「いつになったら 春になるんだか…」
おばあさんがポツリと呟いた。
NHKクローズアップ現代「豪雪から高齢者を救え」に映し出された83歳の女性。
豪雪地帯に一人住んでいる。
子どもたちは遠くの町に嫁ぎ、雪下ろしをしてくれる人は誰もいない。
痛めた足を引きずるようにして屋根に上って雪下ろしをする。
そうしないと、雪が降ると、ミシミシと音を立て、今にも天井が崩れ落ちそうで怖い。
そんな家が新潟県など豪雪地帯にはたくさんある。
昔は地域で助け合って除雪してきた。
でも、今は若者がいなくなり、皆自分の家の雪下ろしで精一杯。
自治体も、今年の豪雪にはお手上げ。
道路や学校などの除雪に追われ、個人の家の屋根にまで手が回らないようだ。
予算はなんとかできても人手が足りないのだという。
県は取りあえず、雪の少ない市町村から応援を頼み、
緊急を要する民家だけはなんとか除雪をしたが、
まだまだ応援を待っている高齢者は多い。
総務省消防庁の発表では、2月8日までに雪による死者82人、けが人1180人。
約60%が65歳以上の高齢者で、
除雪中の事故による死亡が75%だという。
地震や津波は、ある時突然発生する。
この自然の猛威を正確に予測し、人々を救う英知をまだ人間は手にしていない。
でも、降り積もる雪の危険から一人暮らしのお年寄りを守ることは、不可能なことではないと思う。
積雪量が一定量を超えたら、公の施設に避難させるとか、
屋根の雪下ろしはボランティアを募集してやってもらうとか、
その気になれば、方法はあるはず。
ゲストの上村靖司さん(長岡技術科学大学准教授/日本災害復興学会理事)は、
支援力より受援力が不足していると話していた。
ボランティアなど支援する側の人はいるのに、
その支援者たちをコーディネートする受援力が足りないらしい。
雪国とは無縁の暖かい九州で、のうのうと暮らしている私が言う資格は無いかもしれないが、
これ以上一人暮らしのお年寄りを放っておくことは、
雪よりも冷たい気がする。
除雪に来た若者に手を合わせていたおばあさんの姿が、思い出されてならない。