
いよいよ本格的に、資料を公開し、自国の領有権を主張する構えに入ったようだ。


なお、北京週報の特集サイトでも尖閣諸島に関するページがある。
個人的には、こちらのほうが資料は少ないものの解説は充実しているように思う。
(http://japanese.beijingreview.com.cn/zt/node_66181.htm)


竹島についても思うのだが、日本の外務省は東大出身の秀才揃いのわりには、
領土問題においてネット上での広報活動がまったくなっていないような印象を受ける。


一言でいえば、ダサい、ショボい、ホームページの出来からしてレベルが低い。

去年開設された南京事件の電子資料館&追悼サイトを見ても思ったが、
中国政府はたっぷりと予算をかけ、歴史問題に取り組もうとする意気込みを感じる。

資料も充実しており、その一部はネットで閲覧することもできる。


他方で、日本の場合、自分の領土だというわりには
根拠となる資料もアップされてないし、学術論文や学術書の紹介もされていない。
一言でいえば、これをもって中国側に反撃できるだけの情報が掲載されていない。


たとえば、尖閣諸島の中国側の主張に対しては、こう書かれているだけだ。
「中国側が挙げている文献や地図の記載内容は,領有権を有することの証拠とするには全く不十分。」


これに対して、中国側のサイトではどうなっているのか?


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1762年にポルトガル人が作成した『航海針路』において、
三王島(釣魚島)と台湾、漳州、寧波等を同一の表に記入されている


また、針路の配列順序並びに経緯度の対応状況からも、
釣魚島と台湾等が中国に属することが明らかである。

この針路表では、日本に属するものは「日本(Japaó)」と明確に表記されている

(http://www.diaoyudao.org.cn/jp/content_34828642.htm)

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以上の解説を問題の資料のスキャナ画像と共に記載している。ちょうどこんな風に。




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沖縄県管内全図


1895年に日本で出版された『沖縄県管内全図』では、
沖縄県所属の島嶼の地理的範囲が明確に記されている。

図面中に、久米島が琉球諸島西南方面の境界であることが明記されており、
釣魚島及びその付属島嶼は沖縄県の管轄内に含まれていないことが一目瞭然である。

http://www.diaoyudao.org.cn/jp/content_34817833.htm
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このような資料が現段階で、23点も紹介されている。
また、近年中国側で発刊された資料集では図表、文献約380点が収録されている。


これについて日本の外務省では、
「尖閣諸島は,1885年から日本政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により
 再三にわたり現地調査を行い,単に尖閣諸島が無人島であるだけでなく,
 清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重に確認した上で,
 1895年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行って,正式に日本の領土に編入しました。」
というフレーズを繰り返すばかりで、当時の調査報告書すらアップロードされていない。


一応、少々の具体的反論を行っている個所もあるが、数の上では10点にも上らない。
(根拠が比較的薄い資料をピックアップして反論しているような印象を受ける)


情報の開示でいえば、中国が数段上を行っているのは確かだ。



さらに、日本の外務省のサイトには明らかな虚偽も含まれている。

「そもそも,中国政府及び台湾当局が尖閣諸島に関する独自の主張を始めたのは,
 1968年秋に行われた国連機関による調査の結果,東シナ海に石油埋蔵の可能性がある
 との指摘を受けて尖閣諸島に注目が集まった1970年代以降からです。
 それ以前には,サンフランシスコ平和条約第3条に基づいて米国の施政権下に置かれた地域に
 尖閣諸島が含まれている事実に対しても,何ら異議を唱えていません。
 中国側は,異議を唱えてこなかったことについて何ら説明を行っていません。」
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q4)



これについては、少なくとも1958年に抗議がされており、
当時の中国政府からの抗議文が資料館にアップロードされている。
(http://www.diaoyudao.org.cn/2014-12/11/content_34291770.htm)



他にも、
「1885年の外務大臣の書簡は,編入手続を行う過程における一つの文書であり,
 そこには清国の動向について記述があるのは事実ですが,日本政府として,
 清国が尖閣諸島を領有していると認識していたとは全く読み取れず,
 同書簡はむしろ当時尖閣諸島が清国に属さないとの前提の下,
 我が国がいかに丁寧かつ慎重に領土編入の手続を進めてきたかを示すものです。

 外務大臣が同書簡の中で実地踏査を支持していることからも,
 尖閣諸島を清国の領土であると考えていなかったことは明らかです。

 また,1885年に内務大臣から外務大臣に宛てた書簡でも尖閣諸島に
「清国所属の証跡は少しも相見え申さず」と明確に記載されています。」
(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q8)

と書かれているのだが、肝心の史料にはこう書かれている。


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右島嶼(注:尖閣諸島)の儀は,清国国境にも接近しており,
踏査を終えると大東島に比べれば,周囲も小さく見え,
特に清国にはその名も付し,
近時清国新聞等にも我が政府において台湾近傍清国所属の島を占領せんとする等の風説を掲載し,
我が国に対して猜疑を抱き,頻に清政府の注意を促しているところでもあり,
これについては,
この際,公然と国標を建設する等の処置を行えば,
清国の疑惑を招くだろう。

実地踏査をさせ,港湾の形状並びに土地物産開拓見込の有無詳細を報告させるに止め,
国標を建て開拓等に着手するは他日の機会に譲るべきだろう。


http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q8
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つまり、調査を終えると島には中国の名前もついていて、
近頃、日本政府が台湾や近隣の島を占領しようとしているという噂があるので、
公然と処置を行えば疑惑を招くので、とりあえずは調査の段階に止めるべきだと書いているのである。

(この手紙の10年後、実際に台湾とその付属諸島は馬関条約により日本の領土に吸収される。
 この際に台湾と同時に領土とされたのが尖閣諸島である)

なお、この手紙は1885年9月22日、西村捨三沖縄県令が山県有朋内務卿にあてた
尖閣諸島への国標建設に関する秘密報告において、これらの無人島について

「中山伝信録に記載の魚釣台、黄尾嶼、赤尾嶼と同一のものであるはずだ。
 清朝の冊封使船はこれらの島嶼を詳悉するのみならず、
 すでに名称も付し、琉球航海の目標としていた。

 従って、釣魚島に日本の国標を建設すべきか否かについて懸念があり、
 政府の指示を仰ぎたい」と述べたことを受けたものである。具体的には、こう書かれている。


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本県ト清国福州間ニ散在セル無人島取調之義ニ付
先般在京森本県大書記官ヘ御内命相成候趣ニ依り取調致候処

概略別紙ノ通ニ有之候仰モ
久米赤嶋久場嶋及魚釣島ハ古来本県ニ於テ称スル所ノ名ニシテ……
沖縄県下ニ属セラルルモ敢テ故障有之間敷ト被存候得共過日御届及候大東島
(本県ト小笠原島ノ間ニアリ)トハ地勢相違
中山傳信録ニ記載セル釣魚台黄尾嶼赤尾嶼ト同一ナルモノニ無之哉ノ疑ナキ能ハス

果シテ同一ナルトキハ既ニ清国モ旧中山王ヲ冊封スル使船ノ詳悉セルノミナラス
夫々名称ヲモ附シ琉球航海ノ目標ト為セシ事明カナリ


依テ今回大東島同様踏査直ニ国標取建候モ如何ト懸念仕候」

(http://japanese.beijingreview.com.cn/zxnew/txt/2013-05/24/content_544490.htm)
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これに対して山縣が井上に相談したのが例の資料だった。

