佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

アメリカからのレポート

2011-03-17 | 雑感

友人から転送されてきたレポートを転載します。

 「東日本大震災を見つめるアメリカ(その3)」と題されたレポートは、

米国ニュージャージー州在住の作家、冷泉彰彦氏が書かれたもので、

村上龍編集の JMM [Japan Mail Media]  No.627に掲載されたものです。

 

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>  ■ 『from 911/USAレポート』               第503回
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> 「東日本大震災を見つめるアメリカ(その3)」
>

>  アメリカは週明けの月曜日を迎えました。これまでの各局も「ぶっ通し」の報道体
>
> 制でしたが、各テレビ局のエース級のキャスターが日本に入り、現地からの報道を開
>
> 始したために報道の視点がグッと近くなり、「人ごとではないが外国の惨事」という
>
> トーンから「現在進行形の<私たちの悲劇>」というニュアンスに変わっています。
>
> 一言で言えば、様々な意味で感情的になってきているように思います。
>
>  NBCは朝の『トゥディ』というニュース番組のメイン・キャスターの一人、アン
>
> ・カリーをはじめとして4名以上の記者が入っていますが、中でもアン・カリーは甚
>
> 大な津波被害を受けた南三陸町から生中継を行い、被害の状況を詳しく伝えていまし
>
> た。彼女は、海軍軍人のお父様に帯同して幼少期を佐世保で育っており、お母様が日
>
> 本人の日系二世ですが、日本語でコミュニケーションしながら、それを極めて的確な
>
> 表現で伝えていました。
>
>  それはNBCの『ナイトリー・ニュース』という夕方のニュースでしたが、キャス
>
> ターのブライアン・ウィリアムスが「これだけの被害に見舞われても日本人が冷静だ
>
> というのは驚き(サプライズ)ですよね」と呼びかけると、カリーは「私は日本で育
>
> ったので驚きません。でも、今回は、インタビューすると多くの人が微笑みながら応
>
> 対してくれながら、目には涙を浮かべているんです。これは私には初めての経験です」
>
> と述べていました。その後のウィリアムスの表情は崩れそうでした。
>
>  カリーが南三陸町に取材に入ったのは、キャノン・パーディさんという行方不明の
>
> 米国人を探すためでした。彼女はALTとしてこの地の中学校で英語を教えており、
>
> 任期を終わって一旦帰国したものの、教え子達の卒業式に是非参列したいと日本に戻
>
> って、南三陸に着いたその日に津波に襲われていたのです。通信手段のないまま、ア
>
> メリカの家族は消息が確認できずにいたのですが、カリーはツイッターを駆使して彼
>
> 女を避難所で探し出したのでした。番組の中では、衛星回線を使ってアメリカの家族
>
> と無事を喜び合うパーディさんのドラマが紹介されていました。
>
>  実はこうしたALTの被災者というのは何人もあるようで、各局が避難所などで取
>
> 材をしていますが、「自分は一緒に被災した人たちの支援をしたい」と言うアメリカ
>
> 人も多いようで、それに対して「本当は帰ってきて欲しいけど、きっとそう言うだろ
>
> うと思っていました」という留守家族の声なども紹介されています。
>
>  CNNは人気キャスターのアンダーソン・クーパー、医療評論家で全米で最も有名
>
> な脳外科医であるサンディ・グプタ、そして社会派の記者ソリダート・オブライエン
>
> が主として宮城県から福島県を精力的に取材しています。クーパーも「大地震、大津
>
> 波、原発事故と三重の大災害に見舞われながら、これだけ礼節が保たれ平静だという
>
> のは驚嘆するしかないです」と述べ、特に「非常用給水に長蛇の列を作っていた人達
>
> が途中で水が無くなってしまって、今回はダメだとなった時にももらえなかった人が
>
> 誰も叫んだり暴れたりしなかった」シーンは衝撃だったと言っていました。
>
>  募金活動も力が入ってきています。14日の晩のCNNにはアメリカ赤十字のゲイ
>
> ル・マクガワンCEOが小野洋子氏(ジョン・レノン夫人のヨーコ・オノ)と一緒に
>
> 出演して、日本向けの募金を募っていました。小野洋子氏は「私は日本で戦災にあっ
>
> て、東京が焼け野原になったのを経験していますが、日本人は何もかもを失っても団
>
> 結して苦難を乗り越える人々だと思います。でも、そのためには支援も必要です」と
>
> 訴えていました。
>
>  こうした報道の結果、アメリカ人は、ある意味で、日本人の喪失感や苦闘を自分の
>
> ことのように経験しようとし、経験しつつあるのですが、そうした感情的なリアクシ
>
> ョンは別の形でも出ています。それは原発問題に関する議論です。一言で言えば「こ
>
> れだけ用意周到でテクノロジーの進んだ日本でも問題が起きるのだから」という理屈
>
> で、「アメリカの原発も総見直しが必要」というエモーションがじわじわと増大して
>
> いるのです。
>
>  NBCのブライアン・ウィリアムスによれば日本は「ハイパー・プリペアード・カ
>
> ントリー」つまり「超用意周到な国」であるという表現を使い、今回の福島第一原子
>
> 力発電所の事故に関しても極めて同情的でした。これほどの惨事にも関わらず、情報
>
> の錯綜に関する批判はあっても、事故を起こしたことへの批判はほとんどありません。
>
> そうした認識が、逆に「日本でもこうなったのだから」原発一般が心配だというムー
>
> ドになっているのです。アメリカの月曜日は、日本への同情、賞賛、そして原発一般
>
> への不安感という「感情論」に覆われていたと言えるでしょう。
>
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> 冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
> 作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
>
> 学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
>
> か』『「関係の空気」「場の空気」』『民主党のアメリカ 共和党のアメリカ』など
>
> がある。最新刊『アメリカは本当に「貧困大国」なのか?』(阪急コミュニケーショ
>
> ンズ)( http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4484102145/jmm05-22 )
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> ●編集部より 引用する場合は出典の明記をお願いします。
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>
> JMM [Japan Mail Media]                No.627 Saturday
> Edition
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> 【発行】  有限会社 村上龍事務所
> 【編集】  村上龍
> 【発行部数】128,653部
> 【WEB】   ( http://ryumurakami.jmm.co.jp/ )
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