佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

平和の申し子たちへ

2014-07-16 | 平和

2014年07月10日の毎日新聞東京夕刊に、なかにし礼さんの詩が掲載されました。

集団的自衛権行使容認が閣議決定された7月1日、毎日新聞の記者が依頼して生まれた詩、

「平和の申し子たちへ!泣きながら抵抗をはじめよう」です。

 

 二〇一四年七月一日火曜日

 集団的自衛権が閣議決定された

 この日 日本の誇るべき

 たった一つの宝物

 平和憲法は粉砕された

 つまり君たち若者もまた

 圧殺されたのである

 こんな憲法違反にたいして

 最高裁はなんの文句も言わない

 かくして君たちの日本は

 その長い歴史の中の

 どんな時代よりも禍々(まがまが)しい

 暗黒時代へともどっていく

 そしてまたあの

 醜悪と愚劣 残酷と恐怖の

 戦争が始まるだろう

 ああ、若き友たちよ!

 巨大な歯車がひとたびぐらっと

 回りはじめたら最後

 君もその中に巻き込まれる

 いやがおうでも巻き込まれる

 しかし君に戦う理由などあるのか

 国のため? 大義のため?

 そんなもののために

 君は銃で人を狙えるのか

 君は銃剣で人を刺せるのか

 君は人々の上に爆弾を落とせるのか

 若き友たちよ!

 君は戦場に行ってはならない

 なぜなら君は戦争にむいてないからだ

 世界史上類例のない

 六十九年間も平和がつづいた

 理想の国に生まれたんだもの

 平和しか知らないんだ

 平和の申し子なんだ

 平和こそが君の故郷であり

 生活であり存在理由なんだ

 平和ぼけ? なんとでも言わしておけ

 戦争なんか真っ平ごめんだ

 人殺しどころか喧嘩(けんか)もしたくない

 たとえ国家といえども

 俺の人生にかまわないでくれ

 俺は臆病なんだ

 俺は弱虫なんだ

 卑怯者(ひきょうもの)? そうかもしれない

 しかし俺は平和が好きなんだ

 それのどこが悪い?

 弱くあることも

 勇気のいることなんだぜ

 そう言って胸をはれば

 なにか清々(すがすが)しい風が吹くじゃないか

 怖(おそ)れるものはなにもない

 愛する平和の申し子たちよ

 この世に生まれ出た時

 君は命の歓喜の産声をあげた

 君の命よりも大切なものはない

 生き抜かなければならない

 死んではならない

 が 殺してもいけない

 だから今こそ!

 もっともか弱きものとして

 産声をあげる赤児のように

 泣きながら抵抗を始めよう

 泣きながら抵抗をしつづけるのだ

 泣くことを一生やめてはならない

 平和のために!



お兄さんは特攻隊の生き残り、自身も満州からの引き揚げ途中で何度も命の危険にさらされた体験を持つなかにしさんには、平和への強い思いがあるようです。

詩は最初「若き友たちへ!」という題名でした。

「今回の閣議決定で一番影響を受けるのは若者たち」

だから彼らに向けて「目覚めよ、生まれ変わり、抵抗を始めよう」と書き始めた。

ところが突然、「平和の申し子」という言葉が閃いた。

「終戦から69年。戦争を知らないどころか平和を満喫して生きてきた若い世代は、

 まさに平和の申し子です。草食系男子? 国を滅ぼすマッチョな男よりずっといい。

 心優しき彼らこそ平和を守ることができる」

そして、詩から若者への説教めいたメッセージを削り、全面的に書き直しました。

「戦争したくないと思う自分を後ろめたく感じる若者がいるそうです。違う。

 戦争なんて無理、と思う自分に胸張っていい。

 弱くあることは勇気あることなんです

 

私も、そう思います。 

 

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