要するに、清国の領土である疑いが出てきたからどうしようかという話だったのである。
井上はとりあえず建てずに、目立った動きはしないように、調査のことは公にしないようにと進言した。


日本政府は、一連のうち、国標を建てようとした山縣の言葉だけを強調しているが、
これは全体の流れを無視した曲解である。



以上のように、中国政府が明確な資料を提示しているのに対して、
日本政府が虚偽と曲解を含んだ不十分な説明しかされていないのだが、
これは中国と比べて日本での研究があまり進展していないからだと思われる。


今のところ、資料はさほど多くはないが、今後、多くの文献資料が公開される可能性がある。
加えて、中国人学者の論文が日本語訳されることも。その時、日本政府は情報戦に勝てるのか。
少々不安になってくる。



汚職について

2015-03-21 23:20:09 | 浅学なる道(コラム)
非欧米型国家を攻撃するさいに、汚職の蔓延がネタにされることが多い。

先日、紹介したベネズエラでも汚職は多くある。中国しかり、ロシアしかり、
アメリカやEU、日本が攻撃する国家はいずれも汚職が多く行われている印象を受ける。

しかし、ここで視点を逆方向に向けると、
実は汚職は攻撃する側の国でも頻繁に行われていることに気づく。


加えて、汚職の数よりも法に触れないレベルの悪さがありふれている。

例えば、自民党は財界から多額の献金を受け取っているが、
これは冷静に考えれば金権政治、利益誘導型の政治につながるし、
現にそうなっているにも関わらず、汚職としてはカウントされていない。


安倍晋三は各新聞社・テレビ局の幹部と頻繁に会食し、さらにはNHKの人事にまで介入し、
自分と懇意の中である極右思想の人物を経営委員として送り込み、
自分や自民党に有利な報道をするように働きかけているが、これも汚職にはならない。


鳩山元首相が沖縄から米軍基地を追い払おうとした時、
外務省の官僚がアメリカと連携を取り、同氏の妨害を行ったが、これも汚職ではない。


アメリカに目を向けてみると、証拠をねつ造し他国を侵略したにも関わらず、
このねつ造に関与したであろうラムズフェルドは一切罪を問われていない。


同じく、日本の集団的自衛権を非難どころか逆に支持したジョセフ・ナイは
世界でも有数の国際政治学の権威だが、この軍拡(アメリカの傀儡軍の誕生)を望む
およそ平和主義とは程遠い同氏の振る舞いは汚職にはあてはまらない。


そして、戦時から米軍の植民地と化している沖縄の環境を戦後初めて変えようとした
鳩山元首相は、実母から受け取った献金を記載していなかったために、
毎朝、毎晩、自民党と結託したメディア勢力が「政治とカネ」という合言葉を大合唱した。

実は、同時期の弟の邦夫も兄と同じことをしていたのだが、
こちらはあまり(というよりも全く)責任を追及されなかった。



こうしてみれば、汚職は確かに悪ではあるが、巨悪に比べれば些事であることがわかるだろう。
つまり、私たちが優先して撲滅すべきなのは合法の汚職であるはずだし、
汚職を行っていようと正しいことをしている政治家もまた存在するのである。

ある政治家を判断するにおいて、総合的な評価が必要となるはずなのだが、
汚職=絶対悪=全否定=辞職以外の道を認めないという思想が蔓延しているため、
汚職がない限りは、どんな非道なことが行われても事実上看過される奇妙な現象が起きている。
(ましてや、近年は歴史改ざんなどの問題発言すら、軽いたしなめで終わらせられている)


繰り返すが、汚職自体は悪である。しかしながら、それは相手を評価する絶対的要素ではない。
にも関わらず、それのみに着目して白か黒かを決めるのは単純な発想だ。

私たちが気にかけるべきなのは、汚職をしてまで何を目指し、どのような結果をもたらしたかだ。
例えば鳩山元首相だが、彼は社会保障の強化とアジア諸国との関係改善を望み、
結果的に部分的にではあるが、無償教育を成し遂げた(これすら税金の無駄と叩かれたが)

対して小泉元首相は汚職は「恐らく」していないが、アメリカに追従し、
自衛隊の海外派遣、新自由主義経済の導入、結果としての著しい格差と貧困をもたらした。

(不思議なことに彼のほうが国民のウケは良い。
 これは、小泉元首相への過剰な礼賛報道が影響していると思われる。
 実際、小泉首相がちょっと力士をねぎらうだけでニュースになるほど、
 アイドル様な扱いを受けていたのだ。鳩山氏の場合は、連日のごとく、
 政治とカネ、政治とカネ、米軍基地問題にせよ、彼が失敗するのを望んでいるかのような
 バッシング報道ばかりを集中して行った。米軍基地の県外移転に失敗しそうな時期、
 メディアは公約違反だ、公約違反だと大騒ぎした。これに対し、鳩山氏が
 米軍基地の移転はマニフェストにないと返答したところ、自分たちが虚偽の報道をしたことを
 棚に上げ、確かに明記されていないが、国民の期待を裏切ったと罵った。
 こういう一連の悪意ある報道がどれだけ世論に悪影響を与えるかは言うまでもない)


あくまで、汚職はプロセスの誤りであり、目的や結果の誤りではない。
私は、汚職はバレないだけで、ほとんどの議員は関わっていると考えている。

よって、なくすに越したことはないが、これを絶対の基準にするのには異議を唱えたい。

そして、欧米型国家だろうと非欧米型国家だろうと汚職が蔓延している以上、
どちらかがどちらかを汚職を根拠に否定しようとするのは、ナンセンスに思えるのだ。

チュニジアの日本人殺害の背景(日本メディアが伝えてこなかったこと)

2015-03-20 00:29:49 | リビア・ウクライナ・南米・中東
チュニジアで日本人が数名、殺害されました。実に痛ましい事件です。


この事件について、日本では「なぜ中東で唯一、民主化が上手くいったチュニジアで事件が?」と
疑問を投げかけている馬鹿野郎どもがわりと本気でいます。


彼らメディア関係者は決して情報を知ることができない位置にいたわけではなかった。
これを「馬鹿野郎」と言わず、どう表現すれば良いのでしょう?



