佐世保便り

2008年7月に佐世保に移住。
海あり山あり基地あり。そしてダム問題あり。
感動や素朴な疑問など誰かに伝えたくて…

シンポジウム「脱ダムと環境重視の時代」

2009-05-31 | 石木ダム

二日連続で川棚町へ。

今日は、川棚町公会堂での「強制収用は許さない」5・31集会に参加。
シンポジウム「脱ダムと環境重視の時代」でどんな話が聴けるか、期待してやってきました。




会場はほぼ満席。報道によると約500人だったとか。
http://www.nagasaki-np.co.jp/kiji/20090601/02.shtml
やはり脱ダム宣言の田中康夫新党日本代表、参院議員、元長野県知事の講演を聴くためかな?





まずはじめは、治水の専門家、京都大学名誉教授の今本博健氏
昨年の9月以来3度目の川棚訪問です。

前回、前々回同様、石木ダムは、治水面での必要性は全くないと断言。

その根拠は、石木川の流域面積は川棚川全体の9分の1で、洪水調節効果が限定的であること、川棚川および石木川の流下能力は、ダムを造っても、その計画高水より小さいところがあり氾濫を防げないこと等を具体的な数値で示された。

一般的な治水論としては、これまでのダムによる治水は一定限度の洪水にしか対応できなかった、つまり想定外の洪水が発生すると調節不能、堤防は破堤し、その結果、一部の地域に壊滅的被害を招いてきた。これからの治水は、堤防の補強や警戒避難システムの確立など、すぐにでも実行可能な対策を積み上げることが大切。一部の地域に被害を集中させるのではなく、流域全体で洪水を受け止める姿勢が必要。

また、ダムによる環境への影響を考えると、もうこれ以上のダムは造るべきではない。
洪水氾濫による被害を急速な水害とすれば、
ダムによる環境破壊の被害は緩慢な水害である。

最後に締めくくりとしてスクリーンに映し出された文字は、データではなく、地元の反対住民への熱いメッセージでした。





続いて、大阪府立大学名誉教授の荻野芳彦氏によるお話、「利水の専門家から見た石木ダム事業の問題点」

荻野氏によると、「佐世保の水は足りている」として、利水目的でもダムは必要なしとの見解。
その根拠は、将来の水需要予測がすべて過大設定となっていること、
慢性的水不足を宣伝しながら漏水対策に力を入れず、大量の水を無駄にし続けていること、
また、そもそも石木ダムの利水容量の決定が、実測データに基づいていないかあるいは公表されてないので、その妥当性に疑問があることなど。

さらに、佐世保市は「不安定水源」という表現をして、今ある不安定水利権3万m3を放棄して、新たな水源を設けようとしているが、これはダムを造るために全国的にやられている手法。
現在あるものを使えばいいのだ。不安定水利権も何年か経過すれば安定水源に切り替えるべき。そうすれば、現在の日量107,000m3が安定水源となり、新たな水源は必要ではなくなる。

との観点から、「石木ダムは白紙撤回が妥当」との結論を示されました。




最後に田中康夫氏登場。
持ち時間をオーバーして熱く語って下さったけれど、残念ながらダムの話は少なく、物足りなかった…。
きっと選挙前ということで、代表を務める「新党日本」の政策を伝えたかったのでしょうか。
ご自身のプロフィールから始まって、長野県知事時代にやってきたこと、日本の現状と様々な問題点、それらをどう打開していくか等々、早口ながら歯切れよく解りやすく、ユーモア&ブラックユーモアも交え、多岐に亘った講演でした。
とは言うものの、脱ダムの元県知事、その政策の中にはしっかりと「脱ダム」の文字がありました。



ダムに関するお話としては、ダムが環境に悪いからダメなだけじゃなく、ムダな公共事業の代表であり経済を悪くする要因としての問題を力説された。

脱ダムと共にやることとして、森林整備が大切である。
森林整備を充実させれば洪水が防げ、森の保水力が高まるので豊かで美味しい水が供給される。
それは農業を豊かにし、河口で採れる漁業をも豊かにする。
また、森林整備は山間部の人々の雇用を創出し過疎化を防ぐ。
そういう視点から、知事時代には森林整備の予算と面積を3倍に増やした。

ところが、林野庁の年間予算はわずか3700億円(八ッ場ダム1基分よりはるかに少ない)
しかもその予算の中で森林整備に投じているのは僅か8%で、残り92%は林道建設などの公共工事に充てられている

(知らなかったなぁ。。これでは、日本の森林はお先真っ暗です・・・)

公共工事は本当にムダなものが多い。
中でも、橋とダムとトンネルは走り出したら止まらない。
いったん工事に着手すると、終わるまで走り続けなければならない。
例えば、トンネルを造っていて地盤に問題が見つかっても止めるわけにはいかない。止めたら入口から山が崩れてくる。
だから補正予算を組んで新たな措置を講じながらでもやり遂げなければならない。
ダムなどは補正に補正を重ね、当初予算の10倍から20倍になったりする。
(ホント?!俄かには信じられない数字です)
だから、橋・ダム・トンネルを私は補正3兄弟と呼んでいる。

なぜ地方は公共事業をやりたがるのか?
ハコモノ公共事業には国の負担割合が大きいから。
例えばダムを造る時、国が7割、地方が3割の負担となっている。
しかし、そのダム工事をやるのはほとんど東京に本社のある大手ゼネコン。地元の企業には2割程度しか還元されない。3割出して2割戻る。
こうして、大型公共事業は地元を疲弊させていく。

新たなダムを造るよりも、今あるダムの浚渫や施設の改修工事、河川の護岸などをすることによってダムに代わる有効な対策が立てられるし、その方が地域経済の活性化につながる。

さっき現地を見てきたが、石木はダムの適地ではない。
だいたいダムというのはV字形の地形のところに造られるもの。
あそこはまるで、「大草原の小さな家」のようじゃないか。
あんなところに、硬いコンクリートのダムを造ったら、崩れてしまうんじゃないかとそれも心配だ。

などなど・・・脱ダム宣言元知事の指摘は興味深い。
時間切れで十分聞けなかったのが残念。
いつか今度は佐世保に来て、観て、語ってほしい。

田中さんが佐世保市長であったなら、佐世保の水問題にどう対応するのか?
市民を納得させる具体的な政策を、ぜひ聴かせてほしいナ。




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