簡潔に説明すると、チュニジアでは民衆が蜂起した後も、
軍が国を支配するという構図は全くそのまま変わりませんでした。



ベンアリー抜きの軍事政権。これはエジプトでも同様です。
そして、現在、アメリカが両軍のバックに立ち、支援を行っていること。これもまた事実です。



そもそも、アラブの春というのは自然発生的に起きた事件ではありませんでした。


確かに、きっかけはチュニジアの青年の抗議の自殺ではありましたが、それ以前から、
現地の若者に対してアメリカのシンクタンクが民衆蜂起のテクをレッスンしていたのです。

つまり、導火線に火さえつけば直ちに爆発するような爆弾が
あらかじめ、アメリカを中心とするIMF・欧米連合によって作られていたというわけです。


また、両国にはムスリム同胞団という過激派が存在し、特にエジプトにおいては、
このテログループとの戦いを通じて次第にムバラクの独裁的傾向が深まっていったのですが、
この同胞団を支援したのが他ならぬアメリカ合衆国でした。


チュニジアにせよエジプトにせよ、アラブの春によって誕生したのが
ムスリム同胞団による政権だったというのは偶然ではありません。



古くはシオドア・ローズベルトの時代から続く、現地の反体制派を支援し、
政権を転覆させ、アメリカに有利な保護国を作るというシナリオに基づいたものです。



ですから、アラブの春というのは、実際には欧米の再植民地化だったわけで、
暮らしが良くなるわけでも民主化が進むわけでもなかったのです。



どうして、このことを中東研究者もメディアも言わないのだろう、
実際には現地の状況は良くなっていないのになぜ民主的な革命とまでベタ褒めするのだろう。

そう私は思っていました。特にNATOが爆撃によって文字通り消滅させたリビアに対しては。



今回の事件は、チュニジア=民主化されたという歪んだイメージを刷り込ませた結果、
起きるべきして起きた事件だと私は思います。もっと危険な状況にあると危機感を抱くべきでした。

政府も企業も。末筆ですが、亡くなった方々のご冥福をお祈り申し上げます。

レオポルド・ロペスとは何者なのか

2015-03-19 21:42:10 | キューバ・ベネズエラ
こうしてプロパガンダは作られる ベネズエラ編

前の記事です。



ユートピアでもない限り、政府は必ず失敗を犯し、民衆の不満がたまるものですが、
その場合、その抗議の手段は正当なものでなければならないはずです。


少なくとも私は、①暴力、②虚偽、③欧米政府との協力をもとにした
抵抗運動は、いかなる理由があろうとも断固拒否すべきだと思います。


というよりも、この3点は得てしてセットになりがちです。
今回もベネズエラの反政府メディアの記事を実例に説明していきましょう。


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レオポルド・ロペスって誰?

レオポルド・ロペスはハーバード大学ケネディスクール出身の
カリスマ性を持つ若いベネズエラの経済学者で政治家です。


彼はカラカスのチャカオ市の前市長です。
彼は全く身に覚えのない汚職の申し立てにより、2008年選挙に参加することを禁じられました。


2011年には、ロペスの有罪が証明されなかったので、
米州機構がベネズエラ政府に対しロペスの禁止を取り下げるよう指示を出しました。


そして彼は野党「民衆の意志」Voluntad Popularを結成しました。
彼はこの抗議運動の主要な支援者でした。

しかしマドゥーロがテレビの生放送で
ロペスは殺人とテロリズムの罪を犯したので逮捕されなければならないと発言。


それに応じて彼は自ら出頭しました。
彼は野党の中でもより急進的な立場とみなされており、
路上での抗議活動が民主主義への移行に向うためには鍵となるポイントだと見ています。

http://venezuelainjapanese.com/2014/02/24/faq/
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米州機構はアメリカの中南米支配の道具として現在まで君臨する機関です。

米国、カナダと中南米33カ国でつくる南北米州の地域機構。1951年発足。
民主主義促進や貧困削減を掲げる一方、47年結成の米州相互援助条約(リオ条約)と連動し、
軍事干渉の正当化やキューバ封鎖など米国の中南米支配の道具にされてきました。

(赤旗の記事より http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-02-15/2010021507_01_1.html)


上の記事では説明されていませんが、
ロペスはベネズエラ初代大統領のひ孫で、正真正銘の支配者階級出身の人間です。


彼は71年生まれですが、国の財産がアメリカによって搾り取られた
新自由主義の時代、支配者の特権としてアメリカに留学し、博士号を取得しました。

この時代、ベネズエラが教育後進国であり、成人の識字率が40%だったことを踏まえれば、
ハーバード大学に留学するということが如何に至難の技だったかが想像できるでしょう。

(ちなみに現大統領のマドゥロは元バスの運転手で労働者の家庭の生まれです。
 背景からして、エリートと庶民との激突であることがわかるかと思います。)



このように、アメリカお抱えの政治家であり、
その主張も石油企業の民営化、規制緩和、IMFとの協力という
80年代~90年代のベネズエラの時代と全く同じ政策を主張していること。

(参照:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-ef24.html)


これは是非とも押さえておかなければならない点です。

引用分だけを読むと、如何にも不当な理由で逮捕されたかのように見えますが、
実際には、彼はどのような経緯で出頭するに至ったのでしょうか?


アメリカ・南米関係を研究するサリーム・ラムラニ助教授の寄稿文を読んでみましょう。


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ベネズエラ反政府抗議行動の25の真実

サリーム・ラムラニ
Opera Mundi (Rebelion 2014/02/25)



選挙によって政権をとることができない急進的な反チャベス派勢力は、
2002年と同様、憲法秩序を破壊するために、抗議行動を増大させている。



1.
2013年4月以降、選挙で合法的に選ばれた
ベネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領は、強力な野党勢力と対決している。
野党勢力は、米国の支援を受けて、1998年に失った政権を再び取ることを狙っている。


2.
野党勢力は、2013年4月の大統領選挙において、1.59%の差で敗れたため、
当初は選挙の結果を否定した。しかし、その選挙結果は、欧州連合や米州機構、
カーター・センターなど、最も重要な国際機関によって保証された結果であった。

そして、野党勢力は、その怒りを暴力的な行為で示し、チャベス派の11人の命を奪ったのである。

3. 
しかしながら、当選したニコラス・マドゥーロ大統領と、
野党で右派のエンリケ・カプリーレス候補の票差が僅差であったことで、右派は活気づき、
政権奪還の期待で奮い立った。そこで2013年12月の地方選挙を戦略目標としたのである。

4.  
あらゆる予想とは反対に、地方選挙はチャベス派の政権を信任する国民投票を意味するものとなった。
というのは、チャベス派が基礎行政区の76% (256区)を獲得したのに対し、
全野党が集まった反チャベス派同盟の民主団結会議(MUD)は23%(76区)しか
獲得できなかったからである。

5.  
この重大な敗北に士気をくじかれ、民主主義的な手段で政権を奪還する見通しが
再び遠ざかるのを見て(次の選挙は2015年12月の国会議員選挙である)、
野党はウゴ・チャベス大統領に対するメディアと軍によるクーデターに至った
2002年4月のシナリオを繰り返すことを決定した。


6.  

2014年1月以降、野党の急進的な党派が、行動を起こすことを決定した。



「人民の意志」党の指導者で、
2002年4月のクーデターにも参加したレオポ ルド・ロペスは、
2014年1月2日から、抗議行動の呼びかけを開始した。


「われわれは、ベネズエラのみなさんに対して、(…)決起を呼びかける。
 ベネズ エラ国民が「もうたくさんだ」と声を上げることを呼びかける
(…)目的は、“解決策”について議論することだ。何が、この惨状の解決策となるのか?」




7. 

2014年2月2日の抗議行動において、レオポルド・ロペスは、
すべての悪はマドゥーロ政権に責任があると非難した。

「ここ最近の物資不足は、誰のせいか。それは、政府のせいである」



8. 

2014年2月2日、野党の大物で、
首都カラカスの市長であるアントニオ・レデスマも変化への呼びかけを開始した。

「現在まで15年連続で続いているこの体制は、対立を引き起こしている。
 今、全ベネズエラの街頭がひとつになる」

9.  

野党議員のマリア・コリーナ・マチャドは“圧政”を終わらせるための呼びかけを開始した。

「ベネズエラ国民の答えは“反逆”だ。選挙まであと数年、待つべきだという人たちもいる。
 子供たちのための食料を入手できない人々は、待つことができるだろうか? 
 働く権利や所有権を奪われている公務員、農民、商店主は、待つことができるだろうか? 
 ベネズエラは、もう待つことができない」

10.
 
2014年2月6日、反チャベス派の抗議行動の後、
100人あまりの覆面をした学生の集団が、タチラ県の知事公邸を攻撃し警察官10人が負傷した。

11. 

同じ週、反チャベス派の抗議行動が、いくつもの県で相次いで起こり、
それらの抗議行動のすべてが暴力行為で終わった。

12.  
2014年2月12日、反チャベス派が検察庁前に大々的に組織した抗議行動は、
挑発行為を行うために組織された私立大学の学生たちで構成されたものであった。


この抗議行動は、それまでにないほどの暴力的な事件となり、
3人の死亡者、約100人の負傷者と、数えきれないほどの物的損害を出した。


13. 
2002年4月のクーデターと同様、3人の死亡者は、頭部に1発の銃弾を受けて死亡した。

14. 
3人の中には、チャベス派のフアン・モントーヤと、
反チャベス派のバジル・ダ・アコスタと呼ばれる人物が含まれていた。
弾丸を調査した結果、二人とも、同じ武器を使用して殺害されたことがわかった。

15. 
この抗議行動後の数日間で、参加した学生たちは、
“インフレと治安の悪さに抗議するために”正式に組織され、
カラカスの富裕地区にあるアルタミラ広場に結集した。

16. 


数カ月前から、ベネズエラは、反チャベス派が仕掛けた経済戦争に苦しめられている。
反チャベス派は、いまだ広範な産業分野を支配しており、
物資不足を人為的に作り出したり、生活必需品を買い占めたり、投機的行為を倍増させたりしている


17. 
そのような状況の中、2014年2月5日、当局は、タチラ県において、
倉庫に隠されていた1000トン近くの必需食料品(米、砂糖、油、コーヒーなど)を押収した。
2013年1月以降、当局は、5万トン以上の食料品を押収している。

18.  
ベネズエラ政府は取り締まりを開始し、買占めや投機を行う人々を処罰することを決定した。
2013年11月、政府は、家電製品チェーンのダカに介入し、 価格統制を行うことを決定した。
ダカは、家電製品に1000%以上の利益を上乗せして販売していたため、
ベネズエラの大部分の人々は、購入することができ ない状態であった。

19. 現在は、企業の売買差益は、30%を上回ることができなくなっている。

20. 
ニコラス・マドゥーロ大統領は、クーデターの企てを非難し、
“ファシズム”と対決することを国民に呼びかけ、
「われわれを祖国と民主主義の道から引き離すことは、誰にもできない」と断言した。

21. 
米国人外交官3人が、流血の惨事となった抗議行動とかかわっていたため、
2014年2月17日、国外退去となった。ベネズエラ政府によると、
3人は、抗議行動について連携するため、私立大学の学生たちと会っていた。

22. 
2014年2月18日、レオポルド・ロペスは、
暴力的な抗議行動における政治的責任を問われて
逮捕され、起訴された。


23. 
オバマ政権は、クーデターを企てた反チャベス派の責任をまったく指摘することなく、
ベネズエラ政府の暴力を非難した。それどころか、米国の国務省は、
この悲劇的な事件の主要な扇動者であるレオポルド・ロペスを、即時に釈放することを要求した。

24. 
西側メディアは、武装した急進的な党派による暴力的な行為
地下鉄や公共建築物における略奪、
 人民の店メルカル ―国民が食料を購入する店である!― の焼き討ち
)や、
国営テレビのベネソラーナ・デ・テレビシオンが銃撃されたことを、隠蔽した。

25.  
西側メディアは、ベネズエラで起こった悲劇的な事件を、
厳密な客観性をもって報道するどころか、クーデター主義者の反チャベス派の肩を持ち、
選挙で選ばれたニコラス・マドゥーロの民主主義政権を敵視した。


また、ためらうことなく世論を操作し、現在の状況を政府に対する大衆蜂起として報道している。
現実には、ボリーバル革命に賛同する非常に大規模な行進が示しているように、
マドゥーロ大統領は、大方のベネズエラ国民の非常に広範な支持を得ているのである。


http://emexico.web.fc2.com/articulos1/manifestacionesenvenezuela.html
--------------------------------------------------------


このように学生を扇動し暴動を起こした張本人がロペスだったのです。

しかも、ロペス達は暴動を扇動する直前に、
ベネズエラの石油の民営化、経済の規制緩和、国際通貨基金(IMF)との協力を発表していました。
(参照:http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2015/02/post-ef24.html)


加えて、アメリカの役人と裕福な人間が通う私立大学の学生との連携の疑い、
反チャベス派の生活必需品の買占め、そして反政府派の暴力行為。


これだけの汚点がありながら、ロペスを正当化することはかなり厳しいでしょう。


この反政府メディアの主張、叩けば叩くほどホコリが出てくるのですが、
特に非道いのがベネズエラのここ20~30年の状況についての説明。



簡単に説明すると、ウゴ・チャベスが大統領に当選する前の20年間は、
レーガン・サッチャー両陣営にサポートされた新自由主義政権の時代で、
IMFの指導の下、極端な緊縮経済と石油の民営化、経済の規制緩和を行った結果、
国民の80%(1900万人)が貧困、うち46%が極貧の生活を送り、
1975年から1997年にかけて中産階級の割合が56.9%から31.3%に減少し、
労働者の4分の1しか社会保障を受けられない状況に陥った地獄の時代でした。


以下、次の説明文を紹介します。

「【ベネズエラって?】

 面積は日本の2.4倍、人口2550万人、人種は混血66%と白人22%他。
 石油輸出量世界第4位という富裕国。しかし富は一部の金持ちのものだった。

 1980年代、90年代に強力にすすめられた新自由主義グローバリゼーション
 (市場原理を最優先する経済の世界化)で、国民経済は壊滅的打撃を受けた。

 IMF(国際通貨基金)から財政再建のための福祉予算の削減、
 規制緩和、公共 サービス部門の民営化、貿易自由化などが押しつけられ、
 貧困人口が増えた上に、所得格差が開いた。
 
 98年、チャベス氏が国民の圧倒的多数の支持を得て大統領に当選。

 旧体制にしがみつく資本家・大土地所有者、
 特権高級公務員・労働組合幹部、メディア支配層は、
 軍事クーデター、全国的な経済スト、大統領罷免国民投票などで
 政権転覆をはかったが、すべて失敗している。

(http://www.min-iren.gr.jp/?p=3462)



反政府メディアのサイトでは、この時代を次のように説明しています。

------------------------------------------------------------------
チャベスが政権につくまでは、べネズエラの中流階級の人には、
世界の中流の人と同様に、頑張って働けば良い暮らしができ、
頑張って勉強すればより良い仕事につける可能性がありました。


確かに、発展途上国によくある汚職や政治の不正、
圧倒的な貧富の差という不平等の問題は昔からありました。

とはいえ、それとは別に中流層には頑張ればより良い生活をつかめるチャンスがあったのです。


ところが、チャベスが大統領になりベネズエラが社会主義の国になったことで、
その中流層の可能性はどんどん狭くなっていきました。

http://venezuelainjapanese.com/2014/06/03/whyprotest/
---------------------------------------------------------------------


これは史実を完全に無視した手前勝手な大嘘です。


実際には、前述したようにミドルクラスを含めた庶民が貧窮し、
頑張ればどうにかなると言えるような社会ではありませんでした。


データを見ても、中産階級が占める比率は
70年代から90年代にかけて現象の一途を辿っていっています。


(なお、この努力次第で幸福になれるという理屈は、
 新自由主義を推進する人間の決まり文句のようになっている)


要するに、ロペスをはじめとした反政府の先導者たちは
新自由主義の時代への回帰を求めているのです。



米国の関与の下で。


このことが反政府サイトでは一切触れられていません。



(ベネズエラ現大統領、ニコラス・マドゥロ)


最後に、この反政府派の活動を語る際に、絶対に外せないことについて説明します。

それは「スォーミング」です。

アメリカの防衛機関のシンクタンク、ランド社の研究員が考案したもので
ネットでつながった若者を蜂の群れ(スォーム)のように動かし、
アメリカにとって不都合な国に住む現地住民の抗議運動を
人為的に発生させようとするものでした。


要するに、アメリカのペンタゴンの研究機関が、
現地の学生を訓練し、抗議デモ・暴動を発生させてきた歴史があるのです。


その始まりは天安門と言われていますが、近年ではエジプトのキファーヤ運動が挙げられます。
このキファーヤとは現地の言葉で「もうたくさんだ」を意味します。



ここで、ロペスの暴動を呼び掛けた時の演説をもう一度読んでみてください。

「われわれは、ベネズエラのみなさんに対して、(…)決起を呼びかける。
 ベネズ エラ国民が「もうたくさんだ」と声を上げることを呼びかける。」


初代大統領の血をひく支配者層の人間が、
ハーバード大学に留学し、新自由主義への逆行を主張しながら、
スォーミング(学生を中心とする若者を動員し学生運動を誘導させる)を実行している。


このことで最も得をするのはどこの国かは、あえて書くまでもありません。


確かにベネズエラの経済状況は芳しくないですが、
その改善は選挙によって選ばれた人間が他国の指図なしに取り組むべきことです。


暴力と嘘と外国勢力との癒着に基づいた政権転覆運動は、
いかなる理由があろうと正当化できるものではない。それだけは確かではないでしょうか?

こうしてプロパガンダは作られる ベネズエラ編

2015-03-18 00:06:25 | キューバ・ベネズエラ
ベネズエラは世界でも有数の反米・反新自由主義国家ですが、
その経済状況は決して良いものとは言えません。

国家収入のほとんどを石油の利益に依存するため、
石油の原価が値下がりすれば、それだけで大打撃を受けることになります。

これを利用して、アメリカやサウジアラビアは原油価格を操作し、
去年、ロシアやベネズエラなどの反米国家に対して強力な制裁を加えました。

---------------------------------------------------------
ベネズエラのマドゥロ大統領が改めて、
「アメリカは、石油を道具として利用している」として非難しました。


プレスTVによりますと、マドゥロ大統領は17日土曜、中国、ロシア、
OPEC・石油輸出国機構の5つの加盟国への歴訪を終えた後、ベネズエラの首都カラカスにおいて、
「アメリカは、石油を政治的な武器として悪用している」と語りました。



また、アメリカが石油を政治的な道具として利用することで、
政治的に対抗しようとしている国として、ロシア、イラン、ベネズエラを挙げ、
「アメリカは石油を道具として利用している」としました。


マドゥロ大統領のOPEC加盟国の歴訪の主な目的は、
原油価格を受容可能な価格に戻すことだったとされています。


ベネズエラはこの6ヶ月間、原油価格の下落が原因で国家収入の55%を失っていました。
昨年の6月以来、原油価格は50%以上下落しています。
なお、OPECは世界の産油量全体のおよそ40%を占めています。

http://japanese.irib.ir/news/latest-news/item/
51403-%E3%83%99%E3%83%8D%E3%82%BA%E3%82%A8%E3
%83%A9%E3%80%81%E3%80%8C%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%
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なお、この原油価格の下落はサウジアラビア政府によるものである。
これに関する解説は次のようなものがある。

原油市場におけるサウジアラビアの政治的動き
---------------------------------------------------------

---------------------------------------------------------
「イランとベネズエラの敵は、石油を政治の道具にしている」



イランイスラム革命最高指導者のハーメネイー師が、
「ベネズエラとの全面的な協力の継続と拡大、それはイランの変わらぬ決意だ」と語りました。


ハーメネイー師は、10日土曜、テヘランで、ベネズエラのマドゥロ大統領と会談し、
シオニスト政権イスラエルに対抗するベネズエラの立場や行動を称賛し、
覇権主義陣営がベネズエラに敵対しているのは、ベネズエラがそのような勇敢な立場を続け、
中南米地域で戦略的な影響力を持っているためだとしました。


ハーメネイー師はまた、
短期間で原油価格が急激に下落したのは、経済ではなく、政治的な動きによるものだとし、

「イランとベネズエラの敵は、石油を政治的な道具として利用しており、
 間違いなく、この原油価格の下落に関与している」と語りました。

~中略~

さらに、原油価格の国際的な下落に触れ、
「我々はOPEC石油輸出国機構の加盟国や、ロシアなどの産油国との間で、
 原油価格をコントロールするための一致を作り出し、協力と新たな制度により、
 原油価格を容認できるレベルに戻す努力を行っている」と述べました。


マドゥロ大統領はまた、パレスチナ問題に触れ、
「パレスチナは人類の重要な理想であり、ベネズエラの国民と政府はパレスチナの理想に負っている。
 いつの日か、パレスチナが解放されると信じている」と強調しました。


さらに、「パレスチナは、アメリカの覇権主義的な政策や破壊行動の犠牲になった。
アメリカ政府は、いくつもの顔の裏側に、非人道的で覇権主義的な自らの本来の姿を隠している」
と述べています。

http://japanese.irib.ir/news/leader/item/51198
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---------------------------------------------------------


このような状況の中、国内では
かつての新自由主義の時代(1990年代)へと戻そうとする動きが見られます。


新自由主義の時代、すなわちアメリカに追従し、IMFの支援を受け入れ、
石油の民営化、規制緩和、緊縮政策を実施した90年代とはどういう時代だったのか?


統計をもとに論じると、1996年度において、
国民の67.3%が貧困世帯にあり、39.4%が1日1ドル以下の生活を送り、
残り30%の中間~富裕層が全所得の61.3%を独占し、労働者の4分の1しか社会保障を受けていない、
要するに、今のギリシアやイタリアなどの南ヨーロッパと同じ状況に陥っていたのです。
(世界保健機関の統計に基づく)


ここまで貧困が蔓延した原因として石油資源を外資企業に牛耳られていたこと、
IMFが融資の条件として緊縮政策の実施を要請したため、公共サービス事業の民営化、
各種補助金の廃止、公共料金の大幅な値上げなどの数々の搾取的政策が実行されたことが挙げられます。


恩恵を受けているはずの中間・富裕層ですら、1975年あら1997年にかけて、
全人口の56.9%から31.3%に下降していたのです。これは驚異的な数字です。





この状況を打破したのが選挙によって大統領に当選したウーゴ・チェベスでした。

彼の手により、石油企業は国営化され、
その収入を利用して社会保障の拡充が実行されました。


結果、以前よりも貧困世帯は減少し、社会福祉も受けられるようになったのですが、
社会主義というのは一言でいえば分配主義、当然、富裕層にとっては面白くない。

加えて、近年、物価のインフレや物資の不足により、不満を抱く中間層も少なくありません。


このような状況の中、かつての新自由主義の時代へと戻そうとする動きが見受けられます。
それも、選挙という民主的手段ではなく、暴動を扇動するという卑劣な手段によって。


私はつい、先日、偶然、反動派メディアの日本語ページのブログを拝見したのですが、
そのあまりもの出鱈目ぶりに当初、驚きを隠せませんでした。


プロパガンダとはこう作られるのだなと。


ある意味、定期的に当サイトをご閲覧している皆さんに
プロパガンダとは、どう作るのかを知らせる良いサンプルになりますので、ここに紹介したいと思います。



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貧困減少という都市伝説を切る

Kanako Noda / 2014年9月29日

現在の不安定なベネズエラの状況を見てもなお、チャベス派政権を支持する人の多くが口にするのが
「それでも、チャベス政権の政治のおかげでベネズエラでは貧困がかなり減少した」ということです。


ですが、本当にベネズエラで貧困は減ったのでしょうか?


今回紹介するアナベラとバルバラの記事は、数ヶ月前のものですが、
ベネズエラ政治を知る上で重要な点を指摘しています。


ベネズエラでは今、貧困に苦しむ人々が増えています。



ニコラス・マドゥロが2018年までに貧窮のレベルをゼロを目指すと提案したとき、
彼の言葉はベネズエラに詳しくない人の耳には寛大に響いたことだろう。


だが、実際は、マドゥロはウゴ・チャベスのいくつもの
紋切り型となった約束の一つを繰り返していたにすぎない。

例を挙げれば、「2007年から2013年の国家のための社会経済発展計画の一般方針」
の目的II-2.1に「貧窮をゼロまで減少させ、貧困減少に全力をあげる」とある。


というわけで、ニコラスさん、あなたの貧困減少対策はどうなってるの?


私たちは貧困に関するデータをチェックしてみることにした。さて、その結果は?


最近、国立統計局(INE)により公表された公式の統計情報は、
2013年の第二半期の貧困との戦いにおける(彼らの言うところの)
“達成”が大いに阻まれていることを明らかにしている。



2012年の第ニ半期から2013年の第二半期の間で、
ベネズエラの貧困家庭の数は416,326件も増加している。

同じ時期、非極貧家庭の数は227,240件、そして極貧家庭の数は189,086件増えている。

人の数として見てみると、この数字はさらに憂慮すべきものとなる。

2012年の第二半期から2013年の第二半期の間で、貧困にある人の数は1,795,884人増加していまる。


つまり、200万人に近い人々が、一年間でさらに貧しくなっているということだ。
しかも、これらの数字は公式の統計によるものなのだ*。

非極貧状況にある人の数は1,058,520人の増加、
そして、極貧状況にある人の数は737,364人の増加である。

実際のところ、2007年以降、貧困率は実質的にほとんど下がっていない。


*訳注)通常、政府のイメージが悪くならないようにこの手の数字はごまかされているため、
実際はこれよりも多くの人が貧しくなっていると推測される。



より詳しい事実を知りたい人は、Prodavinci.comの記事(スペイン語)をチェックしてみて下さい。

ベネズエラの経済が困難な状況にあるのは誰もが知っている。
予想通り、このことは貧困に関する統計にも表れている。


もうこれ以上チャベス支持者達は、チャベス主義は「貧困を劇的に減少させた」とは言えまい。
貧困の減少も、チャベス主義者の人々が言う多くのことと同じで、デタラメなのだ。

チャベス主義は一時的に貧困を減少させた。だが現在、貧困は増加している。

http://venezuelainjapanese.com/2014/09/29/mythbusting/
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この文章だけを読めば、如何にも本当のことが書かれていそうです。実際にはどうなのか?

それについて触れる前に言っておきたいのが、
プロパガンダというのは、半分の事実を知らせる傾向があるということです。


つまり、全体の事実から一部分を切り取り、誇張する部分がある。
これを踏まえた上で、次の図を見てください。





ちょっと見づらいですが、
これは1990年代から2011年代までの貧困世帯のパーセント数を統計に表したものです。


青線が貧困世帯、赤線が極貧世帯ですが、
これを見ると、チャベスが登場する直前の時期から減少していることがわかるでしょう。


チャベスが本格的に改革に着手したのは2003年からです。

この年より、GDPの成長や雇用創出、国民年金その他の生活福祉資金の増額が
石油価格の高価や石油企業の国営化を背景に得た収入を元に展開されました。


俗にいう「ミッション(作戦)」とチャベスが呼んでいたものです。


結果として、2003年から2011年までは55%から27.5%、
改革当初の2分の1まで減少しました。このように長期的に見なければ実態は見えてこないのです。


また、極貧世帯の人口比率が3分の1まで減ったことも見逃してはならないでしょう。





1997年から2003年までの貧困世帯の比率を表にすると上のようになります。

赤丸で囲んだところは劇的に比率が低下している部分です。


2012年の第2半期の部分をよく見てください。
2012年の第1半期からグンと下がっているのが見えませんか?



さぁ、種明かしです。

上の図は、反動派メディアが引用した統計を利用して作成したものですが、
これを見れば、2012年の第2半期は最も値が小さい時期です。

そこから2013年度の第2半期に点をつなげれば、自然増加することになります。


つまり、反動派メディアは
最も増加数が多くなる期間を選んで
貧困世帯は増えていると豪語しているのです。


これがプロパガンダと言わずに
なんと言えばいいのでしょうか?





ダメ押しで構造的貧困のパーセント数についても紹介しましょう。


ベネズエラの統計では、収入と最低限度の生活費との割合をもって
貧困ラインを設定しているのですが、構造的貧困の場合、収入や物価に関係なく、
サービスを受けられる環境にあるかどうか、すなわち、初等教育への通学、
人口過密の対処、住居環境の改善、基本的な公共福祉の需給、経済的自立の度合を
もとに貧困ラインを設定します。


要するに、貧しくても国から十分なサービスを受けているかどうかということが
この構造的貧困率から推し量ることが可能です。


これを見れば、チャベスの「ミッション」が実行されてから下降線を辿っていることがわかるでしょう。
特に極貧世帯の低下は目を見張るもので、2分の1にまで減りました。



確かに、ベネズエラの経済状況は依然、険しいものです。
しかし、意図的に統計データを編集し、異なる結果を見せるのは詐欺です。


ベネズエラの真の姿を見せるとかなんとか言って、
「もうこれ以上チャベス支持者達は、チャベス主義は「貧困を劇的に減少させた」とは言えまい。
 貧困の減少も、チャベス主義者の人々が言う多くのことと同じで、デタラメなのだ。
 チャベス主義は一時的に貧困を減少させた。だが現在、貧困は増加している。」

と大見えを切るのは如何なものでしょうか?


翻訳者の野田圭子さんは反動派メディアの設立者の妻を自称していますが、
これでは、反政府活動家の発言への信用が著しく低下するのではないでしょうか?


なお、私はスペイン語が読めるので原文もチェックしましたが、
この言い分は、英国のガーディアン紙や米国のニューヨークタイムスで
主張された内容と同一のものですね。新事実を明かすかのように書かれていますが、
実際は欧米の主要メディアの記事の焼き直しです



日本の右翼とやってることが一緒ですね。
神話を暴くとか真相だとか言いながら、コピペを拡散させる。如何にもです。



最後になりましたが、私はマドゥロのやり方が最善だとは考えてはいません。
彼より優れた人間が現れるならば、それに越したことはないと思います。

やはり、途上国として社会問題は山積みなのですから。

しかしながら、それら問題は、きちんと選挙を通じて解決されるべきです。

今、反動派がやっていることは、暴動とテロ、
かつての新左翼がやっていることと全く同じなのですから。



革命というのは選挙をもって行うべきというのが私の信条です。
暴力も時にやむなしという態度は断固拒否すべきだと思います。

平和の使者オバマ、イランへの制裁続行を求める

2015-03-16 00:30:33 | リビア・ウクライナ・南米・中東
欧米列強およびその属国の論壇が説明するには、アメリカの敵は世界の敵であり、
ロシアだけでなく、イランもまた制裁を加えなければならない独裁国家の1つらしい。


オバマ大統領は、11日に提示した書簡で次のように主張した。

イラン政府の独自の政策や行動は、地域のアメリカの利益に反するものであり、
 依然としてアメリカの国家安全、外交政策、経済にとって非通常の、特別な脅威と見なされる



アメリカはカーター政権の時(1979年)にイランに対する国家緊急事態法を制定した。
このときから現在まで、アメリカの大統領は毎年、イランに対する国家緊急事態法を延長している。


アメリカは2013年のイランと6カ国が暫定合意に達した時にも同法を延長した。

イランの抗議を受け、アメリカは次のように回答している。

この延長はアメリカの政策における通常の流れであり、期限が切れる前に毎年延長すべきだ


20万以上の大軍で北朝鮮への先制攻撃作戦を予行していることに対して、
北朝鮮が同国の核・ミサイル実験の暫定停止と引き換えに同演習の中止を求めた際にも、
同じように「いつものことだ」と答えた。


そのうち、パイロットが「いつものことだ」と言いながら、
イスラム都市を爆撃する風刺画が描かれてもおかしくはない。



---------------------------------------------------------
イランに対する国家緊急事態法の理由のない延長は実際、イラン恐怖症を吹き込む政策の継続であり、
長年、イランの平和的核計画に反対するための曖昧な口実を繰り返す根拠となっています。


その一方で、この行動は、地域の情勢不安への抵抗、とくに地域でのテロ対策における
イランの重要な役割を疑問視しようとするアメリカの様々な努力を想起させるものです。


こうした中、国際社会と地域の国々は、
イランが常に地域のテロ対策において基本的な役割を果たしていることを知っています。


地域や世界の安全を深刻に脅かす麻薬密輸対策においても、
イランの肯定的な役割は常に認められ、国連やヨーロッパ諸国の注目を集めています。


このことから、アメリカにとって
イランのどこが、毎年国家緊急事態法を延長させるほどの脅威なのでしょうか。



こうした中アメリカは、その政策と行動、脅迫と妨害により、イランを30年以上もの間、
常に脅威とし、アルカイダなどのテロ組織を支援することでイランの周辺を情勢不安にしてきました。


アメリカのバイデン副大統領は、少し前、
サウジアラビアやトルコ、カタールといったアメリカの同盟国である一部の地域諸国が、
ヌスラ戦線やISISといったテロ組織に数億ドル、数千トンの武器を支援していることを認めました。



アメリカはこうした行動を
国家治安に対する脅威と見なしておらず、
それは自らがこの情勢不安の一部であるためです。



こうした中、イランはアメリカの安全に対する非通常の特別な脅威と見なされる、
という主張は、熟考に値します。


国家緊急事態法が毎年延長されていることは、
真の治安の評価に基づいたものではなく、単なる政治的な決定と見なされます。


しかしながらアメリカはこの先にもずっと地域の政治的、地政学的な情勢を無視し、
この法を延長することで、ボールをイラン側に投げ続けることはできないのです。

(http://japanese.irib.ir/news/commentaries/item/
52907-%E3%82%A2%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%82%AB%E3%8
1%AE%E5%AF%BE%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E5%9B%BD%
E5%AE%B6%E7%B7%8A%E6%80%A5%E4%BA%8B%E6%85%8B%E6%B3
%95%E3%81%AE%E5%BB%B6%E9%95%B7)

---------------------------------------------------------

今のところ、イランは地味に扱われているが、
この国に対するアメリカの圧力のかけ方及び同国へのプロパガンダ作戦は
中国やロシア、北朝鮮、シリアといった東側諸国へ対するものと全く同じものだ。



日本のアメリカ研究者、中国研究者、ロシア・北朝鮮研究者の大物の中には、
如何にアメリカが正しく、中露が間違っているかを力説する輩が少なくない。


彼らに欠けているのは、尋常じゃない制裁と圧力が
アメリカとその同盟国によって数十年にかけて継続されているという事実の認識だ。


北朝鮮は一時期、「先軍政治」というスローガンを打ち出していた。
これは直ちに日本の専門家やジャーナリストによって軍事化を正当化させるものだと説明された。


それは半分の事実である。この先軍政治は、軍事力が脆弱だったために
滅ばざるを得なかったイラクをはじめとする東側国家の歴史と、
朝鮮戦争後、継続されている連合軍による締め出し作戦を背景に唱えられたものだ。


北朝鮮に限らず、東側国家がなぜ軍事化へ走るのかについて、
列強の政治的経済的軍事的圧力・制裁を度外視し、ひたすらバッシングする意見が多い。


だが、そのような意見は結果的にNATOの軍事進攻を応援するものでしかないだろう。
実際に、イラク戦争・アラブの春に対する中東研究者の姿勢はまさにそうだった。

プーチン、ウクライナ危機を語る

2015-03-16 00:08:29 | リビア・ウクライナ・南米・中東
短文だが、ロシアの声にあったものを紹介する。


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ロシアは当初から、ウクライナのクーデターの
背後の「人形使い」が米国であることを知っていた。

欧州はウクライナの反体制派をただ形式的に支援しただけだった。


ロシアのプーチン大統領が「ロシア1」テレビの
ドキュメンタリー「クリミア、祖国への道」で述べた。



「形式的には、反体制派を支援したのは第一に、欧州であった。
 しかし、我々は、素晴らしくよく知っていた。
 あとから理屈付けしたのでない、知っていたのだ。
 真の人形使いは米国にいる我々のパートナーたち、友人たちであったと。
 
 彼らこそがナショナリストらを訓練し、
 彼らこそが戦闘部隊を養成したのだ
」とプーチン大統領。


プーチン大統領はまた、戦闘部隊の訓練は
部分的にポーランドやリトアニアで行われた、と述べた。



我々のパートナーたちはどう振舞ったか。
 クーデターの遂行に道をつけたのだ。
 つまり、パワーによって、行動を開始させた。
 それが事を運ぶのに一番いい方法であるとは私は思わない
」とプーチン大統領。
続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283343143/



キエフのクーデターを首謀した人々は、政権奪取だけでなく、
大統領のヴィクトル・ヤヌコヴィチ氏を物理的に排除することを計画していた。


ロシアのプーチン大統領が「ロシア1」テレビの
ドキュメンタリー「クリミア、祖国への道」の中で述べた。



プーチン大統領はまた、キエフのクーデターに武器を適用しないことを決めた
ヤヌコーヴィチ氏の判断について、自らの意見を述べた。

「彼を非難する気はない。しかし、不作為によって事態は悪化した」とプーチン大統領。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283343415/

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武力によって政権を転覆させるだけでなく、選挙で当選した
一国の大統領が殺されかけたにも関わらず、加えて、
キエフ政権にはネオナチも多くいるにも関わらず、
全力でキエフ政権を応援するEU・NATOを見ると、とても不思議な気持ちになる。


東京新聞は鳩山氏の行動を「国際社会に誤解を与える」と非難したが、
そもそも国際社会でクリミア併合を非難しているのは欧米だけであり、
他は支持か中立の立場を取っている。

このような事実確認を差し引いても、日本政府の意向に逆らう言動は
慎まなければならないといった主張をみると、さすが民主主義国だと思わざるを得ない。


民主主義国では弾圧ではなく、抑圧(プレッシャー)という手段がとられる。
民主主義国では政府ではなく、論壇(メディア)が言論の自由を自己抑制する。

その結果、いわゆる独裁国よりも独裁的な情報統制が敷かれる。

ワレンチン・ラスプーチン氏を偲ぶ

2015-03-16 00:02:25 | 文学
作家のヴァレンチン・ラスプーチン氏が、モスクワで死去した。77歳だった。
孫のアントニーナさんが、リア・ノーヴォスチ通信に伝えた。

ラスプーチン氏は、「マチョーラとの別れ」、
「フランス語の授業」、「最終期限」など、その他数多くの作品で知られている。

ラスプーチン氏は1937年3月15日にイルクーツク州ウスチ・ウジンスキー地区アタランカで生まれた。

ラスプーチン氏は社会主義労働英雄で、2012年には国家賞授与された。

続きを読む: http://japanese.ruvr.ru/news/2015_03_15/283339251/
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アフリカ文学や朝鮮文学がポスト・コロニアリズム研究の材料として利用される一方で、
ロシア文学は、逆に反共・反ソの材料としてしか紹介されない傾向がある。


私が知る限り、日本語で読めるソ連文学の多くは、反体制派の作家の作品ばかりだ。
そこには、したり顔で文学者がソ連批判をするだけのつまらない解説が添えられている。


結局そのような言説は列強の冷戦史観(悪のソ連が滅び正義の時代が訪れる歴史)
を正当化させるだけのものであり、実にいい加減な内容になっている。
現に、市民も参加する研究会によって、その解説・翻訳の胡散臭さを暴露されている人間もいる。


亀山郁夫著『謎とき『悪霊』』の虚偽を問う

― テクストの軽視と隠蔽、あるいは、詐術と談合 ―

(または、「マトリョーシャ=マゾヒスト説」の崩壊)


商品としてのドストエフスキー

-商業出版とマスメディアとにおける作家像-



亀山教授は日本のロシア文学業界で中心となって活躍している方で、
彼の言説を知ることで日本のロシア文学研究の水準を見極める指標にもなる。


ゴーゴリの新訳に対して私は以前、「ロシア文学の洗浄作業」といって酷評した。
ゴーゴリに限らず、最近の文学者は新訳と称して手前勝手な解釈を刷り込ませており、
正直、その翻訳のレベルも神西清氏や中村融氏といった過去の名訳者に遠く及ばない。



ここで、イギリス文学やフランス文学の翻訳状況に目を向けてみると、
植民地支配や戦後の独立運動に対する弾圧を批判する小説はなぜかメジャーになっていない。

ドイツ・イタリア文学でもナチスやファシスト政権を批判する文学はなぜか傍流だ。

アメリカ文学に至ってもキング牧師のような融和的活動家の翻訳書は岩波にはあるが、
マーカス・ガーヴェイやマルコムXのような対決的な運動家の本はなぜか翻訳されていない。


欧米の文学はむしろ、大衆文学の翻訳がメジャーで、
向こうの価値観が知らず知らずのうちに読者の脳にしみとおる様に作られている。


他方、ソ連や東欧、中国の小説は反体制派の本ばかりが翻訳され、
いかにこの国がろくでもない国であるかを読者に説明するものになっている。


真のプロパガンダとは、「本当は正しかった日本」だとか
「薄汚い国韓国」とかいった威勢のいい負け犬の遠吠え書籍ではなく、
むしろそれがプロパガンダとは決して思わせない透明感のあるものなのだと言えよう。



そういう中で、ワレンチン・ラスプーチンの作品は
プロパガンダ翻訳活動の波の中で珍しく発掘されたポスト冷戦を描いたものである。


そこでは冷戦が終わり、ソ連が否定された後に、時代に馴染めず翻弄される人間を描かれている。

実際、ソ連崩壊後のロシアは国の財産を新興財閥が収奪し、
そこからさらに欧米に資本が流出されるという非道い有様に陥った。

新興財閥の個人的利益と引き換えに、国や社会は疲弊し、多くの人間が貧窮したのである。


この時期、西側諸国は悪の帝国を葬り去ったことに小躍りし、
西側の左翼は、そそくさと手のひらを返し、反共主義者たちの犬となり餌をねだった。


抵抗者たちが自発的に解散を宣言し、権力者に服従し、弱体化した結果、
新自由主義が浸透し、中東・アフリカに軍が侵攻し、国内の貧困者が増大した。


その癌は、冷戦終結後、20年が経った現在になり、いよいよ勢いを増すばかりだ。

当然ながら、敵に降伏するだけでは飽き足らず、
味方を売り、時にはかつての仲間の虐殺作戦に参加したこの人殺しどもは、
現状の責任は自分たちにもあるという反省をしていない。しようともしない。


私は、常々ポストコロニアリズム研究はソ連や中国を対象にされるべきものだと思う。
冷戦時、ソ連は西側の敵としてありとあらゆる悪魔化がされてきた。ちょうど今の北朝鮮のように。


しかし、振り返ってみると、ペレストロイカは果たして本当に手放しに礼賛できるものだったのか?
冷戦終結は、新しい春をもたらしたのか?冷戦後20年たった今をみると、とてもそうは思えない。


どちらの事件も西側にとっては非常に喜ばしいものだったが、
東側にとって、それは必ずしも良いものだけではなかったのではないか?

ラスプーチンの小説を読むと、ペレストロイカを当初は喜びながらも、
やがてそれがもたらすものに悩まされる農民や町民の姿が描かれている。


私たちは今こそ、ラスプーチンのような本を読み、
西側の都合のよい歴史観から脱却すべきではないだろうか?